第78話
「、、、恥ずい。」
彼女の家族の前で厨二臭い発言をやらかした、、、それがきっかけで十束家に認められることになったのだが、その
あの後、どことない恥ずかしさから黙ってしまった
だから『先輩とふたりきりで話したいことがあります!』と敢えて空気をぶち壊す言葉と共に、俺の手を引いて部屋へと連れて行ったさくらにとても感謝している
雰囲気に従わない発言であろうと、人を気遣うことが出来る人は優しい
話は変わって、あの場から逃げられた安堵によって愚痴というか羞恥というか、そういうものを彼女に吐露してしまっているこの状況
ごちゃまぜの感情を整えてくれるように、さくらが慰めの言葉をかける
「まぁまぁ落ち着いてください。 先輩が本音を話してくれて、私達も嬉しかったのですよ?」
「、、、ホントか?」
「はい。守るべき秘密もありますが、抱えていることが原因で傷つくような秘密は共有すべきです。 先輩の場合は後者ですね、、、私は先輩が好きなので、ちょっとしたことでも相談してくださると嬉しいのですよ。」
、、、いつもは小悪魔にイジってくるのに、こういう時だけ優しくしてくれる
「お前が怖い。」
「急に⁉ 私、何か気に障るようなこと言っちゃいました⁉」
「、、、さくらが俺を甘やかしてくるから。 お前がいないと駄目になりそうだから。」
思えば、再会してから目の前のコイツに、常に心動かされてきた
からかわれて揺らされることもあれど、コイツの優しさや好意、そして甘やかしは俺の心を支えてくれていた
さくらが隣にいないと生きれない、、、誇張しすぎかもしれないが、それ程までに彼女の好意に救われてきたのだ
なのに、俺は彼女に何か返すことが出来ているのか?
彼女の向けてくれる好意に足る何かを、贈ることが出来ているのか?
「なぁんだ、そんなことですか。 存分に甘えても構いませんよ?」
いつもの小悪魔スマイルで、甘えてもよいと言ってくれる、が
「それじゃあ、ダメなんだよ、、、なぁさくら。」
「はい?」
「何かしてほしいことはあるか? 何でもしてやる。」
何を言ってるのか自分でも分からない、、、でも訊かずにはいられなかった
案の定、困惑した表情を見せるさくら
「む、今度も急にですね、、、ならお言葉に甘えて。」
だがどうやら、さくらからも甘えてくれるようだ
どんな難題が来ようとも、甘えっぱなしのこの状況を打開するために何でもしよう
それがたとえ、キスのそのまた向こうの行為だとしても、、、
「膝枕、してもらってもいいですか?」
「無欲だなオイ、、、いや普通か。」
コイツのことだから、てっきり行為を要求してくると思ったのだが
「無欲とはなんですか。 私はいつもこんな感じですよ?」
「どの口が言ってんだ。」
「この口です♡」
『チュッ♡』
さくらは身を乗り出し、俺の頬にキスをした
唇を奪われたときはドキドキというよりも驚きが真っ先にやって来たが、頬にやられると音が耳により近くから聴こえてくるので、ドキドキの方が強く速く、心に襲いかかってくる
「、、、何処で覚えた、こんなコト。」
「最近、スマホで少女漫画を読むことが多くてですね。 色んな知識が入ってくるというわけです。」
「レベルが上ってきてるよな。」
「それならば重畳です。 もっとも〜っと、先輩をドキドキさせてあげますから、退屈なんかさせませんよ♡」
、、、やっぱ小悪魔だよ、彼女は
「それよりも先輩、色々と悩んでいたようですが、落ち着いたのではないですか?」
「ッ! 確かに、、、なんかスッキリした気がする。」
原因は知ってる
先程のさくらのキスだ
キスの衝撃とその後のやり取りに頭を取られていたので、それまでウジウジと考えていた物事が飛んでいったのだ
「ありがとな。」
結果的に、またさくらに救われてしまった
もしや、このことを狙って頬にキスしたのではないか?
「いえいえ、先輩が元気を出してくださったのならば幸いです。 そ・れ・よ・り・も♡ 膝枕、忘れてませんよね♡」
「ん、お安い御用だ。」
思い出したかのようにお願い事を注文するさくら
期待に応えるため、この前さくらがやってくれたのを見様見真似でしてみる
ベッドに腰掛け、膝の上を整えた途端にさくらが腿の上に侵入してきた
遠慮が感じられないその所作に感服すべきというか、呆れるというか、、、まぁ今は置いといて、彼女の頭を優しく、優しく撫でる
ニへ〜とだらしなくも、だが心を存分に許した様子で頬を緩めた
「えへへ。 先輩の太ももが温かくて、撫でてくれている手も優しくて、、、膝枕してくれて幸せですぅ。」
「そうか。 最近運動をし始めてるから、腿に多少筋肉がついたと思ってたんだが。」
「あ、私のむっちりに比べたら少し硬めかもしれません。 でもそれを上回る幸福感ですよぉ。」
「、、、満足してくれたようで何よりだよ。」
イタズラとばかりに頬をぷにっと軽くつついてみる
爪が刺さらなように指の腹で押すと、すべすべとした触感ともちっとした弾力が感じられ、頬は俺の指を押し返した
、、、面白いというか、、、凄い気持ちいい
怒られるのを覚悟で、続いて2、3回つついてみる
再びもちっとした弾力を確かめると、彼女が肌の手入れに力を入れていることに気付き、大変だなぁと努力を素直に称賛した
頬のぷにぷにに気付いたさくらは顔を赤く染めながら、こちらを見上げて恥ずかしそうに提案する
「、、、気に入ったのなら、もう少しぷにぷにしててもいいんですよ?」
「いや、今は、これだけで十分だよ。」
これ以上さくらの可愛い姿を見ていると、心臓が耐えられなくなりそうだ
優しく撫で続けながら、2人の間には穏やかで静かな時間が過ぎていく
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