第14話 人生初、女子を家に上げる
学校からの帰り道、予想外の出来事が起きた。
元々は
この後は、修羅場になること間違いなしだ。
前に2人が話した時も、初対面にもかかわらず言い争いに発展してしまった。
そしてなぜかは分からないが、恐らく今宮崎は怒っている。
彼女を怒らせることを何かしたのか、と聞かれれば僕としても分からないとしか答えようがない。
そのため、宮崎が怒っている理由など分かるわけもないのだ。
「えっと……2人とも、ちょっと近くない?」
僕の家に向かっている最中、3人で歩き始めてからずっと大石と宮崎は僕の手を両手で掴んでいるため、ずっと密着状態なのだ。
今のこの状態を、まさに両手に花だと思う人がほとんどだろう。
確かにそうなのかもしれない。
でも、僕は今のこの状況を楽しむことなんて、絶対に出来ないと断言出来る。
「酒井くん酒井くん、今度2人で駅前のカフェ行こうよ!」
「……酒井くん、来週の休みは一緒に遊園地に行かない?」
「はぁ?」
「何か?」
さっきからずっとこの調子である。
大石と宮崎が僕に話しかけ、それに反応した2人が喧嘩に発展。その喧嘩を真ん中にいる僕が仲裁する。
……誰か、助けてクダサイ。
僕の切実な願いを叶えてくれる、女神様は都合よく現れるはずもない。
結局そのまま両手に抱えた花の喧嘩を止め続け、やっとの思いで家に着く。
「……疲れた」
大石と宮崎の2人を僕の部屋に案内し、飲み物を取ってくると言ってリビングに来てから数分が経った。
あの2人は今、気まずい空気が流れて黙っているか、喧嘩をしているかのどっちかになっていると思うが、声が聞こえてこないため恐らく今は前者の状態だろう。
「……戻りたくないな」
思わず本音が漏れてしまう。
今は妹の
結衣が帰ってきてくれれば多少は状況が変わるだろう。そのため、早く帰ってきて欲しいところだ。
ため息をつきながら、待たせている2人のもとに麦茶を持って戻ると、やはり部屋の中は静寂に包まれていた。
2人はそれぞれ離れた場所に腰を下ろしていて、僕が戻ってきたと同時に視線を送ってくる。
ちなみに今、大石はスマホを触っていて、宮崎は何かの雑誌を読んでいる。
お互い目すら合わせず、ただただ自分のことに夢中になっていた。
(やっば! 何この空気! もしかして、結衣が帰ってくるまでずっとこのまま!? さすがにしんどいんだけど!)
現状の気まずい空気が流れている中、思わず部屋に入ったところで立ち尽くしてしまう。
この空気感は半端じゃない。
「……で、酒井くん」
「……は、はい!」
この沈黙を破ったのは大石だ。
そんな大石を雑誌から目を離した宮崎が睨めつけている。あれは、今にでも獲物を狩りそうな目だ。
「妹さんは今、家にいるの?」
「いや、それがまだ帰ってきてなくて……」
今日は珍しく結衣はまだ帰ってきていない。
いつもなら帰ってきている時間だが、どうして今日に限って帰りが遅いのだろうか。
「へぇ〜、酒井くん妹いるんだ」
今まで大石を睨めつけていたはずの宮崎は、いつの間にか表情が柔らかくなり、恐るべきことに首を突っ込んできた。
そんな宮崎に対抗する者が1名。
「あなたには関係ありません〜」
「なんでよ! それじゃああんたにも関係ないじゃん!」
「はぁ? 私には関係ありますけど〜?」
目を合わせればすぐ喧嘩。
これを止める身にもなって欲しいものだ。
「おいおい、いい加減に――」
「たっだいまー!」
下からは元気な声で、救世主の声が聞こえてくる。
グッドタイミング! ……じゃなくて、もっと早く帰ってこいよ!
心の中で見事なセルフツッコミ(寒い)をしながらも、救世主がいる玄関に急いで向かう。
すると、その救世主の後ろには、結衣と同じ制服を着た女の子が1人立っていた。
「あ……すいません、お邪魔します」
「どうぞどうぞ。結衣、友達か?」
「うん! 親友なの!」
なんだ結衣。僕には同性の親友がいないからって、見せびらかしにでも来たつもりなのか!?
まぁ、それは置いといて、結衣を少しの間借りないとな……
「そっか。結衣、ちょっとの間でいいから至急僕の部屋に来て欲しいんだけど、いいかな?」
「別にいいけど……じゃあ
「うん、分かった」
佳奈ちゃんと呼ばれた女の子は、脱いだ靴を綺麗に揃え、礼儀正しいすごくいい子なのだろうと思った。
そう思ったと同時に、上の部屋、恐らく僕の部屋から足音が聞こえてくる。
「やっぱり佳奈だったんだ。名前が同じで声まで似てるから、もしかしたらって思ったけど」
声の主は宮崎。
結衣の親友、佳奈ちゃんと知り合いなのだろうか。
「え、お姉ちゃんがどうして結衣ちゃんの家に!?」
お姉、ちゃん……!?
「ちょ……ちょっと待て、佳奈ちゃんってもしかして……」
「うん、私の妹」
僕の妹の親友が宮崎の妹。
こんな偶然に、僕は驚きを隠せなかった。
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