第98話 (十束さくら視点)


「お久しぶりですね、百瀬くん。 最後にあったのが中学二年生の頃でしたから、、、三年ね。」


「、、、なんで四ノ宮、お前がここにいるんだよ。」


「変な想像をしないでね? ここにいるのは偶然ですよ。 友達と遊びに行く途中なの。 一人ぼっちだった君と違ってね?」


「どの口で言いやがる!」


「お、落ちついてください先輩!」


 怒りを顕にし、今にも飛びかかりそうな様子の先輩を引き止める


 目の前の女性が誰かは知らないけれども、あの先輩が逆上するほどの女性だ


 何か事情があるに違いない



 先輩が深呼吸したことを確かめ、尋ねる


「あの女性は誰なんですか?」


「、、、四ノ宮沙奈子。四番目に、俺に嘘告してきた女だよ。」


 言われて驚愕する


 まさかここで、先輩が中学時代に嘘の告白をされた女子に会うとは思ってもいなかった


 それに四番目ということは、私が先輩に図書室で初めて会う前の出来事


 私がどうしようもない時期に行われた嘘の告白


 そのことに憤りを覚えるが、今はそんな場合じゃない


「それのみで先輩がそこまで憎むとは思えません、、、一体他に何があったんですか?」


「別に? 彼が私を襲ったってデマを流しただけ。」


 先輩が口を開きかけたところを四ノ宮さんが邪魔をする


 、、、先輩が襲ったってデマ?


 は?


 何を、、、していたんですかこの女は?


「せ、先輩が実際に襲ったわけじゃないんですよね?」


「んなことするわけないだろうが。 そもそも俺のヘタレ具合は知ってただろ。」


「ですね。 先輩がそんな大胆過ぎることをするわけないですもん。」


「馬鹿にしてんのか?」


「馬鹿にはしてませんよ。 ヘタレだなぁとは思ってますけど。」


「馬鹿にしてんじゃねぇか。」


 いつも通りのやり取りをしていると、こちらをじっと見ていた四ノ宮さんが睨めつけるような視線を投げつけてきた


「、、、あなたが百瀬くんのカノジョ?」


「そうですけど。」


「ふ〜ん、、、つまらない。」


「っ⁉ な、なんなんですかさっきから! いきなり現れたと思ったら散々に言ってきて!」


 つい言い返してしまった


 良くない対応と分かってはいても、突然につまらないと言われてムカつかない人間はいない


 そんな私をまだ見下すような目で見てくる四ノ宮沙奈子


「だって、、、百瀬くんって不幸な方が似合ってるんだもの。 カノジョと幸せそうにしているなんて面白くない。」


「「は?」」


 少しだけ恍惚とした表情で彼女はそう言った


 、、、意味が理解できない


「あなたが百瀬くんの大切な人だとしたら、その人が貶される様子を見ることで百瀬くんは傷つくじゃない? 彼がカノジョを作って幸せそうにしているのは悲しいけれど、それはそれでまた違った壊し方だ出来るのよ。」


「えっと、、、」


 説明されてもいまいち分からない


 呆然とする私達を置いて、彼女は話し続けた


「百瀬くんをカノジョと別れさせようと最初は思ってたんだけど、気が変わったわ。 また別の形で苦しめてあげる。」


 流石に我慢できず、先輩の耳元に口を近づけて、ボソッと話す


「先輩は、この人の考えを知っていたんですか?」


「いや、俺も初耳だよ。 こんな阿呆なことを考えて俺のデマを流してたとは、、、」


 先輩も半分呆れている、、、もしかして四ノ宮さんってサイコ?


 確かによく分からない理由で先輩に嘘告した彼女だけれども、実際にやったこととこれからやろうとしていることは害悪過ぎる


 私だけならまだしも、先輩の悪いデマなど再び流されては恐ろしい


 い、一体どうすれば、、、



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