最終章
第89話 (九重雪視点)
私は百瀬くんを傷つけてしまった
保身のために偽りの告白をし、、、彼が壊れてしまう原因の1つに、私はなってしまったのだ
初めはそのことを深く考えないようにしていた
そうすれば、私には罪がないと、許されるのだと、、、そう思いたかったから
でも一人の後輩のおかげで、私は自分の過ちに向き合うことが出来た
彼女の叱責で彼に会う決意が固められ、彼に自分の気持ちを伝えることが出来た
彼も私を認めて、、、認めて?
ま、まぁとにかく、私なりの贖罪を彼に贈ることが出来ていると思う
でも私はずっと私自身を許せるはずがない
彼の想いを弄んだ過去は、消えないんだ、、、
それはそうとして、後輩の惚気話が凄い
「それで先輩が髪に着けてくれまして! 丁寧に着けている様子がカッコいいのなんの! キュンキュンしちゃったんですよ!」
放課後に捕まってカフェに連れられたと思ったら、さっきからずっとこの調子だ
このカップルは、百瀬くんと私の関係もあって私が一番推している二人なのだけれど、、、彼氏がいない女子にとって惚気話を数十分も話されるのは流石にキツいものがある
「さ、さくら? 分かったからそのくらいにしましょう?」
「まだ話足りないのですが、、、まぁこのくらいにしておきましょうか。」
まだ話足りないのね、、、前々から知っていたことだけど、さくらの愛情深さは『一途』を超えたレベルなのよ
そんな彼女と上手く付き合って行けている百瀬くん、万丈ちゃんは素直に凄いと思う、、、私も大概か
「あ、あそこにいるのは先輩⁉ 会計は済ましているので、それではまた明日!」
そう言い残し、嵐のように去っていった
コップに残っているメロンソーダをストローで吸い上げていると、視界の端に辟易とした様子の百瀬くんが映る
彼の腕に組み付いているのは、先程まで目の前の席に座っていた女の子、すなわち十束さくら
「、、、頑張れ百瀬くん。」
クリスマスを近くに控えたある日の放課後
「それでさ〜彼氏がウザイのなんの。」
「わかるわー男ってガツガツいき過ぎると逆にキモいよね〜」
「あはは」
上2つが私のグループのうちの二人
一番下で曖昧に誤魔化して笑っているのが私
、、、周りにはスクールカースト上位に居座っているように見せかけているけど、実際は周りの言葉を受け流しているだけ
自分とは真逆の意見に逆らわず、適当に誤魔化す話し方を
周りの話題について行けるよう、常に情報を調べる
その他諸々のこと成して、ようやっとグループの一員として存在できるのだ
とても面倒くさいことだけど、グループに所属しているだけで学校で絡まれることは殆ど無くなる
それだけでも十分過ぎるメリットなのだ、、、過去にイジメられていた私が言うのだから、説得力はあると思う
「そういえばさ。他校の可愛い女子と連絡先交換したんだけど、付き合うことになったんだよね〜。」
「凄いね!」
さして面白くない話を、さも面白い話題のように笑う
「可愛いコ?」
「超カワイイんだよね。ほらこれ写真よ。」
「うわ超可愛いじゃん。」
写真を見るに、確かに美人だと思う、、、でも、何か恐ろしさを感じる
笑顔でピースを作っているのだけれど、目の奥が笑っていない、、、そう感じたのは私だけなのだろうか?
「この子がさ、うちの生徒と知り合いだって言うんで話したいって言ってんのよ。 まぁ惚れた弱みですし? いっちょ手伝ってあげよう的な?」
「隆カッコい〜!」
「それで、その知り合いって誰なの?」
「ん〜『モモセ』って男だったっけ?」
、、、え?
「あ、百瀬っていったら最近後輩彼女ができてイキってるって噂のやつでしょー。」
「相手の後輩、俺も狙ってたんだけどなぁ〜。」
「そういえば雪、アンタってそのモモセの彼女と知り合いなんでしょ?」
急に話題を振られドキッとした
しかしそれをおくびにも出さず、普段通りに応える
「うん。 さくらのことだね。」
「なら隆を手伝って上げなさいよ。 友達でしょ?」
「う、う〜ん、、、」
悩む声を出しながら考える時間を作る
、、、今の幸せいっぱいなあの二人の間に面倒事は持ち込みたくない
取り敢えず、、、
「ちなみに隆くんの彼女さんのお名前は?」
「ん? 四ノ宮凛だけど。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます