第96話 (十束さくら視点)


「ほら先輩。 こういうの、私に似合うと思いませんか?」


「いきなり女性用下着売り場に引き摺り込んだと思えばそれかよ。」


 先輩は、カーテンを開けて披露した私の下着姿から必死で目を逸らしている


 今までなら逃げていたところだけど、此処に居てくれているのは、夜にする予定について覚悟しているからなのだろうか


 それはそれとして、恥ずかしい姿を見せることに私も少し抵抗感があった


 いや抵抗感と言うと語弊を招いてしまう、、、やっぱり素直に、恥ずかしかったと明かそう


 うん、私は恥ずかしかった


 散々に先輩を誘惑してきた私だけれども、いざ露出が多い姿を見せると頬が熱くなっていた


 、、、これ、夜に勇気を出せるのかな?


 家を出る前に超イジってきたお姉ちゃんには『問題ない!』と強く言ってしまったけれど、恥を忍んで訊いてみるのが良かったのかも


 彼氏持ちの年上の女性であるお姉ちゃんなら、そういうことに対する知識も多少は有しているだろうし、、、何よりも最大の味方、お母さんがいたのに、変な意地を張ってしまって何も訊いていない


 理由は少し異なるけど、雪先輩や希ちゃんにも相談できていない


 雪先輩は、前回の一軒で周りから孤立するという事態は防げたものの、グループから追い出されてしまう形となった


 だがそこは雪先輩


 原因はどうあれ陽キャまでのし上がった彼女の腕を持ってすれば、直ぐに新しい関係を構築することなど容易だ


 現に今日、クリスマスイブは新たな仲間と遊んでいる


 だから最近は忙しくしていたので、夜のことについて尋ねられなかった


 希ちゃんはお正月に家族で帰省するため、それに備えて放課後は忙しそうにしたので訊けれなかった



 とまぁこのように、他者からのアドバイスや激励を貰わずに今日、挑んでいるわけ


「そろそろ服を着たよな? 今回のはガチで心に効くんだが。」


「あ、待ってください。 まだフックが、、、先輩が外してくれませんか?」


「やかましい。 さっさと着替えてくれ。」


 恥ずかしい?


 激励を貰っていない?


 かといって攻めない理由はないのですよ、先輩!


 小さくとも、直前で日和かけていると言えども、しっかりとした覚悟を持って今日のデートに訪れたのだ


 なんならいつも通りに先輩をイジってあげよっと


「先輩、、、今夜はこれ以上を目にするというのに、この体たらくでいいんですか? 情けない先輩ですねぇ♡」


「ぐっ、、、わ、わかったよ、、、」


 ゆっくりと閉じていたまぶたを開けて先輩が目にしたものは、私の下着姿


 先輩は固まった


「あれ? 起きてますか先輩? 生きてますか〜。」


 手を振ってみるが、反応がない


 流石に刺激が強すぎたのかな、、、少しの落胆を覚えたが、途端に先輩は動き出した


「ハッ⁉ ヤバい、ちょっと意識が、、、」


「先輩の今までのヘタレ具合を考えると十分な成果だと思いますよ♡ それで感想とかないんですか?」


 なんとか意識を取り戻した先輩に追撃を加える


 ヘタレの療法としては荒療治だが、これは今夜のためのチャンスと捉えるべき!


 案の定口をつぐんだ先輩であったが、微かに聞こえる程度の声で呟く


「、、、詳しいことは全く知らないけど、、、その、かっ、可愛いんじゃないか?」


「うんうん、よく出来ました!」


 頑張ったご褒美に頭を撫で撫でしてあげます


 身体を近づけ、少しだけ押し付ける


「ちょっ! お前当たってるって!」


「当ててるんですよ♡」


「、、、」


 あらあら


 流石に限界だったのか、黙って出ていっちゃいましたね、、、鼻をハンカチで抑えて


 でも段々と私の肌色に慣れてきてるんじゃないだろうか?



 、、、夜への布石は打った


 後は先輩の覚悟次第


 さて、夜まではちゃんとしたデートをしましょうかね!


 あ、先輩に褒められたし、今着てる下着は買っていこっと












 今回は少しヤバめでしたかね、、、


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る