5.聖なる森

 こうして、騎士のふりをした賢人王の孫エドアルト、歌うたいの少年コル、筋肉吟遊詩人テオの使者3人は、稀代の占い師サミィの託宣に導かれ、聖なる森へと向かうことになりました。

 陽の高いうちにと急いで出発したのですが、道は想像していたよりも険しいものでした。


   ☆


 伸びきった下草が、歩くたびに手足を切り裂く。


「った」


「あら、大丈夫? ムーサ、ほら、見せて」


 聖なる森まで1本道なので難なく着く予定だった。

 それが道も木々も荒れ放題。

 立ち枯れて鋭く折れた枝々を押しやり、枝同士がからまって道を閉ざしている場所を迂回する。

 それほどの距離ではないのに、思うように先へと進めないので、時間ばかりかかっていた。


 聖なる森にはちゃんと管理人をおき、森も、森までの道も整備させているはずなのに。

 おかしい。聖なる森に、なにかあったのか?

 そんな報告はなかったはずだが。


「いっ」


「あらあら」


 それにしてもコルの装備は失敗だった、とエドアルトは苦々しく思う。

 聖なる森への道がここまで荒れているのは予想外だったにしても、重いと動けないからと軽装備にしすぎた。

 せめてむき出しになっているコルの腕や足を覆うものがあれば……。


「ん」


 エドアルトの騎士服であるマントが枝に引っかかり、つんと引き止められるように引っぱられている。

 はぁ。これで何度目だ。もうマントを外そう……そうだ!


「コル、テオさん。ちょっと止まってください」


 マントに剣を当て、魔法で適当な大きさに切り裂くと、コルの腕と足を覆った。

 さらに細く裂いたマントで、要所要所を縛って固定する。


「これでちょっとはマシだと思うよ」


「あら。騎士クンってば意外と器用なのね」


「エドのマントが」

 

 エドアルトは片手を振った。


「いいんだ。マント引っかかって邪魔だったから」


「……ありがとう、エド」


「俺の方こそ、ようやく騎士らしいことできて良かったよ」


 聖騎士レックスがエドアルトにしてくれていたように、エドアルトがコルの面倒をみようと思っていたのに、早々に支度金を取られてからはテオの独壇場だ。今だって、先頭を歩き、枝をはらったり方角を確かめたりするのもテオで、エドアルトの出る幕がないのだ。


 それに、これでいちいち立ち止まらずに静かに考えられる。


 託宣師サミィと別れ際、コルとテオに気づかれぬよう、サミィに城へ戻るように伝えた。

 賢人王はサミィを信じているはずだ、サミィの考えを城の者にも伝えて欲しいと頼んだのだ。

 今頃は、エドアルトたちが森に向かったこともピエルに話が通っているだろう。


 サミィは『王に、なにか考えがあって、姿を消したのではないか』と言った。

 それを聞いてから、エドアルトは賢人王が姿を消す理由を考えていたが、なにも思いつかないでいる。


 おじいさまのことだから、きっと理由があって出かけたのだろう。


 でも、隣国シャラールの脅威が広がる中、王が自国を不在にする理由なんてない。

 やっぱりどこかで足止めをくらっているのでは。

 いや、賢人王なら、不在の間に問題を解決することくらいしてしまいそうだ。

 むしろ、問題が解決していないことが問題なんだ。

 だからこそ、エドアルトをはじめ城の人間は、賢人王はシャラール王国に捕らえられ身動きが取れないのだと思いこんでいたのだから。 


 サミィが無事だったことで、賢人王がシャラール王国にさらわれた可能性は低くなった。


 シャラール王国が隣国であるアブルム王国わが国になにも言ってこないのは、少なくとも、賢人王がシャラール王国の手に落ちていないからだ。シャラール王国にとっても賢人王の存在は脅威だから、アブルム王国にはおいそれと手を出せないのだろう。


 ギリギリの状況なのに、どうしておじいさまが姿を消さなくてはならないのか。


 何度目かの堂々巡りにおちいった時、エドアルトは足をとられて倒れこんだ。


ぅ」


 足元を確かめると、騎士配給ブーツの上から狩猟用の罠がガッチリくい込んでいた。


 しまった。このあたりは禁猟区だからと油断していた。

 顔を上げると、コルとテオは気づかず先へと進んでいる。 

 良かった。バレないうちに早く外して追いつかないと。


「あれ、エドは?」


「騎士ク~ン?」


 しばらく行きかけた2人が、エドアルトを探しに戻ってきた。

 返事をしないわけにもいかず、2人と合流する前に、なんとかエドアルトは罠を外して顔を上げた。


「あー、ちょっと転んじゃって」


 立ち上がろうとして、エドアルトは痛みでよろめいてしまった。


「はは。大丈夫。ちょっと足をひねっただけだから」


   ☆


「罠があるとは驚きよ。アタシ、ここでは猟をしないって聞いてたんだけど?」


「しないですよ。したら罰せられます。それはともかく、おろしてもらえませんか」


 不本意ながら、エドアルトはテオに背負われていた。


「もう自分で歩けますから」


「んんー。けっこう傷も深かったし、腫れてきてるわ。こういう時は無理しないほうがいいのよ。騎士クンって見かけより軽いから、遠慮しなくて大丈夫よ」


「それ、嬉しくありません」


「褒めてないわ」


「くっ。コルもなにか」


「エド、おれも今は無理しない方がいいと思う」


「……」

 エドアルトは苦笑するしかない。


「ねぇムーサ、もしも今ムーサが罠にかかっても安心してね。ムーサなら抱っこするわ。アナタたち2人はうちの子たちより軽いから同時にだってかつげるわよ」


「うちの子って……テオさん、ご結婚されてたんですか!?」


「あら、言ってなかったかしら? 奥様はカッコイイ女騎士なのよ」


「俺たちより大きいってことは、お子さんは騎士ですか?」


「そうなのよ。2人ともたくましい騎士になってるわ。1人くらいうたうたいになってくれても良かったんだけどねぇ。一緒に旅したかったわぁ」


 コルがうんうんとうなずいて言う。


「新しいうたを仕入れるには旅が一番ですよね。奥様とは一緒に旅しないんですか?」


「それがね、奥様ってば、子育ても職場でしていたくらい人気騎士でね。普段からそんなに休めないのよ。だからアタシの方が奥様の職場にお邪魔していたくらい。そんなわけで、奥様や子供たちと遊びがてらアタシも訓練を受けていたから、アタシ、自分ともう一人くらいなら守れるのよ」

 

 片目を閉じておどけるテオに、コルは笑顔を向けた。


「テオさん、スゴいですね。おれ、きっと罠とかは平気です。運だけはいいんですよ」


「運だけだなんて。ムーサは、声もいいし、かわいいし、健気だし」


「うぅ。毎回まいかい褒めすぎですって」


「そんなことないわ。褒め足りないくらいよ」


「あはは。テオさんの家族は幸せそうです」


「あぁほら、騎士ってカッコイイけど、いつどうなるかわからないでしょ? だから機会と言葉をおしまないことにしているのよ。それに、ムーサと一緒にうたうのは本当に楽しいし嬉しいから、言葉があふれてきちゃうのよ」


 歩きながら休みなく軽口を叩くテオに、エドアルトは感心していた。

 実のところ、足はかなり痛くて、テオに背負われて助かっている。

 しかし、エドアルトとテオの体格差がかなりあるとはいえ、エドアルトは騎士防具もつけているのだ。そんなエドアルトを背負って重くないはずがないのに、テオはいつも通りに動いて、エドアルトに気負わせないようにもしてくれている。


 俺も言葉を惜しんでないで「ありがとう」って言わなきゃな。でも、いきなり言うのも……。


「白い、鳥?」


 脈絡なく、つぶやいたコルの声にテオが立ち止まった。


「ムーサ、どこに鳥がいるの?」


「あそこに」


 エドアルトもコルの指さす先に目を向けたものの、伸びすぎた下草や枝しか見えない。


「あ、あの、すみません。きっとおれの見間違いです」


「テオさん」


「ええ、確かめないとね」


 エドアルトの呼びかけに、テオもエドアルトを支えていた手を離し、エドアルトはテオの背中からするりとおりた。


 コルの指した草むらを、テオが用心してかきわける。

 そこにはエドアルトがかかったのと同じ罠があり、ぐったりとした白い鳥の姿があった。


「俺が罠を外します」 


 エドアルトは先ほど外したばかりなので、手際良く罠を外すことができた。

 その間中、コルは息をつめて心配そうに鳥を見ていた。


「大丈夫。ケガしてるけど深くない。生きてるよ」


「良かった~」


「それにしてもムーサ、よく鳥に気づいたわね」


「そうだよ。全然見えなかったのに、どうやってわかったんだ?」


「えっ。なんとなくだよ。なんとなく、鳥が、いるような気がして」


「すごいわムーサ。本当に運がいいのね。ますます一緒に旅をしたくなったわ」


 エドアルトは、テオのようには思えなかった。


 コルは『白い』と先に言ったのだ。

 隠れた鳥を見つけただけなら、鳥の気配でもあるのかと思える。

 けれども、見えなかったはずの色を『白』と断言していながら、鳥かどうかはわからない様子だった。


 コルはなにを見たんだ?

 いや、コルにはなにが見えるんだ?

 それは、コルの持っている大きな魔力に関係しているんじゃないのか?


 エドアルトが問いただそうとしたとき、


「お前たち何者だ! ここでなにをしている!」


 背後から浴びせられた鋭い声に、3人は振り返った。

 エドアルトの腕の中に白い鳥があるのを見て、弓を構えた男は眉間を深めた。


「聖なる森は『森の民の里』とのさかい、禁猟区と知っているだろう。厳罰はまぬがれないぞ」


「ええっ」

「ちょっと待って。アタシたちは」

「罠を外しただけで」


「言い訳をするとはいい度胸だ。牢獄でも同じことが言えるか確かめさせてもらおう」


「ろ、牢獄?」

「騎士クン、そんなものがここにあるの?」

「あるんですよ。聖なる森の象徴である白い鳥は、森の民との友好の証。その鳥を汚す者が入れられる特別な牢です」


 面倒なことになったな。

 話してわかる相手ならいいが、目の前の男には見覚えがある。

 几帳面さと真面目さで聖なる森の管理を任されている、辺境警備隊長アネストだ。

 自分が王族として訪れているか、せめて鳥を手にしていなければ良かったが、密猟者にしか見えないこの状況では、なにを言っても信じてもらえないだろう。


 焦る3人の前に、鎧をまとい弓をかついだアネストが近づいてきた。


「エド、どうしよう?」

「騎士クン、使者だって話せばわかってもらえるんじゃないの?」

「今の俺たちは、密猟者だと思われています。なにを言っても、嘘だと突っぱねられるでしょう」


「そんな」

「本当にアタシたちは、狩りにきたんじゃなく」


「ああ、言い訳は牢獄でじっくり聞こう。今はさっさとここを出るぞ。お前たちがここにいるだけでも、森の民の怒りをかいかねないからな」


 エドアルトは、なおも口を開こうとする2人の腕を引くと、黙って首を横に振った。

 ただ言葉を重ねても聞いてもらえない。

 この性格だからこそ、ここの責任者なのだ。


 テオが、エドアルトとコルにだけ聞こえるように耳打ちした。

「ねぇ、3人バラバラに走ってみない? 道が入り組んでるから、逃げ切れるんじゃないかしら?」


「いいですね」


「待って。エドはその足じゃ走れないだろ」


「だからちょうどいいんだよ。俺が捕まれば時間を稼げる。その間に2人逃げきれたら勝ちだ。心配ないって。俺もなんとかして後から追いつくからさ」


「あら。騎士らしいこと言うのね。でも、そんなに焦って追いつかなくていいのよ。ゆっくりしてくれた方が、ムーサと2人きりを満喫できるもの」


 エドアルトの気を楽にするためか、テオが冗談めかしてくれたが、エドアルトとしては少しもゆっくりするつもりはなかった。


 辺境牢獄の鍵は城にしか置いていないのだ。

 無実でも牢に入ってしまうと、すぐに誤解が解けたとしても、鍵を取り寄せる手続きに時間がかかるので、しばらくは出られない。

 シャラール王国で助けを待っているであろう聖騎士、王国にあふれる難民が、エドアルトの脳裏をよぎる。

 今は一瞬だって時間を無駄にしたくない。


 使者として一緒に行動しているとはいえ、他国民で敵か味方かわからない2人には自分の正体を知られたくはないが、アネストの素性は明らかだ。

 アネストには賢人王を探していることも話せる。

 『秘宝の鏡』を使って城と連絡をとれば、いかに慎重なアネストといえども納得してくれるだろう。


 むしろ自分1人だけ捕まりたい。

 そう思ってテオの提案に乗ったのだが。


「おれたち3人で使者だろ! エドをおいて行くなんてできないよ」


「…………」

「…………」


 エドアルトはまじまじとコルを見つめた。

 コルは真剣に、心から言っているように見える。

 『無言の託宣師』サミィも、この真摯なまなざしに心を打たれたのだろう。


 テオも、目が覚めたような顔をして唇を震わせた。


「ム、ムム、ムーサぁん! あぁん、アナタは本当に芸術神ムーサだわ。そう、そうよね。アタシが間違ってたわ。アタシたちは3人で使者よ」


「はい! それに誤解なんだし、絶対わかってもらえますよ!」


 コルとテオは、覚悟を決めた顔をアネストに向けた。


「ようやく観念したようだな」


 3人に近づきながらアネストは笑みを深めた。


「逃げなかったのは賢明な選択だ。もし逃げていたら、森はお前たちの行く手をはばみ、立ち止まるしかなくなったお前たちの背には容赦なくこの矢が刺さっていただろう」


 ぎょっとする3人に、アネストは言葉を続ける。


「なにを驚くことがある。お前たちのような者がいるから、聖なる森がこんなことになったんだぞ。不法侵入者が多すぎるせいで、こんな場所にも森の民の力が働くようになって、せっかくの美しい森が台無しだ」


 エドアルトはようやく聖なる森に連なる場所が荒れていた理由を知った。


「森の民が結界魔法を強めていたのか」


「そうだ。森の民の結界は森の民に害を持つ者をはじくらしい。俺は、お前たちが幾度も道を迂回するのを、木々の向こう側からずっと見ていた。本来なら、密猟者はここまで入れないはずなんだがな……。さぁ、いい加減、鳥を離せ」


 エドアルトが腕の力をゆるめると、よたよたと白い鳥が飛び出していった。 


「良かった。あれなら自力で仲間の元に戻れるだろう」


 ほっとした3人を後手に縛りあげるアネストに、テオが声を上げた。


「ねぇ、アタシたち吟遊詩人は、森の民の里は夢のように美しいと歌うのよ。できればひと目見たいとは思っているけれど、それさえもダメだってことなの?」


「さぁ。森の民の考えることは森の民にしかわからないからな。なにが森の民にとって害なのかは俺にはわからん。さ、おしゃべりはこれでおしまいだ。続きは牢獄で聞こう」


 しばられた腕を引かれ、思わず痛めた足を踏み出してしまい、エドアルトは顔をしかめた。


「っ!」


「すみません。エドは足をケガしているんです。支えてもらってもいいですか?」


 途端にアネストは呆れ顔になった。


「語るに落ちるとはこのことだ。森から傷を与えられたということは、我らにとって敵だということ。そんな者がなにを語ろうと信じるに値しない」


「そんな……」


「まぁここで立ち往生するわけにもいかないからな。肩くらいは貸そう」


 無理すれば歩けないこともなかったが、今は意地をはって傷を深めている場合じゃない、とエドアルトは素直にアネストに支えてもらった。


「ありがとうございます。……助かったよ、コル」


 小声でお礼を伝えたエドアルトに、コルはあいまいな笑顔を返した。


 アネストに寄りかかって歩きながら、エドアルトは考えていた。


 俺たちのなにが森の民の気にさわるんだ?


 森の民が結界を強めているのは、密猟者のこともあるだろうが、シャラール王国からの侵入者を防ぐためでもあるはずだ。

 アブルム王国は森の民と友好関係にある。

 王族たる自分が森の民から敵だと認識されるなどありえない。

 使者としての行動も、敵視されるいわれがない。


 そうなると問題は、コルかテオになる。


 テオがさきほど話した森の民への気持ちは、誰しもが持つ、未知へのあこがれのようなものだ。

 そんなことで森の民が敵だと判断するとは思えない。

 

 テオが裏で違うことを考えている可能性はあるが、さきほど話していた家族の話から、テオの身元が確定できたのて、テオが邪な存在である可能性はほぼゼロだ。


 もっと具体的で、森の民から敵だと見なされる『なにか』があるはずだ。


 その『なにか』は、コルが関係している可能性が高い。

 エドアルトの負傷は人間が仕掛けた罠で負ったもので、森から攻撃されたわけじゃない。

 森から執拗に攻撃を受けていたのはコルただ1人だけなのだ。


 露出の多かった装備も理由のひとつかもしれないが、防ぎにくい下草はともかく、先にテオが枝を払いながら進んでいたにも関わらず、その後に続くコルの腕に傷ができるのは、冷静になって考えるとおかしい。


 エドアルトはコルの行動を思い返してみた。

 使者になりに他国民なのに城へ来てくれたコル、テオに誘われても使者だからと断ったコル。

 タージルにも、サミィにも、食い下がったコル。

 今さっきだってそうだ。

 いつだってコルは、懸命に使者であろうとしてくれている。


 コルのことを信じたいのに――。


 コルが白い鳥を見つけたときの怪しい発言もあって、エドアルトはどうしても心の底からコルを信じ切れないでいた。


 俺たちの誰よりも使者として頑張っているコルが、なにかを隠している。

 言えない理由はなんだ?


 すぐにでも聞きたいが、今は状況的にまずいし答えられないだろう。 

 エドアルトは機会を待つことにした。

 


 アネストに連れられるまま森の奥へと進むにつれて、道はだんだんと開けてきた。

 木漏れ日がさして鳥の声が響く。まさに美しく清らかな『聖なる森』の容貌だ。


「もうすぐ着くぞ」


 美しい緑の中に、ひっそりとたたずむ石造りの建物が見えてきた。


「もしかして、あれは古代遺跡じゃない? こんなにキレイに残っているのは珍しいわ」


「テオさん、あれが牢獄ですよ。遺跡をそのまま使ってるんです」


「あら。こんな牢獄なら大歓迎よ。外も中もじっくり……って、あらあら? 感動のあまりか古代人の姿さえ見えるような?」


「テオさん、おれにも見えます」


 テオとコルは二人して見間違いなのかとまばたきを繰り返している。

 手を動かすことができれば、頬をつねる勢いだ。


 遺跡の前に、長く丈夫そうな杖に立派な白い鳥を乗せた、不思議な衣をまとった少年が立っていた。

 どの国の服とも違う独特の衣は神秘的で、少年は神官のようにも見える。


 そんな少年に驚いた様子もなく、アネストは声をかけた。


「フィント、どうしてこんな所にいる?」


「兄さん。その人たちを兵営に連れて行ってください。恩人だと話しています」


 静かに告げた少年は、杖にとまる白い鳥に目をやった。

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