第76話
「、、、」
「、、、」
、、、気まずい
穂積さんだけが相手なら、こんなにも静かになることは無かっただろう
だが実際、俺の相手をしているのはさくらのお父様、十束
さくらと奈津橘さんのお父様、穂積さんの旦那さん、そして、、、さくら曰くかなりの親バカさん、らしい
海外に単身赴任しており、日本へ帰国するのは11月頃と聞いていたのだが、、、現在10月の下旬
何故此処にいらっしゃるのか、、、お仕事が早めに終わったのだろうか?
あ、ちなみに穂積さんは商二さんの隣で座っている
それが唯一の救いと言うべきか、、、
重苦しい雰囲気にお父様も耐えられなかったのか、口を開く
「その、さくらはどうしたんだい?」
「アイツなら今頃ベッドで寝ていると思います。」
「何、ベッドだと⁉ 君たちはもう行くとこまで行ってしまっているというのか‼ 既にイタしているのかね⁉」
バン!と机を叩き、こちらへ体を乗り出す商二さん
マズいな、誤解を招く言い方をしてしまった
早く訂正しなければ、初対面で『娘さんとイタしてます』と宣言するヤベェ奴という印象になってしまう
人は初印象で六割も定まるという研究結果もあるみたいだし、早急に訂正をば
「いえ、そういったことはまだしていません。 責任をきちんと取れる立場になってからでなければ、娘さんを幸せに出来ませんから。」
「む、むぅ、、、」
乗り出していた体を元に戻し、姿勢を正してお茶を一口飲まれた
無事に落ち着いていただけたようで、こちらも一安心というもの、、、というか穂積さんもさっきからニコニコしてるだけじゃなくてフォローしていただけませんかね?
バレないように目線で救助要請すると、理解していただけたのか、首を軽く縦に揺らし、口を開く
「それじゃあ、私はさくらを起こしてくるから。 後は男同士、仲良くね?」
あれ、穂積さん?
何故この雰囲気でお父様とふたりきりにさせるのですか?
慌てて目を合わせると、ニコニコがいつの間にかニマニマに変わっていた
してやったり顔が、さくらの笑顔と重なる、、、やはり親子なのだと思いましたね、はい
そして穂積さんは既にこの場に居ない、、、残ったのは、娘への愛情が深い父親と、その娘の彼氏のみとなった
そして両者とも話すタイミングが見つからない、、、いや割と詰んでる状況だよ
だがその雰囲気に終わりを告げるかのように、商二さんが小さい声で話し始めた
「、、、仕事が早めに終わってね。 娘の顔を早く見たくて帰国したんだ。」
「そ、そうなんですね。 予定の11月頃にお会いできるかと思っていたのですが、こうして会うことが出来て嬉しく思います。」
「私は複雑だよ。 娘に早く会おうと帰ってきたら、さくらに彼氏が出来ているという話じゃないか。」
やべ、墓穴掘ったか?
「い、いえ、、、僕も驚いています。 さくらから商二さんが帰ってこられたという話は全く聞いていませんでしたから。」
「どうも、穂積からの連絡を聞かずに急いで君の元へ朝向かったらしい。」
「あ〜、、、そういうことですか。」
アイツには、次から穂積さんの話はしっかり聞くように説教しとこう
責任転嫁するわけじゃないが、さくらが商二さんについての話を聞いていれば、あらかじめ心構えも出来たというもの
穂積さんに詳しく聞こうとしなかった俺にも責任はあるが、間接的にさくらがこの重い空気を作り出したようなものである
そして当の本人はベッドでゴロゴロしているというね、、、いや〜もうなんか腹立ってきたな
後で覚えとけよ、、、
「、、、別に、君を拒絶しようという気は無いんだ。」
え、そうだったの?
てっきり定番の『お前みたいなやつに娘はやらん!』を言われると思っていたのだが、、、商二さん曰く、そのような考えではないらしい
「初めて聞いたときは動揺したが、穂積から君の色んな話を聞いてね。 伝聞だけでは完全に敵意を払拭出来なかったが、君と会って話してみて、さくらを預けるに足る人物だと分かったんだ。」
「、、、この短い間で分かるものなのですか?」
「ふふ、人を見る目を鍛えなければ海外で事業など出来ないよ。」
気難しい人だと想像していたが、ちょっとした冗談を言える人だったんだ、、、ここでもさくらの面影を感じる
「それに、、、初めの追求に対するあの言葉が決定打かな。」
あぁ、『責任をきちんと取れる立場になってからでなければ、娘さんを幸せに出来ませんから。』って言ったやつか
、、、冷静に返答しているように見せていたけど、実は内心テンパってたから本気の言葉でしか話せていなかったやつか
「あんな台詞を冷静に言えるのは、本気で娘を大事にしている誠実な者か、相当なペテン師だけだよ。」
「、、、後者に捉えられないように、これからも娘さんに対して誠実であり続けますよ。 僕は、さくらを愛していますから。」
「、、、まったく、娘の父親の前で堂々と惚気るとは。 覚悟は既に決まっているようだね。」
「はい。」
「なら、、、娘を頼むよ。 そしてこれからも私を信じさせてくれ。」
「裏切りなどありえません。 後にも話しますが、娘さんは僕の恩人でもあります。 恩を仇で返すほど、男が廃っちゃいませんよ。」
「、、、君と話すと、不思議と楽しい気分になってくるな。 娘が惚れたのも納得だ。」
「あまり褒めていただくとお恥ずかしいですが、、、ありがとうございます。」
こうして、商二さんと打ち解けることが出来た
初めは大きな壁として捉えていたが、いざ話してみると理知的で、さくらの幸せをしっかりと考えている人だった
取り敢えず、お父様へのご挨拶、、、成功!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます