第81話


「というわけで九重さん、助けてください。」


「というわけで、って、、、百瀬くんは頭良いのに、さくらが関するとポンコツっぽくなるわよね、、、」


「ひどい言いがかりだな、まぁ今回はポンコツと呼ばれてもしょうがない失態だと自分でも思う。 でもな、、、さくらの小さい頃とか興味しかない。 絶対その頃も可愛いと思うだろ? 実際可愛いかったんだがな。」


「はいはい惚気はいいから。 それよりもさくらの誕プレについてだったっけ?」




 時は文化祭数日前の放課後


 文化祭における各生徒の役割も決まり、各々が最高の文化祭を作り上げようと努力している期間


 勿論俺も九重も例外でなく、、、まぁ俺に関しては大したことない役割だったのだが、九重は服飾グループの担当だったので大変そうだ、、、とにかく高2に休める放課後などない時期なのだが、九重に頼み込んでこの時間を作ってもらっている


 何故かと言うと、九重が先程行った通りさくらの誕プレについてだ


 前回、十束家の皆様に参考意見を聞きに行った所、カノジョにこめかみをグリグリされた挙げ句、結局誕プレのことが頭から抜けるとかいう大失態を犯した俺


 この状況を打破すべく、現役JKである九重の意見を取り入れようというわけだ


 そんなわけで現在、いつものカフェで相談しているということである



「と言ってもねぇ、、、あの子なら、本当に百瀬くんのプレゼントなら何でも喜ぶでしょう、ということしか言えないわよ。」


「そこをなんとか! カノジョの誕生日に力を入れない、情けない彼氏だと思われたくないんだ。」


「いやカノジョ以外の女子と、無断で2人でカフェに行ってる時点で十分情けないのだけれど。」


 確かに、さくら以外の女子と彼女に無断で会っている


 傍から見れば十分に浮気現場じゃねぇか


「ぐっ、バレなきゃセーフ、、、じゃないよな、さくらに失礼だ。 全部終わったらまとめて説明するよ。」


「ま、応援してる側としては破局なんてバッドエンドは見たくないし私もサポートするわ。」


「助かる。 それでなんだが、さくらが最近欲しがってた物とか、興味を持ちそうな物とか知らないか?」


「そこを普段からの会話で知るのが彼氏の役割じゃなくて?」


「なんかさっきから辛辣だな。」


 応援するとか、プラスのことを言ってくれる時もあったけど


「気のせいよ。 で、さくらのことについてね。」


 九重は腕を組み、少しの間思案した


 組んでいた腕を解き、ゲン◯ウポーズをする九重


「、、、思ったのだけれど、別に形に残る物にしなきゃいけないとかいう決まりはないし、贈り物という型に囚われすぎてるんじゃない?」


「ッ!」


「実際の所、さくらは誕生日パーティーという形であなたにプレゼントしたわけだし。」


「な、なるほど、、、そうだよな。 確かに。」


 盲点だった


 彼女がパーティーという記憶に残るものを贈ってくれたのだし、、、プレゼントは物で贈らなきゃいけないという勝手な固定観念に囚われてしまっていた


 贈り物以外、、、確かに良い考え方だと思うが、1つ問題が発生する


「でもさ、これで選択肢が無限に広がっちゃったんだけど。」


「、、、」


「おい九重、顔をそらすな。」


 明後日の方向を見んな


「い、一応具体例を1つは考えたのよ?」


「お、なんだ? 言ってみてくれ。」


「、、、あの子に熱い夜をプレゼント。」


「却下で。 というか何故それが思い浮かぶ⁉」


「しょ、しょうがないじゃない! だってあの子と話す度に『先輩がヘタれて〜』とか、『先輩が手を出してくれないんです〜』とか言ってくるのだもの!」


「え、お前に話す程悩んでることだったの?」


 冗談4割でからかってきてたと思ってたんだけど


「いえ、惚気半分で話してきたし、そこまで悩んでることじゃないと思うけど。」


「なら別のでいいだろ。 というかマジでドツボにハマってきてるような気が、、、」


 1つ案を思い付く度に、理性がその案の欠点を挙げる


 ちょっとしたことでも欠点が見つかってしまうので、案が幾つ思い浮かべても全て脳内で却下されている状態だ


 その葛藤に終止符を打つべく、九重が口を開けた


「ん、普通にケーキとアクセサリーでいいんじゃない? シンプルだけど、十分に楽しんでくれるわよ。」


「ま、そうなるよな、、、それが1番か。 それじゃ、ケーキとアクセサリーを贈ることにするよ。」


 と、いうわけで、さくらに贈るのはケーキとアクセサリーに決めた



「相談に乗ってくれてありがとうな。 俺だけじゃずっと悩んだままだっただろうから。」


「推しのために活動するのは当然よ。」


「ヲタクみてーなこと言ってんな、、、」




 ここでふと、思ったことがある


 姿勢を正し、真面目な空気で九重に話しかける


「なぁ、もう嘘告のことは気にしてないのか?」


「ッ⁉」


「いや、不躾な質問だって分かってる。 でもいまいちお前の今のスタンスが分からないんだよ。」


 今回の相談も、嘘告に対する贖罪の上に成り立っているのか、それとも本当に友達として乗ってくれているのか、、、


 酷い質問でもなんとか答えようと、九重は必死で言葉をまとめている


「その、えっと、、、心の中では償いの感情が残ってる。 あなたを傷つけた過去は消せないから。」


「、、、」


「それでも、あなた達を応援したいっていうこの気持ちは本物よ。 嘘の告白をしてしまった最低な私に、あなたは友達という優しい関係を望んでくれた、、、」


「、、、」


「だから確かに贖罪は含まれてるけど、それよりも感謝の気持ちの方が大きい、っていう感じかしらね。」


「複雑だな。」


 思えば、九重との仲も地味に歪んでるんだよ


 嘘告した側とされた側が仲良くしている、、、普通はありえないことだ


 つまり俺たちの関係は普通じゃないってことなんだが、これは良い意味でだ


「それでも、百瀬くんと友達になれて嬉しく思ってる。」


「俺もそうだよ。 改めて言うのもなんだが、、、よろしく頼む。」


「こちらこそ、友達としてよろしくお願いします♪」




 、、、俺はこの時、背後からの視線に気が付くべきだったんだ

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