とっておきの石:お題『石』

 魔女の雑貨店の棚一面に宝石が並んでいる。

 その石は後天的に魔力を宿した魔石と呼ばれる類の物で、豊富な品揃えはそれを使った装飾品の人気の高さ故だろう。

「とっておきの魔石、見せてあげよっか?」

 そう言った魔女が懐から取り出したのは、何の変哲もない、その辺に転がっている小石で。

「そんなんが?」

「失礼ね。小さな頃に幼馴染みがくれた特別製よ。持ち主を守る効果があるのよ」

 最高に頭が痛くなった。

 幼い魔力を流し込んだだけの拙い魔石など、その一瞬限りの物である。もはやただの石ころだ。

「えっ、ちょっと、どこ行くのよ?」

 そんなものを後生大事にされてはたまったものではない。今度こそ、ちゃんとした魔石を贈ってやる。

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