第2話

飛行機の中から外を眺める。


何時の便で旅立つかは誰にも言わなかった。


ただ夢を見に行くだけだから、、、

夢は必ず覚める。

だから結奈は静かに旅立った。



韓国に着くときれいな女の人が出迎えてくれた。


「ユナちゃん!!!うわー相変わらず可愛い!

はぁー私ね娘が欲しかったの、ユナちゃんが私のところに来てくれて嬉しいわ」

と抱きついてくれた。


この綺麗なお姉さんは結奈の母の親友でキムミンジェ。

母の家に学生時代ホームスティしていたこともあり本当の姉妹のように仲良しだ。

1年間結奈の親代わりをしてくれる。

韓国トップの財閥の家に嫁ぎ、大学生と高校2年生の息子がいる。



家に着くと可愛らしい結奈の部屋が用意されていた。


「どう可愛いでしょ?私女の子ができたらこんな部屋にしたかったのよ」

と嬉しそうにミンジェがそんな姿に可愛いなぁと思った。


結奈がお姫様のようなふりふりの可愛らしい部屋を見渡すとあるものに目を奪われた。


それは韓国らしいミニスカートの制服だ。


結奈はミニスカートの制服に憧れたが生徒と先生の目を気にしていつも制服はきちんと着ていた。


そんな結奈に気づいたミンジェが


「ふふふ、制服可愛いでしょ。きっと気にいると思ったわ。あなたのお母さんが心配していたわ。あの子は本当にいい子なの。いい子すぎるのが問題なの、一番最初に我慢することを覚えてしまったからあの子が自由にできないのは私の責任だわってね、せっかくあなたの家のこと何も知らないところに来たんだもの、思いっきり楽しみなさい」

と結奈の肩を抱いた。


結奈はなんだか胸が熱くなった。



『母さん、通らないんだけど、、、』

と声が降ってきた。


『あら、早かったわね。ちょうどいい紹介しなきゃ』

「ユナちゃん紹介するわね、この子は私の息子でキムシウよ、あなたと同じ高校2年生で日本語は聞いたり話したりはできるけど読んだり書いたりはできないわ。」とミンジェ。


結奈は流暢な韓国語で


『初めまして日本から来たクジョウユナです。これから1年間お世話になるわ。仲良くしましょう。』

と挨拶をした。


「うわー、すごいわユナちゃん、韓国人かと思っちゃったわ。なんでも沙汰なくこなすって聞いてたけど、韓国語も完璧なのね」

とミンジェは目を輝かせた。


シウは会釈し、隣の自分の部屋に入っていった。


「無愛想な子でしょ?無愛想だけど心優しい子なの、あんな感じだけどきっとユナちゃんのこと助けてくれると思うわ。よろしくね」


「優しい方だと私もそう思います。」


結奈がはっきり答えたそんな姿にミンジェは少し驚きながらも優しく微笑んだ。


結奈は彼が入っていったドアを見つめすごく綺麗な顔だったな、お人形みたいだ。大輔もなかなか整った顔だったがシウは異次元な綺麗さだと思っていた。だが結奈は顔よりも目に惹かれた。綺麗な澄んだ目をしていた。

お金持ちの世界にいるといろんな汚いものを見るので目が霞んでくる。しかし彼は屈託のない目立った。


「だいたい必要なものは揃えたけどもし他にいるものがあるなら観光がてらに買いに行くといいわ。車は執事が出してくれるから好きに使ってね。じゃあ、ごゆっくり」

とミンジェが部屋を後にした。


結奈は制服を手に取り胸に抱き、そのままベットにダイブした。明日から韓国の学校に通う。


(友達できるかしら、、、)


幼稚舎からほぼほぼ同じ人たちに囲まれ、その中心にいた結奈。


結奈には何もしなくても人が寄ってきていたので友達作りをしたことがない。


そんな不安にもワクワクしながら想像を膨らませた。



ふと鞄がないことに気がついた。

教科書、靴、制服はあるのに鞄がない。


急いで隣の部屋をノックした。


『ねぇ、入ってもいい?』


答えがない。こういう時は


『入るわね』強行突破だ。


シウがびっくりした顔でこっちをみる、彼は机で本を読んでいた。


『もっと上品な人だと思ってたけど』とシウ。


『それは財閥令嬢のときの私。今は普通の女の子だから。というかこういうの一回やってみたかったのよ、相手のことを考えないで行動する』

どこか楽しそうな結奈にシウは何も言えない。


『で、要件は』


『勉強中?忙しかったら出直すけど、、、

あのね、鞄がないの、通学鞄』


『あー指定の鞄はないんだ。自由。好きなの持っていっていいんだよ』


『素敵。じゃー買いに行かなきゃ。みんなどういったので登校してるのかしら、よかったら買い物付き合ってくれない?』


『嫌だ』とシウが即答した。


そんな姿に結奈は笑って

『どうして?課題があるの?見るからに終わってそうだけど、、、』

と机の上にあった教材をペラペラとめくりシウを見つめた。


その視線に負けたシウは


『わかったよ、行けばいいんだろ』

とドアに歩き執事に声をかけた。


女子高生の人気を全く知らないシウはカバン選びには全く役に立たなかったが、結奈に文句ひとつ言わずいろんなお店に付き合ってくれた。


店員さんから女子高生の中で人気なものを紹介してもらい1番人気なものを選んで店を後にした。


『次は絶対ついていかない』と疲れ果てているシウ。


そんな姿を横目に


『さ、帰りましょう。バスはどうやって乗るの?』


そんな結奈の質問にシウは理解が追いつかない。車で来たのにどうしてバスの乗り方を聞くのか。シウが頭の中で考えていると、


結奈が


『ふふ、シウはわかりやすいのね。車は返したわ。明日からバスに乗るから練習したいの』


韓国語なのに理解ができないシウ。どうして車を返したのか、どうして明日からバスを乗るのか、


そんなシウを置いて結奈は歩き出す。


こっちの方にバス停あった気がするなぁーと独り言を言いながらそんな結奈を追いかけて、


『ま、まって、明日から学校にバスで行こうとしてるのか?』


びっくりしているシウが可笑しくて結奈は笑って言葉が出ない。


『そんなに驚くこと。普通の子はみんな公共の交通機関を使って通学するのよ?知らないの?』

と楽しそうに言った。


『でも普通の子じゃ、、、』ない。


最後まで言わずにシウは気づいた彼女は普通の女の子になるためにここに来たんだと。


シウは結奈にバスの乗り方を教え、一緒に家の方のバスに乗った。


『今日はありがとう。おかげで楽しかったわ。明日からバスは1人で乗れるからシウはいつも通り車で行っていいよ』


そういう結奈にシウは返事をせず外を見ていた。

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