ずっと好きだった女の子に罰ゲームで告白されたので、復讐しようと誓って垢抜けしたら逆に言い寄られるようになったんだが?

橘奏多

第1話 僕は復讐を誓った

 中学3年の冬、受験前で誰もが勉強に明け暮れているとき、僕――酒井祐希さかいゆうきはずっと好きだった女の子、宮崎葵みやざきあおいに告白された。


 宮崎は学校内でカースト上位のギャルだ。

 フワフワとした栗色の綺麗な長髪に加えて、今にでも折れそうな細い足。そして中学生にしては大きめの胸。

 外見だけで言えば間違いなく、誰もが認めるスタイルもいい超美少女である。


 そんな彼女のことを本当にずっと好きだった。

 一目見たときからずっと。

 それなのに…………


「ずっと好きでした! 私と付き合ってください!」


「……え、本当に? 実は僕も――――」


「はい、残念〜。これ罰ゲームでやっただけだから。そもそも、私があんたみたいなキモオタのこと好きになるわけないじゃん。バカじゃないの?」


 …………は?


「まさかマジの告白だと思ったわけ? ウケるんですけど」


 こんなことってある?

 ずっと好きだった女の子に罰ゲームで告白され、それに加えて悪口を言われるなんて。

 しかも受験直前に。


 確かに彼女の言う通り、僕の外見はお世辞にもイケメンとは言えない。

 眼鏡をかけてて、あと少しで肩につきそうな長い髪。もう言わずもがなかもしれないが、見た目はただの陰キャだ。


 それでもさすがに心が痛む。

 何せ一番言われたくない言葉を、一番言われたくない相手に言われたんだ。

 そんなの悲しまずにはいられない。


 でも、このままじゃ終われない。

 罰ゲームで告白されるだけじゃなく、悪口まで言われて黙っていられるか。


(絶対に見返してやる! 垢抜けして、お前なんかよりも人気者になったるわ! 驚きすぎて目が飛び出ても知らないからな!)


 そう、僕はこの瞬間、ずっと好きだった女の子、宮崎葵に復讐を誓った。



※※※



 それからは苦労の連続だった。

 復讐を誓ったのはいいが、あと少しで中学を卒業し、宮崎とは高校で離れ疎遠になってしまう。

 それでは復讐をしようにも出来ないため、急いで情報をかき集め、宮崎が受験する高校を調べ上げた。


「何とか間に合ったな。出願ギリギリだったけど」


 本当は同じ高校に行って復讐をしようと思ったのだが、宮崎が受験する高校は県で最も馬鹿な高校だったため、さすがの両親も猛反対だった。

 というわけで、その高校の近くにある県の中でも普通なレベルの高校を受験することになった。


 受験の結果は言うまでもなく僕は合格。

 そして、なんとか宮崎も合格出来たらしい。


「まずは第一段階クリアだな」


 受験が終わり、あっという間に中学の卒業式の日がやってきた。

 別に僕にとってはこの中学に思い出なんてないわけで、卒業式が終わり次第すぐに家に帰った。

 これから第二段階に入らなきゃいけないし。


 そう、僕は復讐について3つの段階に分けた。


 まず第一段階は、近くの高校へ進学。

 次の第二段階は、僕の垢抜け。

 そして最終段階である︎︎ ︎︎ ︎︎‴宮崎よりも人気者となり、あわよくば宮崎を惚れさせ、盛大に振る‴ことを出来れば復讐完了だ。


 至ってシンプルだが、最終段階をクリアするのは中々に難しいものだ。

 あんなにも可愛い……いや、可愛くない宮崎よりも人気者になり、彼女を惚れさせるなんて到底出来やしない。

 だが僕は無理だとわかっていても、何もやらずに諦めるほど、哀れな人間ではない。


「第二段階の手始めに、まずはこの長い髪をどうにかしなきゃな」


 …………よし!



 とりあえず無事に散髪は終わり、美容院の帰りに眼鏡屋に寄ってコンタクトを買い、僕は今コンタクトの入った袋を片手に家に向かっていた。


 ここまでは予定通り、なのだが…………


「ひそひそ」

「ひそひそ」


 僕はただ道を歩いているだけなのに、なぜか道行く人たちから注目を浴びている。


(え、まさかこの髪型似合ってない!?)


 僕が選んだ髪型は、待ち時間にスマホで偶然見つけた爽やかなヘアースタイル。

 自分的には割といい感じになったと思ったけど、どうやら勘違いだったようだ。


「はぁ……こんなんじゃ復讐出来ないじゃないか」


 復讐が早くも失敗に終わりそうだと悟り、やけくそになって家まで全力疾走して帰っている途中、2歳年下の妹である結衣ゆいを見つけた。

 結衣は黒髪のストレートロングで、清楚な上に存在感があるから見つけやすい。


「おーい結衣、今帰りか?」


「……え、誰ですか?」


 …………は?


「いや、誰ってさすがに酷くないか? 僕はお前の兄貴だぞ」


「……兄貴って、あのキモオタの?」


 ぐはッ……!

 まさか妹にまでキモオタだと思われていたとは……


「ちょ、ちょっと待って。本当にお兄ちゃんなの?」


「ああ、そうだが?」


「え……嘘、いくらなんでも変わりすぎでしょ」


「結衣は今の僕の容姿、どう思う?」


 結衣に似合ってないと言われたら宮崎への復讐は諦めよう。いい経験になったということで……


「すごくいいと思う」


「……え?」


「だってお兄ちゃん自分の顔見た!? こんなにもかっこよかったら、そこら辺の女子なんて誰でも落とせるよ!」


 さすがにそれは言い過ぎなのでは……?

 さっきも色んな人からひそひそ話されてたし。


「……本当か?」


「うん! 私が保証する!」


 結衣がこんなにも称賛してくれるとは思わなかったな。でも、認めてくれたのは素直に嬉しい。


「ありがとう。頑張ってみるよ」


「え……お兄ちゃん、もしかして色んな女子を落とすつもりだったの……?」


「そっちじゃなーい!」


 兎にも角にも、待ってろよ宮崎。

 絶対お前より人気者になって、惚れさせてやるからな!!

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