第9話 林間学校1日目 熱が出た⁉︎
集合場所は宿の駐車場である。私たちは土砂降りの雨の中、ただ突っ立っていた。下山しているときはカッパのみであった。カッパを着ていても、こんな大雨だと、意味がない。そのため、シャワーを浴びたくらいに濡れている。寒い。
「宿、間違えた?」
「合ってるはずだよ」
宿から仲居さんが出てきた。
「大丈夫ですか⁈ 早く宿の中に入ってください‼︎」
「集合場所ってここで合ってましたよね?」
「そんなことより、早く入ってください! 風邪引きますよ!」
『ありがとうございます』
私たちは自分たちの部屋に案内された。そこで、仲居さんは話してくれた。
今、クラスのみんなと先生は頂上付近の山小屋にいる。その理由は雷と大雨で、下山は困難だと、判断したからである。そこの山小屋は設備がしっかりしていて、宿のようだ。無理に下山するのではなく、山小屋で一晩泊まることにしたのだ。
雨はお昼ご飯を食べている時に降り始めた。私たちは早く下山しよう!とした。そのため、山小屋は寄らなかった。みんなは山小屋でお昼ご飯を食べていた。だから、食べてるとき、周りに人がいなかったのか!
みんなは山小屋にいて、雨が降ってきたため、そこに留まっていた。どんどん雨が強くなり、雷も降ってきたため、先生はこの判断を下した。先生は山小屋で一泊するという連絡をクラス全員にしたが、全く気が付かなかった。私たちは連絡がきたとき、ちょうど雷が目の前に落ちたときだった。
私たちの目の前で雷が落ちた木は内側から燃えていた。山火事になると思っていたが、大雨のおかげで火は消えたらしい。
と、仲居さんは説明してくれた。
私たちもここまでの経緯を話した。
「お疲れ様です」
その一言は優しかった。
仲居さんのお疲れ様という言葉で緊張が解かれたのか、ひよりと紫音はフラッ! 倒れた‼︎
炎はひよりが倒れるのを阻止、夜風は紫音が倒れるのを阻止した。倒れるのを阻止というのは倒れそうになったのをハグするということだ。
「ひよりの体が熱いぞ!熱か?!」
「紫音も熱があるみたい!」
「雨に当たって風邪を引いてしまったかもしれません。布団敷いて寝かせましょう!」
仲居さんは爆速で布団を敷いてくれた。速すぎだろ!
「私は冷えタピ持ってきます!」
「皆さんも雨に濡れて、体が冷えてると思うからお風呂入ってきてください!」
仲居さんは部屋を出て行った。
「病人だけを部屋に置いておくことは出来ないから、私残るよ」
「いや、俺が2人のこと看るから夜風は先入ってこい」
「大丈夫だよ! 氷! 今はあんまり、お風呂に入りたくないから、部屋でシャワー浴びるぐらいにしたいんだよね。だから行ってきて!」
(私も熱がある気がするからお風呂に入るのはやめとこう)
「わかった。ありがとう」
「出来るだけ早く上がってくるね」
光輝、氷、炎、レイカは宿の大浴場に行った。
私はさっとシャワーを浴びた。紫音とひよりはぐっすり寝ている。
2人の寝顔を見て私はニコニコしている。
2人とも寝顔可愛いなぁ。紫音のあまのじゃくも可愛いけど、たまに俺様キャラになるからカッコいいんだよね。
そうだ! 寒いから、白湯飲みたいなぁ。お湯沸かそう。
夜風はお湯を沸かすため、部屋を出ようとした。
ん?
私の袖、誰かに引っ張られてる?
「夜風」
「俺の隣にいろ」
「え?」
「夜風が隣にいると安心する」
「楽しい林間学校になるはずだったのに、熱とか出てごめんな」
「大丈夫だよ」
私も熱あるけどな!ハハッ!
「今、俺は夜風を独占してる」
「いつもは他3人がいるから夜風と2人きりになれない」
「それって独占欲ってこと? いつも大事なときにあまのじゃくになってストレートに言わないから嬉しい!」
「俺はいつもストレートに言ってるぞ」
自分があまのじゃくになってること気づいてないのかな? てか、熱出てるとあまのじゃく出ないんだ!
「大好きだぞ、夜風」
「ありがと。私も紫音のこと大好きだよ」
2人とも熱が出ていて、正常な判断ができていない。いつもなら2人とも照れて言うはずなのに、どうしちゃったんだか。
「2人きりの時間が続けばいいのに」
ひよりいること忘れてた。ぐっすり寝てるから大丈夫か。
「夜風も熱あるのか?具合悪そうだぞ」
「うん。紫音ほどの熱ではないよ。なんか寒いんだよね」
「俺の布団入れよ」
「別に大丈夫だよ」
「いいから!」
紫音は無理やり夜風を自分の布団に入れさせた。
「あったか! 気持ちいいわ〜」
「だろ!」
私たちはいつの間にか2人で寝ていた。
お風呂から帰ってきた光輝、氷、炎は2人が一緒に寝ている姿を見て、寝顔が可愛いと思ったが、紫音が夜風に変なことしていないか心配になった。
ひよりが寝言で「炎くんカッコいいなぁ」と言っていたのは誰も知らない。
***
夜風が今回の話で惚れたのは……紫音‼︎ 本音が聞けて嬉しかった‼︎
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