地上 その七

〈もちづき〉の搭乗員が二名とも生還したというニュースは、またたく間に世界中を駆けめぐった。続いて、長谷川、原田の両名による、応援メッセージへの感謝の言葉が伝えられた。

 これらのニュースを受け、ニュージーランド沖を北上中だった〈もちづき〉応援有志船団の旗艦から参加者全員に向けて、行動中止の指令が発せられた。


「おい、頼みがある。このまま予定通りのポイントまで行って〈もちづき〉にメッセージを送るよう、船団のみんなに伝えてくれ」


 操舵室に飛び込んできたロビンソンが、第二海風丸の船長に向かっていきなり頭を下げた。


「兄さん、ずっと寝てたから聞いてなかったかもしれんが〈もちづき〉の搭乗員は二人とも帰還したってよ。一人居残りが出るとかいう噂もあったが、みんな帰れて良かったじゃないか。だからもう誰もメッセージの送信なんかやっとらんぞ。今から落っこちる空っぽの宇宙ステーションに向かってHOPE HOPE なんて送ってどうするよ」

「空っぽじゃねえんだよ。事情は俺がみんなに説明するから、とにかく連絡回線だけでも開いてくれ。頼む、この通り」


 ごんと鈍い音がして、振り向いた船長の目に土下座するロビンソンの姿が飛び込んできた。


「〈もちづき〉へメッセージを送ることが出来るのは、今この場所にいる俺たちだけなんだ。世界中で、もう俺たちだけなんだ。だから頼む」

「兄さん、あんた、いったい……」


 赤く血走った目で睨み上げられ、船長の右手は無意識に通信装置の操作卓に伸び、送信スイッチを探っていた。

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