第5話
白馬は村に預け、3人は徒歩で山へと向かった。甚兵衛を先頭にしばらく歩くと赤い鳥居が姿を現した。
「村の者たちは、あの鳥居から先には進みませぬ。わしも、子供の頃、何度か度胸試しで鳥居をくぐったことはありますが、2,3歩進んですぐに戻ってきました。あの鳥居の先は、なんともいえぬ、嫌な感じがするのでございます。」
そう言って、鳥居から先を行くのを躊躇する甚兵衛の横を喜助がツカツカと通り過ぎて行った。佐々波もそれに続き、慌てて甚兵衛も二人の後を追う。
鳥居から先は道も途切れており、ここからは雑草の茂った道なき道となる。身の丈ほどもある草が生い茂り、生ぬるい風に揺れていた。
甚兵衛と喜助が鎌で草を刈り、道を作りながら歩いて行く。
「ところで、不思議に思っておったのですが、佐々波様がなぜ妖魔退治などに向かわれるので。神虫に殺られたのは、笹本の軍と尾上の軍。どちらも佐々波様とは関係がございませんではありませんか。」
佐々波は、鳴き声はするも姿を見せぬ鳥を探しているのであろう。視線を左右に動かしながら、「ちと、妖魔とは縁がありましてね。」と答えた。
「ですが、佐々波様ほどの方なら千や万の軍を動かすことも出来ますでしょう。なぜ、たった御二人でいらっしゃったので?」
その問いには、喜助がぶっきらぼうに答えた。
「大軍を率いたところで死人が増えるだけだ。」
甚兵衛は、少しも納得できなかったが、それ以上聞くなという態度が十分に伝わって来たため、口を閉ざした。
しばらく、無言で歩いたところで佐々波が口を開いた。
「喜助。甚兵衛殿も我らに命を預けていただいたお方。やはり、妖魔のことは話しておいた方が良いのではないか。」
喜助は、考えている様子であったが「そうですな。清重さまがそうおっしゃるのでああれば。」と呟き、鎌で草を刈りながら話しを始めた。
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