第101話 (百瀬零斗視点)


 見上げずとも、視界に広く映る


 星の代わりに輝き辺りを照らす、電球とLEDが生み出す幻想的な風景


 聖夜を彩り、多くの家族や恋人、そして友人たちを楽しませている


「綺麗だ。」


「そうですね、、、」


 このときだけは、さくらも冗談に走らずイルミネーションに見入っていた


 俺たちだけでない、沢山の人が見惚れている


 そんな都合良く席が空いていることなどなく、立ちながらの見物となってしまったが、、、手を繋ぎながら歩く時間が延び、少し嬉しがっていたことは心の内に留めておこう


 周囲は寒くなっているのに、触れているさくらの手が温かい


 その熱が彼女はそこに居るのだということを感じさせてくるので、らしくもなくドキドキしていた




「それで、、、その、そろそろ行きますか? 空いてればですけど。」


「ッ!」


 まさか彼女から言い出してくるとは思わなかった


 提案したのは俺だが、さくらが積極的になっている現状が予想外だったので、、、


「あ、あぁ。 じゃあ、、、」


 手を軽く引き、先程調べた候補地へと足を運ぶ


 運んだは良いものの、、、その一歩がなかなか進まない


「あはは、、、私も先輩も初めてですから、緊張してますね。」


「わざわざ口に出さんでよろしい。」


 でも、その言葉で気が紛れたおかげか入ることが出来た


 すると今度は運良く一部屋だけ空いていて、『休憩』のために渡された鍵の部屋へと移動する


 エレベーターで上に移動している最中、さくらが話しかけてきた


「、、、先輩って、ヘタれてビビってる割に行動が誤ってたりしてないですよね。 もしかして事前に調べてたりしてました?」


「バレたか。」


 実はデートに行く前、念の為の情報収集としてネットで色々と調べていた


 誤った情報に惑わされないよう、信頼を持てる多くのサイトで


 その行動が功を奏し、もたつきながらも正しく行動出来た


「傍から見れば、私達って、これからヤるカップルに見えるのでしょうね。 、、、なんだか不思議です。 今までは口だけで誘惑してましたけど、いざ実践となると、心がふわふわしてて。」


「俺もだよ。」


 そんな話をしているうちに、部屋に着いた


 ドアを開け、中に入り、息を吐く


「、、、」


「、、、」


 ベッドに座った俺たちは静かだった


 空気に耐えられず、俺は立ち上がり言った


「その、俺が先に洗ってくる。」


 足早にシャワールームへ向かい、身体を清め、用意されていたバスローブに袖を通した


 俺が退室すると同時に、さくらが駆け込み擦れ違う


 その顔は俯いていて、よく見えなかった




 、、、一人でベッドに座り、その時を待つ


 このまま行けば、俺たちは今日、一線を越える


 彼女が予てから望んでいたことだ、、、恐れることは何もない


 なのに何だこの緊張は!


 洗ったばかりの身体に、薄く汗が流れる


 体を触れ合ったとしても、全く感じない程度の微量な汗


 それが今の自分の心境を語っているようで、、、


「あの、お待たせしました。」


 声をかけられ、顔を上げる


「、、、あまり見ないでください。 恥ずかしいです。」


 返事は出なかった、、、いや、出せなかった


 さくらのバスローブ姿というものが新鮮で、大胆で、扇情的で、、、情欲を掻き回される




 互いに背を向け、少しの時間で覚悟を決めた


 示し合わせたわけでもないのに、同時に振り向いた


「、、、良いんだな?」


 恥ずかしくて多くは語れない


 だから目で伝える


「今更ですよ。 誰がこの時を待ち望んでいたと思ってるんですか?」


 彼女は視線だけでなく、笑顔で応えてくれた


「再会して、付き合い始めて、ようやっと先輩と繋がれるのです。 とうの昔に覚悟は決まってますから♡」


 、、、年下の彼女の方が覚悟しているというのに、俺がヘタれるわけにはいかないな


 さくらの左肩を軽く押し、倒れた彼女に覆いかぶさる 


 至近距離で交わした視線


 さくらの目には恐怖ではなく、歓喜と期待が込められていた


 、、、どんだけだよ



「なるべく、痛くならないようにするから。」


「、、、はい♡」




 俺とさくらは、甘い蜜夜を過ごした



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