第3話

今日から新しい学校だ。


結奈はいつもより早く起き念入りに準備をした。


髪を巻いてメイクをしていわゆるイマドキの女子高生だ。


制服も自分の好きなようにアレンジする。

中にパーカーを着たりジャケットの代わりにカーディガンをきたりやりたいアレンジはたくさんあったが初日だからとジャケットの中に可愛い清楚系のセーターを着るだけにした。


韓国は3月から新学期が始まる。


結奈は日本の終業式が終わってきたので新しいクラスには途中参加になる。


結奈が通う学校は韓国でも大きな学校。


芸能人や権力者の子供、成績優秀者など選ばれたものたちが入れる学校だ。


できれば普通の学校に通いたかったが身分を隠してもらえただけでもありがたいと思うしかない。


リビングに行くと朝ご飯の用意がしてあった。


朝ごはんをみんなで食べ、そろそろバスの時間になるので鞄を持って玄関に行くとシウが待っていた。


シウは結奈が来ると


『置いていくよ』

とドアを開けた。


『行ってきます』結奈はミンジェに向かって元気よく挨拶をした。


そんな2人を微笑ましく見るミンジェ。



バスに乗ると視線が痛い。


同じ制服を着る学生もちらほらいるが違う制服の学生もいる。


みんな結奈の横をうっとりした目で見ている。


結奈は彼の隣に座ったことを後悔する。


確かにだけ顔が良ければみんな振り返るし眺めるわよねと思い結奈もみんなと同じ方を見る。


シウが『なに?』と結奈に問う。


『確かに綺麗な顔よね、これだったら確かにずっと見てられるかも、、、』


そんな結奈に対してシウは耳を赤くしながら


『何急に、そんなキャラなの?』と。


『私ね、ここでは思ったことを素直に口に出すって決めたの。

ね、私たちと同じ制服はいないのね』


『わざわざバス使うのは君ぐらいじゃない?』


そんなことを話していたら最寄りのバス停に着いた。


『ここから10分ぐらい歩くよ』

とシウが歩き出した。


結奈は木のアーチに歓迎を受けシウについていった。


「屋台とかないのね、トッポギ屋さんとかおでんとか、路上にゲーム機もないし」と結奈がつぶやいた。


「そんなのあるわけないよ、どこで覚えたんだよ」とシウが日本語で返した。


『日本語ちゃんと喋れるんだ!!韓国ドラマではよくおでんとかトッポギとか放課後食べてたよ』

と真剣に話す結奈をみてシウが笑った。


『韓国ドラマとか見るんだ。そんなのはちょっと街に出ないとないよ』と。


『笑顔素敵ね。そんなに綺麗に笑えるならもっと笑えばいいのに、もったいない』


そんな結奈にシウは『うるさい』と返し足を早めた。



正門にはたくさんの車で行列ができていた。


この風景だけ見ると日本と変わらないわねと結奈は思った。


学校では車から結奈とシウを見た生徒たちが騒いでいた。


これ以上注目を浴びたくない結奈はシウに

『もうここでいいわ』


『職員室の場所わかるの?』


この広い学校で職員室に自力でたどりつくのは無理そうなので渋々シウの後をついて行った。



シウは結奈を職員室に連れて行き自分のクラスへ向かった。


シウのクラスでは結奈が何者かみんなが騒いでいたがシウが教室に入ると一瞬でその話題は消えた。


シウはこの学校の王子様だ。みんな近寄りたいが近寄れない。


シウが自分の席につくとパクミニョンが話しかけた。


『おいおい、朝からお前の話で大騒ぎだぞ』


『いつものこと』


『おいキムシウとボケるなよ。誰だよ、横にいた可愛い女の子。お前が女といるなんて珍しいじゃん』


興奮気味なミニョンをシウは無視し、本を開いた。


『お前はいっつも本な、そんなんだから俺しか友達いないんだよ。てか、赤ん坊の頃からずっと一緒だった俺にも内緒かよ、いいよ、別に』

とミニョンは不気味な笑みを浮かべシウの後ろの席に座った。



結奈は担任の先生のところにいた。


『シウのところの日本支社の社長の娘だそうね。

成績は優秀らしいわね、ここでも期待してるわ』


結奈はそういう設定なんだと初めて自分の立ち位置を知った。


先生と一緒にクラスに入った。


結奈は知ってる顔を見つけ驚いたがシウも同じだった。だが驚いたのか一瞬で2人は納得した。


母さんの/ミンジェさんの仕業だなと。


転校生よ、自己紹介。という先生の雑な振りに結奈は

『日本から来ましたクジョウユナです。よろしくお願いします』

と挨拶をすると


1人の生徒が手を挙げた。


あーこの子がこのクラスの女王さまか、結奈は思った。お人形さんのような彼女が敵意剥き出しに口を開いた。

『私はハンコックコスメテックコーポレーションの社長の娘でチェジアよ。あなたは』


こういう感じなんだここはと結奈は思った。


日本では結奈にマウントを取ってくる人はいなかったので新鮮だった。


『ジアさんとっても可愛い名前ね、私はクジョウユナよ何者でもないわ』


と毅然とした態度で返した。


そんな結奈を快く思っていないジアは


『ここには階級があるのあなたはどこ?って聞いてるの、馬鹿なの』

と嘲笑った。


『こんなに可愛いんだから怒ったらもったいないと思うんだけど、それに私はあなたが恐れるような相手じゃないわ』


そうジアに返し先生私の席はどこですか?と聞きミニョンの横の席に移動中


『初日からこれじゃ、普通の女の子は難しいんじゃない?』とが話しかけてきた。


『この学校はこんな感じなのね』と結奈は答えた。


ジアはそんな2人を見ながら携帯をいじった。


休み時間になりすぐにミニョンが結奈に話しかけた。


『ユナちゃんさっきはやるねーあの女王相手に堂々と、でも大変なことになってるよ、ほら。』


ミニョンの携帯を見ると学校の掲示板に結奈の話題で持ちきりだ。


シウと登校したことで女子たちのやっかみを買い、みんなのプリンセスジアに対する態度も批判を受けているようだ。


何も持ってないのに何様なんだと。


『ジアはシウの次に権力持ってるからね、やばいの敵にしちゃったね、ユナちゃんも正体明かせば対抗できると思うよ』


涼しい笑顔を見せるミニョンにシウがつかさずに

『僕はお前に何も話してないぞ、

ユナの何を知ってるんだ』と突っ込んだ。


『僕の情報収集力舐めないでよ、テレビ局のお偉方の息子だよ?情報が命だからね。それに日本には何度も行ってるし、九条って聞いてピンときたよ、でもここにきたのは普通の女の子として過ごすためだろ?大丈夫誰にも言わないから。僕はユナちゃんの味方だよ』と結奈にウインクした。


そんなミニョンに結奈は笑顔で


『ありがとう。でもこれは私の戦いだから2人は見守ってて』と言った。


シウは『なんかあったらすぐ言いいな』といい机に伏せた。

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