第36話 氾濫
ーーーティニー視点ーーー
遂に待ち望んだ夢を見た。
幾つかある内の一つの目標だけど、絶対に解決しなければいけない事よ。
「みんな!すぐにリビングに集まって!!!」
まだ日も昇り切って無いと言うのに、屋敷中に響く声で皆を起こす。
あちこちで物音が聞こえて来たわね!
ワタシもすぐに着替えてリビングに向かう。
いつもの修道服に、ディノスにお願いして買って貰った革のジャンパー、今の私の正装よ!
「どうしたんだ?」
リサと一緒にディノスがやって来た。
もうすぐ15歳を迎えるディノスは益々格好良くなっており、じっと見つめられると何も言えなくなってしまう…。
ディノスに待っててと手で伝え、皆を待つ……遅いわね…。
「やっと集まったわね!重大ミッションよ!もうすぐ
ワタシの言葉に皆が固まるのが分かるわ。
無理も無いわね。つい昨日までは氾濫は起きないって話してたんだもの。
「どこで起こるんだ?」
迷宮探索も周辺での間引きも欠かさずに行っているもの、分からないのも無理は無いわ。
『全てよ!!」
鉱山、魔の森、迷宮、全てから魔物が溢れ出るわ。
「まさか…。何の準備も出来ておりませんぞ!?」
セバスが慌てているわね。
当たり前か…このままじゃ市民の犠牲が大きすぎるわ。
「セバス!すぐに街の代表者達に伝えて来い!
ディノスの命令に皆が行動を起こす。
はぁ〜〜〜、カッコイイ…。
「ティニー、他に何か有るか?」
緊急事態だと言うのにディノスに見入ってしまった…。
頭を振り、意識を切り替える。
「今回の作戦は白都を救う一つになるわ!絶対に
正式な神託が下った訳じゃ無い。
でもあの夢はそう告げていたわ。
待ちに待った白都の救済、絶対に成し遂げて見せるわ!!
ワタシの言葉にディノスの迫力が増す。
真剣な話し合いだって言うのに、何であんなに魅力的なオーラを出すのよ!
ーーーディノス視点ーーー
漆黒骸骨の討伐から一年半が経った頃、ティニーがとんでもない事を言い出した。
白都の救済に、
私達は皆聖女信仰者だし、勿論ティニーも信じている。
どんなに荒唐無稽な話だろうと信じられる。
街の代表者達に伝えればすぐに
公爵軍が手伝ってくれるなら被害を抑えられるんだが…。
今回は今までの氾濫と違い市民達の準備が出来ていない。
どれだけの被害が出るか予想もつかないぞ。
獣人や亜人の里とも交流は無いままだ。
もうすぐ入学、半ば諦めていた所でコレとはな。
「ディノス様!ギルドマスターが是非話がしたいと…!」
無事ギルドにも伝えられたようだな。
ギルドとは一応の和解をしたものの、未だにしこりは残ったままだ。
仕方無い事とは言え、
皆はまだ足りないと考えているみたいだが、私としては十分だと思っている。
「ディノス様に出向けと言うのですか…!?」
リサが激怒している。怒りの余り重力刀が揺らめいている程だ。
アリスも…と言うか、皆怒っていた。
「リサ、良い。…ギルドへ行けば良いんだな?」
この子は全く悪く無いので頭を撫でておいた。
「無辜の民を救う為なら多少の泥はすすってやろう!」
格好つけて宣言する。
こうでも言っておかないと、ギルドで皆が暴れかねんからな…。
「ディノス様!?ようこそおいで下さいました!」
ギルドに到着すると額当てをした壮年の男が慌てて出迎えに来た。
私が来た事に驚いているようだ。
「手短に頼むぞ。」
すぐにでも魔の森へ向かいたい。
迷宮も気になるが、まずは魔の森を叩くつもりだ。
「っ!分かりました。色々と聞きたかったですが、そんな場合じゃ無いですわな…。」
私達がちゃんと迷宮探索していたか疑っているのかも知れないな。
私達の報告が真実なら、過去の経験則から言えば迷宮の
「魔の森、鉱山から魔物が溢れていると報告を受けました。…ディノス様はどうなさるんで?」
畳み掛けるようにマスターが聞いてくる。
公爵軍が撤退しているとの情報も入ってきた。私が一緒に逃げると思っているのだろう。
「私達は魔の森を一掃する。迷宮下層から敵が上がってくる前にカタをつける。」
周辺の里も気がかりだ。
本来は公爵家が守る必要の無い民達だが……全て守って見せる。
「
両方とも通路が狭いので時間を稼ぐ事は出来るはずだ。
セバスには鉱山の手助けをお願いする。
「…は?……いえ…、皆様方だけでやるおつもりで……?」
私の言ってる事が理解出来ていないようだ。
今も呆けた顔をしている。
「ここは公爵領、私は公爵家の人間だ。貴様らギルドは好きに行動しろ。」
そう告げるとギルドを後にする。
この都市のギルドは強者こそ居ないが無能の集まりという訳では無い。
無理に協調するよりこの方が良いだろう。
「ディノス
何かリサの声がしたと思って振り返るが、いつものキリッとした顔だった。
何故か皆の顔が真っ赤だが、何か有ったんだろうか。
リサも優しく微笑んでくるだけなので、気のせいかと思って行動を再開する。
「
「「は!!」」
二人が
「セバス!孤児院の人間を使って鉱山へ行け!」
「畏まりました。」
戻って来たセバスにも早速声をかける。
「私達は森だ!全てを救うぞ!!」
「御心のままに!」
「頑張ります!」
「まっかせて!」
「はぁい〜♪」
全員で森へと入る。
同時に薄い魔力の膜が森の大部分を覆っていく。
ジュリの広域探査魔法だ。
里の方は隠蔽魔法が邪魔をして正確な位置は分からないようだ。
「ノス様」「私達を」「お使い下さい。」
いつの間にか森の入り口に来ていたエルフの三つ子が願い出てくる。
どうやらジュリが遠隔通話で呼んでいたようだ。
「分かった。頼む。」
彼女達は森のエキスパート。
森の精霊を通して私の声を各地の里に伝えてくれる事が出来る。
3人で魔法を輪唱する。
魂の共有と言う稀有な能力を持っており、それが原因で研究対象となっていたらしい。
準備が出来たと顔を向けられる。
『「迷宮都市『ペイス』周辺の里へと告ぐ。私は聖女マイハの子、ディノスだ。』
『
簡単だが伝わったはずだ。
三つ子は魔力を消耗して座り込んでいる。
隠れ里も密かに街と交易しており、
まだ
「ありがとう。周辺の敵は片付けるからゆっくり戻ってくれ。」
3人にマナポーションを渡す。
今あの街で私の命令に逆らえる人間は居ないだろう。
「ジュリ、案内しろ!」
ジュリの導きに従って魔物を倒していく。
縦横無尽に森を駆け回り、各地に散る魔物を倒す。
(残りは中央の集団だけか…。)
周辺部の小集団は全て殲滅した。
移動にかなりの魔力を消費したが、アイテムを使って回復する。
後は仕上げだけだ。
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