第277話 デスゲームの世界

「あ、見てください誠道さん。歩道にマス目が表示されました。サイコロも落ちてます」


「え?」


 ミライに言われて足元を見ると、淡く光る四角形のマスが、アスファルトの上に出現していた。


 俺たちの下にはスタートと書かれたマスがあり、そばにはサイコロもある。


 前には同じように淡く光る四角形のマスが、遠くの方まで連なっている。


 ゲームがスタートしたということだろうか。


「さぁ、誠道さん。サイコロを振りましょう。リアルマネー人生ゲームのスタートです!」


「振るわけないだろ」


 テンション急上昇中のミライとは対照的に、俺はいたって冷静だ。


「え? どうしてですか?」


「どうしたもこうしたもあるかよ。作者の名前が創流雅楽太だぞ。絶対クソゲーに決まってる」


「創流雅さんをバカにしないでください!」


 ミライがぷんすか起こりはじめた。


「人の好きなものをバカにするのはよくありません。それに、そもそもこのゲームに入ってしまったら、クリアするまで出ることはできませんから」


「は? なんだよそれ」


「ですから、このゲームをクリアするまで出られないんです…………あっ。この状況も引きこもりが憧れる展開のひとつでは? しかもお金は現実とリンクしている。命が現実とリンクしているデスゲームみたいですね!」


「クリアするまでログアウトできない展開はラノベの中だからいいのであって、実際に起こったら絶望ものなんだよ!」


「やけにならないでください。とりあえず落ち着いて。どちらかがゴールすればいいので、このゲームの攻略はベテランの私にまかせてください」


「それ、どこかで聞いたことのあるセリフだな」


 そう言うデスゲームって、たいていは攻略組と日常謳歌組に別れるもんね。


「こんな簡単なゲーム、私一人で充分です。誠道さんはそこで指を咥えて見ていてください」


「おいそれすぐ死ぬやつのセリフだから!」


「このゲームをクリアできたら、誠道さんに伝えたいことがあります」


「だからそれも死ぬやつだから!」


「いままで迷惑ばかりかけてすみません。このゲームに勝ったらまとまった金が手に入るので、そしたら夜逃げして人生やり直しましょう」


「だから死亡フラグばっかり立てんじゃねぇよ! あとまとまった金が手に入ったら、きちんと借金返済して!」


「借金なんか返済したらお金がなくなるじゃないですか。夜逃げしたらお金は全部私たちのものですよ。それにここはゲームの世界なんですよ?」


「ゲームの世界だからって倫理観なくすのも死亡フラグだからな!」

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