第12話 まさかの展開

 一昨日は大石おおいしと2人でウィンドウショッピングをした。

 改装して開店したばかりのショッピングモール。

 そこでウィンドウショッピングをしたわけだが、大石と2人で遊ぶというのは初めてで、すごく楽しかったのを覚えている。


 そして、昨日は妹の結衣ゆいと映画鑑賞をした。

 純愛映画はけどすごく泣けたし、アニメ系の映画では面白いシーンがいくつもあってたくさん笑えた。

 1日でいくつもの映画を見るというのは今までしたことがなかったが、また機会があったらやりたいと思う。


 今日はそんな楽しかった2日間の休みが明け、いつもの如く朝早くから学校に向かっている。

 一昨日や昨日が楽しすぎたせいか、余計憂鬱だ。


「はぁ……学校行きたくない……」


 ため息をついても何かが変わるわけがない。

 そう、今のこの状況だって。


「ねぇ見て! あれって噂の酒井さかいくんだよね? めっちゃかっこいいんですけど!」


「写真でしか見たことなかったけど、実在したんだ! 学校に着いたらみんなに自慢しなきゃ!」


 前まではひそひそ話で何を言われているのか全然分からなかったが、最近は何もかも聞こえている。

 かっこいい、と思われているのは素直に嬉しいが、そのせいで一向に男子と仲良くなれない。


「チッ……! またあいつかよ。調子乗ってんじゃねぇぞ」


「顔がちょっといいからってふざけやがって」


 このように、顔すら見たことがない人たちからも悪口を言われる始末。

 察しがつくと思うが、クラスでの状況は今よりも酷い。


 男子からの視線は殺意を感じ、女子からの視線は好意を感じる。

 これだけ言えば今の状況と大して変わらないが、クラスでは男子から感じる殺意が尋常じゃないのだ。


 今のクラスの状況は、男子と女子の間で壁ができている。

 そのため、男女で話しているところなどあまり見ない。


 しかし、僕だけは違う。

 僕はなぜか男子側ではなく、女子側にいるのだ。


 休み時間になれば女子に囲まれ、その間男子全員から殺意を向けられる。

 今では休み時間こそが学校を憂鬱にさせる原因と言っても過言ではない。


 僕は宮崎みやざきに復讐するためだけに垢抜けしたんだ。

 決して女子にモテたいからという理由ではない。


「今日は学校サボろうかな……」


 いつも学校に着く直前になって思う。

 別に行く意味もないし、家で映画を見ていたい気分だ。


 と、思って家に帰ろうと足を向けると、幸か不幸か登校中の大石と遭遇する。


「あれ? 酒井くんじゃん。おはよ〜……って、どこ行くの?」


「お、おはよう大石。いや〜、喉が渇いたから自販機でも探そうかな〜って思って、さ」


 我ながら見苦しい言い訳である。

 ……が、僕は仮にも成績優秀者。

 サボろうとしているとは簡単には思われまい。


「ふ〜ん? でも、それなら学校の自販機でいいじゃん。そっちの方が安く済むし」


「そ、その手があったかー(棒)」


 くそう! もう家に帰れないじゃないか!

 記念すべき第1回目のズル休み、成功ならず!


「と・こ・ろ・で!」


 血相を変えて詰め寄ってくる大石。

 さっきまでは柔らかい表情をしていたが、今では怒りをあらわにしている。


 な、なんで!?

 もしかして、ズル休みしようとしたことがバレたのか!?


「昨日一緒にいた可愛い子、誰なの!?」


「…………え?」


「とぼけても無駄! 私見ちゃったもん! スーパーで可愛い女の子と2人で買い物してるところ!」


 ……んんんんん?


「ちょ……ちょっと待ってくれ。大石、それは誤解だ」


「何が!? 私ちゃんと証拠として写真も撮ったんだから!」


 そう言って、僕に撮った画像を見せてくる大石。

 その画像には、当然僕と妹の結衣が写っている。


「この女の子は僕の妹だ」


「……はえ? いもう、と?」


「うん」


 怪しい、と睨めつけてくる大石。

 疑われるくらいなら証拠を見せた方が早い。


「本当に妹かどうか知りたいなら今日家来るか?」


「行きます!」


 即答。

 恐らくコンマ1秒すらもかかっていないだろう。


「お、おう……」


 あまりの勢いに萎縮してしまったが、よく考えてみれば同級生の女子を家に上げるのは人生初だ。


 まだ朝だけど、緊張してきたな……


 斯くして、放課後に大石を家に迎えることになったが、すごく嫌な予感がするのは言うまでもない。

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