第88話
文化祭から一週間が経った
あの時の熱気はとっくに過ぎ去り、高3は受験シーズンに入っている
高3生は文化祭を切れ目に委員会活動を後輩へ完全に引き継ぎ、受験勉強真っ只中
さて
忘れている人がいるかもしれないが、今日はさくらの誕生日だ
、、、そう、俺がカッコつけてサプライズしようとしたら事前にバレて、それがきっかけで彼女と軽い喧嘩になってしまった原因の日である
、、、今思い返しても情けない
俺もアイツも互いを手放す気なんか更々無いが、それでも衝突してしまうときがあるだろう
今後もそのようなことがあろうとも、必ず仲直りができるような関係、、、そんな理想的な関係を築いていきたい
そんなことを考えていると、珍しく登校の途中からさくらが合流してきた
いつもなら家の前に待機してるか、もしくは後ろから付き纏っているのだが、、、今日は特別な日だからかな?
「おはようございます先輩。プレゼントをください。」
「早ぇよ。」
こういうのって、もう少し段階を踏んでから渡すもんじゃないのか?
挨拶してからノータイムでプレゼント要求するやつとかこいつくらいなんじゃ、、、
「もうバレてますし、手っ取り早く貰った方がいいと思いまして。それに先輩が選んでくれたプレゼントというのが楽しみすぎるのですよ♪」
、、、嬉しいことを言ってくれるな
そこまで期待されちゃ、ここで渡すしかなくなるだろうが
「はい、これだよ。」
綺麗に包装された小さい箱を渡す
サプライズが失敗した今、少しでも彼女を楽しませるしかないと思い、せめて飾り付けを最高の状態にとお店にもう一度頼んでみた
情けない男の現状を察してくれたのか、心優しい店員さんは二度目の包装を割引してくれた
いやほんとあの時の店員さんには感謝しかないですありがとうございました
、、、話が横道に逸れてしまったが、まぁ包装よりも大事なのは中身
俺が選んだプレゼントが本当に喜んでくれるのかどうかが重要なのだが、、、
さくらは包装を丁寧に丁寧に開け、黒い小箱を取り出した
「このサイズだとリップクリームか髪留めですかね、、、わぉ!」
小箱を開けると、そこには文化祭前に買った黒色の花形の髪飾り
そして二度目の包装のときに追加で購入した、髪飾りを掃除するための小さいブラシがあった
「とっても可愛い髪飾りですね! 桜の花びらをモチーフにしているんですか?」
「あぁ。 お前には桜が似合うと思うし、黒色だから校則に抵触しない安全品だ。」
「なるほど実利にかなってもいる飾りなのですね。 だからこのブラシも付いているというわけですか。」
「、、、アクセサリーって、気合いを入れた日にしか着けないような物が多いだろ? でもこれなら、少し手間はかかるが殆ど毎日着けてもらえるなって思ったんだ。」
基本、装飾品は高価な物で記念日にしか着けない物だ
そういうのも良いが、俺は、、、できるだけ長く身に着けて欲しいと思っている
あと実用的な物は、俺の好みだってのもある
贈り物に私情挟んで何やってんだって誰かに叱られるかもしれないが、これが俺なりに選んだプレゼントだ
さくらは喜んでくれるのかどうか、、、
「ふふっ♡ ありがとうございます♡ ずっと大切に使わせてもらいますね!」
杞憂だった
俺が選んだプレゼントを、コイツが喜ばないはずがなかった
分かっていたことだけれども、、、
「喜んでくれて嬉しいよ。」
「あ、なら先輩が着けてくれますか?」
そういって髪飾りを俺に手渡した
どうやら渡した直後に早速着けたいらしい
、、、彼女からの頼み事だし、断らないけれども
俺はさくらに一歩近づき、さくらの前髪を一房持ち上げる
サラサラと俺の手を流れるそれは手入れが行き届いていて、、、気持ち悪いような表現になってしまうが、触り心地が良かった
一番前にさくらの髪にこうやって触れたのは、、、膝枕を要求されたときだったかな
震えそうな手を押さえるために取り留めのないことを考えながら、彼女の髪に桜の髪飾りを挟む
初めての経験で失敗してしまわないか不安だったが、なんとか上手にできたと思う
「終わったぞ。」
スマホのカメラを逆転させ、どのようになったか彼女に恐る恐る見せる
さくらは目をパチパチと瞬きし、そしてニへッと笑った
「素敵です。 先輩って髪飾りを着けるの上手なんですね、、、もしかして私以外の女に着けた経験が?」
喜んでいたはずなのに、急に怒りのオーラを纏い始めた
早急に誤解を解かねば、、、
「違う。 初めてで怖かったけど、意外と上手く出来てて自分でもびっくりしてるよ。」
「そういうことなら構いませんが、、、しかしやはり可愛いですね、この髪飾り!」
そしてやっぱり笑顔になるさくら
「友達に自慢しちゃおっかなぁ。 『彼氏からの誕プレなんだ』って!」
「それ俺みたいな陰キャが聞いたら激高するから止めとけ。」
幸せな気分でいてくれるのはありがたいが、そのような線引きはしておかなければならない
自分が陰の者だからこそ、話せる言葉だった
「なら控えておきますが、、、にしても、誕プレがこれだけのはずないでしょう? 他にも用意してあるのではないですか?」
コイツ、、、勘が良すぎだろうが
「隠し事はダメか、、、いや隠すつもりもなかったけど。まぁ誕生日ケーキを用意してあるから、放課後俺の家に来てくれ。」
「ケーキも嬉しいのですが、アレやってください! ほら、『プレゼントは、俺』ってやつ!」
「誰があんな恥ずかしいこと出来るかよ⁉」
「そしてそのまま仲良くベッドの中で、、、グヘヘ。」
「とても女性が出したとは思えない声が聞こえたんだが?」
、、、ったくコイツはもう、、、
まぁとにかく、さくらが喜んでくれて良かったよ
そしてその後にも色々あった
九重と万丈もさくらに誕プレを渡して喜んだり、、、
ケーキを渡そうと俺の家に行くと、さくらのご両親と俺の母さんが内緒で動いていたらしく、さくらの誕生日を祝うために準備していたことに二人して驚いたり、、、
母さんと穂積さんが俺の知らぬ間に仲良くなっていたことに謎の疎外感を感じたり、、、
さくらが俺の寝室に押し入り、既成事実を作ろうとしたり、、、
それに気付いた商二さんがギリギリで扉を開け、なんとか自分の身を護ることができたり、、、
とまぁ本当に色々とあったのだが、この話はまた機会があれば話すことにしよう
<GameManより>
はい、長かった第七章が終わりました!
沢山の応援、フォロー、☆をいただき、読者の方々には感謝してもしきれません!
と、ここで皆様に小さなお知らせがございます。
この『嘘告』は章ごとに百瀬と十束の視点を交互に動かす感じで進めていたのですが、次の最終章は物語の構成上、視点がより活発に動き回るのです。
人によっては読みにくいという方がおられるでしょうし、話名の『第◯話』に続いて『(〜視点)』と追記するようにしようと考えています。
私も出来る限り皆様に読みやすいような物語を作れるよう邁進していきますので、変わらぬ応援をどうかよろしくお願いします!
それでは、私の作品を読んで、皆様が少しでも楽しんでいただけますように
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