第二恋 タイトルコールとオタク君
皆様、「タイトルコール」はご存知だろうか。テレビ番組などで朝から爽やかに名物アナウンサーが告げる「○○○ニュース!」「○○○のコーナー!」などのアレである。あってもなくてもいいように感じるが、アレは学校で言うトコの「起立」「礼」「着席」みたいなもんで、無いと中々締まりが悪くなると思う。まぁ、かく言う俺は「きりーっ」「れーぃ」「ゃくせーき」と端折るタイプの日直当番だったので、タイトルコールガチ勢(女子とか担任)からはよく怒られていたが。
なぜこんなことを語り出したのかと言えば、つい先日初恋相手が2次元男キャラ(現在進行形♡)であることを受け入れたせいでそのタイトルコールに命を狙われることに相成ったからである。
好きになるというのはかなりのパワーがあるようで、それまでは「うん好き」レベルだったそのキャラの声までもが「はぁあああ、好き」レベルになってしまった。中の人のSNSもフォロー済みだし、アプリにボイスデータを入れるために2日かけて端末内の大掃除をした。フルボイスとなったアプリは3GB近くに膨らんでしまったが、もうあのキャラに声が無いとかあり得なーい!状態なので見なかったことにした。
で、フルボイスということは、タイトルコール(アプリ起動時に読み上げられるアプリ名だったり会社名だったり)も当然声が付くということで。「これでいつでも声が聞けるぞー」とウキウキしていて、完全にタイトルコールはノーマークだった俺は見事、初恋キャラの声を引き当ててしまい天に召された。享年19。最期の言葉は、幹孝に言った「ヒトデの目は飾りなんやで」だった。
あーもうなんでこうも心臓にクるかね。あの時、確実に俺の脈拍は200を超えたぞ。程良い低音の中にうっすらと入るビブラート。それがすっきりとした発音で耳に入って、瞬間、背筋というか背骨がビリリリンっと震え上がって堪らなくなる。
幸いにして(?)、ホーム画面は別のキャラだったからどこかのスパイみたいに2度死ぬことはなかったけど、しばらく心臓が煩くて顔も赤くて、それが中々引かなくて困った。ひょっとしたら自分はただの限界オタクになっただけではないかと思ってたのに、恋愛経験皆無でも分かる。これは明らかに違う。
「本当、俺どーすんの」
埋めた顔の隙間から画面を見れば、推しキャラがニコニコと俺を見ている。これまでの俺の推し遍歴は「ニコニコ」「ハキハキ」「短髪」「文系」の4拍子だったのに、好きになったのは「クール」「物静か」「長髪」「バリバリの運動系」。いくらこれまで自分のタイプがよく分からなかったとはいえ、真反対すぎじゃね?いや推し感情と恋愛感情は別だけどさ。それとも、本当に俺は幻獣が好みだった?え、新手というかマニアック過ぎん?さすがにそれは無いと思いたいんだが・・・。
考えてみたところで。現実の男も女子にも興味はない。あるのは、ただただこのキャラが好きという事実だけ。
「とりあえず、次から気をつけよ」
俺の呟きを知ってか知らずか、ホーム画面の推しは「午後も頑張ってな」と良い笑顔で言った。
ちなみにその日、俺は計4回タイトルコールを聞き、その内3回が初恋キャラというあり得ない記録を叩き出した。その度にイマジナリーダイイングメッセージを残し、脳内で俺の墓が建てられた。はぁー、死にゲーが過ぎる・・・。
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