第2話 もしかして、モテてる?
「お兄ちゃん、行ってらっしゃい! 頑張ってね!」
「おう、ありがとう。行ってきます」
中学校卒業から約1ヶ月。
復讐の第二段階は成功し、それからの1ヶ月は、ずっとファッションの流行を勉強したり、何故か急に妹である
そんな日々はあっという間に過ぎ、今日、高校の入学式を迎えた。
これから通う高校は、復讐を誓う前に狙っていた高校よりもかなり偏差値が低く、僕はどうやら入試首席らしい。
新入生代表の挨拶、めっちゃ緊張する……
馴れない舞台上での挨拶。
そして、今の自分の姿を周りの人にどう思われるのか。
それが心配でしかない。
「まあ、少なくとも前までの僕よりかは、良い印象を与えられるだろうけど……」
色々と心配事が多くて、いつもとは違う通学路を歩きながら深くため息をつく。
「ひそひそ」
「ひそひそ」
あー、また始まったか。
1か月前にもこんな事があったな。
結衣は僕の容姿をすごくいいと褒めてくれたが、あれはお世辞なのかもしれない。
元が酷すぎたから、普通になって少しだけかっこよく見えたのかもしれない。
薄々思ってはいたけど、実感するとかなりキツい。
(中学の頃とほとんど何も変わらないじゃないか……)
中学の頃はわざとなのか、僕に聞こえるようにキモイだの陰キャだの色々言われて、毎日落ち込んでいた。
しかし今は、僕には聞こえないようにひそひそ話をされている。
まだ聞こえるように言われた方がマシや……
……もうやだ、帰りたい。
ずっと心の中で弱音を吐いていると、いつの間にか高校に着いていた。
(もう後戻りはできない。どうにでもなれ!)
――――そして迎えた入学式。
僕は今にでも死にたい気分になっていた。
どうしてか、って?
自分のクラスと出席番号を確認して、クラスに向かうと、中学の頃僕が好きだった女の子、もとい復讐相手の
そして見た感じ、他クラスや他学年にも同じようにカーストが高そうな人がたくさんいる。
うん、僕がこんな高校で人気者になれるわけがないね!
オワタ……
復讐の最終段階、絶対に達成できないじゃん……
「――――では、新入生代表挨拶、
「……はいっ!」
平常心だ……平常心……平常心……
まずは大きく深呼吸して……
「ふぅ〜〜〜〜〜」
「―――――――――――――――」
※※※
「ねーねー! 酒井くん酒井くん!」
入学式が終わり、クラスに戻って机に突っ伏していると、後ろの席に座っている女の子が話しかけてきた。
「……ん?」
「酒井くんてさ、彼女とかいたりすんの?」
……え? 何この急展開。
まだ初対面の名前も知らない女の子に、急に彼女いるかどうか聞かれるって、ドユコト!?
「べ、別にいないけど……」
「そっか〜、ありがと〜」
「う、うん……?」
後ろの席に座っていた女の子は満足そうな顔をして、クラスの女の子が集まっている場所に向かっていった。
……一体何だったんだ?
※※※
それから数日が過ぎたある日。
僕の周りで奇妙な現象が起こっていた。
まず1つ目は、僕が廊下を歩いていると、急に知らない女の子が駆け寄ってきたり、頬を赤らめながら、キャーキャー言われて騒がれたりすること。
そして2つ目は、放課後になると、僕が通っている高校の前に
……もしかして僕、今めっちゃモテモテなのでは!?
とうとうやって来てしまった! 僕のモテ期!
これならいずれ、宮崎よりも人気者になれる日が来るかもしれない。
…………あ、でもどうやって宮崎に会いに行けばいいんだろう。宮崎が通っている高校には、男はヤンキーしかいないらしいし。
できれば近づきたくもないんだよな……
いつも高校の前に屯ってる女の子のように、僕の高校に来てくれれば……
「ねーねー! 酒井くん酒井くん!」
休み時間に色々と考え事をしていると、後ろから声が聞こえてくる。
「ん?」
「今日よかったら駅前のカフェ行かない?」
誘ってきたのは、後ろの席の
彼女の特徴はなんと言っても、あのしなやかな金髪だろう。オマケに美人で、間違いなくカースト上位の筆頭格である。
そして入学式の日以来、僕は大石に毎日のようにカフェに誘われている。
「何度も言ってるけど、さすがに2人でカフェはちょっと……」
「やっぱり酒井くんは私のこと嫌いなんだね……しくしく」
「いや……そういう訳じゃ……」
「じゃあ決まりね! あ、ちなみに今日は私以外にも行きたいって子が2人いたから、その子たちも一緒だよ〜」
狙ってたなこの野郎!
……まあ、いいか。
2人でじゃないなら誤解も生まなそうだし。
「わかったよ」
「やった!」
僕と大石は放課後になってから、颯爽と駅前のカフェに向かった(他の2人は後で来るらしい)。
理由は言わずもがな、最近高校前に屯するようになった女の子たちを避けるためである。
そして他の2人を待つこと10分……
「……うーんと、大石さん。これは一体どういうことか説明してもらおうカナ?」
僕と大石の前に現れたのは、名前は知らないが、僕たちと同じ制服を着た女の子2人だった。
「え? ちゃんと言ったじゃん。私以外にも行きたいって言ってる子がいる、って」
「それは聞いたけど……女の子2人とは聞いた覚えが……」
男が来ると思ってたのに、なんて口が裂けても言えない……
「だって聞かれなかったし」
……ごもっともでございます!
「まあいいや、早く注文しちゃおう」
ピーンポーン。
「はーい!」
あれ……? この声、どこかで……
「ご注文はいかがなさいますか?」
オーダーを取りに現れたのは、見覚えのあるフワフワとした栗色の綺麗な長髪の可愛らしい女の子、もとい僕が復讐を誓った女の子、宮崎葵その人だった。
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