第97話 (百瀬零斗視点)
俺は文化祭の時、人気の占い師に不幸を予言された
だがあくまで占いであるし、常日頃から警戒しなければならないのは疲れる
的確な予言ではなかったので、バーナム効果も疑わしい
、、、だが、占いが当たるという噂は、本当だったことを俺は知ることになる
、、、未だに顔が火照っている
さくらから散々にイジられた後、なんとかメンタルを保っていたご褒美として、俺は彼女が最近見つけたと言う雑貨屋に連れて行かれた
ご褒美と言うには大袈裟だと思うかもしれないが、あの状況で気絶しなかった俺を褒めて欲しい
彼女もかなりの勇気を出しての行動であり、相応に恥ずかしがっていたようだが、、、ヤバい
アイツの下着姿でさえ、とてつもない色香を放っていた
自覚するほどのヘタレである俺にとっては、もはや毒となりうる程の威力だったが、なんとか耐えた、、、その後のイジりで退散したのはノーカンで
というか恋人は下着を購入する際に彼氏を店に連れていいのか?
運が良いのか悪いのか、偶然店員の目につかなかったので判断出来ない
カノジョは基準とならないし、九重たちに訊くのも憚られる話題だし、、、
さて、そのようなことを考えていると目的の雑貨屋に到着したようだ
年季を感じさせる古めかしい雰囲気となっているが、明るい電球に照らされ不気味には感じない
店内に足を踏み入れると、、、木製家具独特の香りと言えば良いのだろうか?
とにかく心地よい香りが漂っていた
「お洒落だな。」
つい言葉に出していた
それを耳に入れたさくらはニッコリと笑顔になる
「友達に教えてもらったんです。 お手頃な価格で素晴らしい雑貨を購入できるので、学生のプレゼントに最適だと。」
「ふ〜ん、、、お、このマグカップとか良いな。」
俺が手に取ったのは小洒落たカップ
隣にペアとなったカップが数種類置いてあるので、恋人にも人気がありそうだなと思った
「マグカップですか。 最近は寒くなってきましたから、ホットミルクを飲むことが多くなったんですよね〜」
そんな指を口元に運んで上目遣いにチラチラ見てきて、、、わかり易すぎる、というか寧ろあざとい
まぁ惚れた弱みで話に乗ってやるのも悪くない
「、、、はいはい。 じゃ、どれが良い?」
「それでは、このドギツいピンクとハートn」
「よりにもよってそれをチョイスするか⁉」
「あ、会計には先輩が持っていってくださいね。」
「軽く拷問。」
「えぇ〜買いましょうよ〜」
そう言って、見るのも恥ずかしいぐらいの物体を俺に押し付けてくる
それぐらいなら、まだ誤って落としてしまうことに注意するだけで済むのだが、、、めっちゃ押し付けてくる
何が、とはやっぱり言わないが
さっきの下着の件で変に勇気付いてしまったのか、いつもよりも大胆に感じる
コイツに限って無自覚なんてことは稀だし、九割故意だろう
さて、どう反応するのが正しいのか、、、と悩んでいると、顔を下に向けたさくらがふるふると震えていることに気付く
これ、どっかで見た光景だなぁ、、、
「おい、さっきまでのやり取り全て冗談だろ。」
「ぶふっ! いえいえ、マグカップが欲しいと思ったのは本当ですよ?」
「笑いながら言われてもなぁ、、、」
「本音ですから。 それに、、、将来的にも、あのようなカップを恥ずかしげなく購入できるような夫婦になりたいですし。」
それは要相談だが?
いや夫婦の部分じゃなくて、あの物体を購入するという点が
確かにアイツとより親密な関係になることは望ましいが、アレはちょっと、、、ね?
「、、、めっちゃ嫌そうな顔してますね。」
「流石のお前も冗談だろ? あんなのバカップルしか買わないって。」
「では私達もバカップルになりますか。」
「それくらい愛し合うってことだよな? な?」
結局の所、マグカップは一旦置いておいて他に色々と見て回ることにした
木製のドアプレートや可愛らしい小物
少し大きめな物だと、昔の棚やラジカセを改造した本棚など
このような店に入る機会は少なかったので、全てが新鮮に映った
彼女との長く慎重な審議の結果、マグカップとお揃いのキーホルダーを購入し、互いにプレゼントすることに
何処か残念そうな顔つきであったさくらだが、二人で決めたプレゼントをいざ渡すと途端に笑顔へ
、、、ほんと、可愛らしい
こう思ってしまう俺は、十分にバカップルなのだろうか?
満足した俺たちは店を出る
「さて、この後は――」
『あら、百瀬くんじゃないですか。 お久しぶりですね。』
「ッ⁉」
忘れることのない声が聞こえてきた
二度と会うことにないだろうと思っていた奴の声が
「今度私自らお出迎えしようと考えていたのですけれど、、、行く手間が省けましたね。 いやはや偶然とはなんとも恐ろしいものです。」
店の前、、、四ノ宮が何故かそこにいた
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