幼馴染みの手癖:お題『手』

 有名な学者の講義に参加する幼馴染みに同行したが、難しすぎて内容がまったく理解できなかった。話を右から左へ聞き流していると、ふと、視界の隅で何かが動いているのが見えた。

 くるり、くるり。

 至極真面目な顔で講義を聞いている幼馴染みが、無意識でペン回しをしている。

 くるり、くるり。くるり。

 幼馴染みは昔から、机上で手持ち無沙汰になると持っている筆記具を回す癖がある。早くも遅くもない一定間隔の回転から察するに、今回の講義に耳新しさはないらしくどうやら既知の内容らしい。

 くるり、くるり。くるり。くるり。

 幼馴染みの思考と筆記具の回転具合が連動しているみたいで、その癖を見ている方が楽しいと思ったことは内緒だ。

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