第15話 宣戦布告
「え、お姉ちゃんがどうして
お姉ちゃん。それは
妹の結衣が連れてきた親友、
その事実に驚きを隠せない。
だが、少しでも早くあの気まずい空気を打破するためにも、結衣を大石のもとへ連れて行かなければらならない。
それで早く2人には帰ってもらって、この修羅場をくぐり抜けよう。
「……宮崎姉妹のことは置いといて、結衣、早く行こう」
僕の身の安全のためにも。
宮崎の妹、佳奈ちゃんは結衣の部屋に待機してもらい、結衣を連れて
大石としてもこれ以上宮崎と一緒にいたくないのか、早く帰れるようにと帰り支度を済ませていた。
「大石、紹介するよ。僕の妹、結衣だ」
「お兄ちゃんがいつもお世話になってます〜」
「……あ、どうも。
まずは疑いの目を向けた大石。
だが、予想外の出来事、宮崎の妹が結衣の親友として家に遊びに来たことにより、疑いが晴れたようだ。
「はぁ……よかったぁ……」
大石は安堵のため息をついた。
僕としても疑いが晴れ、やっとこの修羅場から解放されて、最高な気分である。
「じゃあ確認もできたし、私帰るね」
「うん」
「……それと、宮崎さん。一緒に帰らない?」
大石による爆弾発言。
今まで僕の部屋でずっと気まずい空気を作っていた張本人たちが、一緒に帰る……だと!?
大石の意図が分からない。
どうして宮崎と一緒に帰りたがるのか、それが謎でしかない。
「いや、普通に無理なんだけど。どうして私があんたなんかと一緒に帰らなきゃいけないわけ?」
「話したいことがあるから」
大石の目はマジだった。
一緒に帰るのは当然ながら嫌なのだろうが、話したいことがあるのは本当なのだろう。
「ふ〜ん? わかった、いいよ」
宮崎もそのことを察したのか、一緒に帰ることを承諾する。
「じゃあ、酒井くん。また明日ね」
「あ、ああ」
そして2人は並んで帰っていった。
そんな2人の後ろ姿を見ながら、僕はどうか喧嘩にはなりませんようにと祈ることしかできなかったのだった。
「ごめんね、一緒に帰ろうなんて言っちゃって」
「……別に。それで、話ってのは?」
「宮崎さんさ、酒井くんのこと今も好きなの?」
「……は?」
宮崎は驚きを隠せない。
話があると言われ、もう一緒にいたくもない人と帰ることになり、唐突に祐希のことを好きなのかと聞かれれば無理もないだろう。
「私、酒井くんから全部聞いたよ。中学校の頃のこと」
中学校の頃の話。
それは宮崎が祐希に告白し、恥ずかしくなって罰ゲームだと言ってしまったことだろう。
その時の後悔は宮崎の中でも、今でも残り続けている。
「そう、なんだ……」
「で、今も好きなの?」
「うん。好き、だと思う。でも、あんたも好きなんでしょ? 酒井くんのこと」
「……そっか、私も好きだよ。元々は気になってただけだったんだけど、宮崎さんと酒井くんが2人でいるところを見て、好きになってることに気づいた」
「あっそ……でも、そのことを言うためだけに私を帰りに誘った、ってわけじゃなさそうだけど」
その言葉を聞いた大石はクスクスと笑った。
単純に宮崎の言動が面白かったからである。
「宣戦布告をしようと思ったの」
「宣戦布告?」
「うん。私、宮崎さんには絶対負けないから」
「なるほどね。私も負けるつもりはないよ」
そしてお互い真剣勝負をしようと決め事を作り、2人は別れたのだった。
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