第75話
「たっだいま〜!」
「失礼します。」
ドアを開け、玄関に入り、廊下を歩いてリビングへ向かう
、、、向かおうとしたのだが、さくらの希望により、先に彼女の部屋で一息つくことにした
部屋に入って座るまで、さくらがずっと笑顔だったので疑問に思っていると、その答えを訊かずとも話してくれた
「先輩も私の家と部屋へ入ることに焦らなくなりましたね。 躊躇いがありません。」
その事か
「まだ数回しか来てないけどな。 意外と慣れるのに早かった。」
「良いことですね。」
「なんでだ?」
「だって、私の実家が馴れ親しみやすい場所になっているのですもの。 結婚の報告の時に慌てなくて済みますからね!」
「先を見据えすぎだろ、、、」
、、、まぁ俺もそうするつもりでいるから、慣れていて困ることは無い
「後は子どもが産まれた時ですかね!」
ッ⁉
「お、お前、、、その年で子どもとか流石に重いぞ! 妄想しすぎだ。」
「、、、先輩は、私との子ども、、、ほしくないんですか?」
「うっ」
普段のからかいの表情は何処へやら、悲しそうな顔をするさくらに言葉が詰まる
どのような返答をすれば良いのか分からず頭の中がぐるぐる混乱していると、視界の端に顔を俯かせてプルプル震えているさくらがいた
もしかして、、、
「ちょっと上向けコラ。」
「ま、待ってください、、、ブフッ! もう少ししたら落ち着くので、、、」
「笑ってるだろ。 重めな質問をされて困った先輩を見て面白がってるだろ。」
「まさかそんなことあるわけ無いじゃないですか!」
「ならその満面の笑みは一体なんだ?」
コイツ、、、真剣に悩んだ俺が馬鹿みたいだ
だが笑いが収まったさくらは一転、俺の目を見て真面目な表情に移る
「先程は少しからかいすぎちゃいましたけど、私は本気で先輩との将来についてを考えてます。 今度は真面目です、、、私との子ども、ほしいですか?」
この問いは、さくらからの意思確認だ
己との結婚を、そしてその先までも考えているのか、確認するための
「、、、ほしいよ。」
仮にこれが2回目のからかいであったとしても、真面目に答える以外に選択肢は、俺には無かった
それ程までにさくらを愛しているし、何よりコイツに救われた
嘘告されまくって他人からの好意を信じられなかった俺
そんな俺にしつこく付き纏い、何度も好意を伝えてくれた
人の好意を信じさせてくれた
そんな相手と付き合うことが出来て、その先を望まないほど俺は無欲じゃないよ
、、、それが実行できないヘタレであるかどうかは別として
俺の答えを聞き、彼女はニンマリと笑みを浮かべた
「遂に先輩の口から覚悟を引き出せました! これで、私からは一生逃れることは出来ませんよ?」
「ハナから逃げる気なんか無いわ。 寧ろお前が逃げられないようにしてやる。」
反撃とばかりに、少し語気を強めて言ってみる
さくらは俺から逃げられないのだと、離してなんかやらないのだと
すると目を点にするさくら
「ッ! 先輩の肉食発言、、、これはレアですね。」
嬉しさか恥ずかしさか、クッションを抱く力が強められたので変形している
「やっぱ今のナシで。」
改めて確認されると超恥ずいんだが?
「ダメです頭に刻みつけちゃいましたから! それに、、、カッコよくてドキドキしました。 食べられちゃう前のウサギさんって、こんな気持ちなんだなって、、、」
「何言ってんだ?」
「さぁ? 私も何を言っているのかさっぱり分かりません。 私には、、、分かりませんよ。 それでも、感じる心を止めてしまってはダメなんです!」
「急にネタに走ったな。 というかそのネタ知ってるのって割と少数しかいないと思うんだが、、、いやマジでなんで知ってんだよ。」
「小さい頃に、アニメやゲームをお父さんがしているところを隣で見ていましたから。」
「なるほど。」
いやなるほどじゃねぇわ
「休憩もこれくらいにして、そろそろ穂積さんにお礼を言いに行かなきゃな。 この菓子折りも渡さなきゃだし。」
「え、その菓子折り何処から出したんですか。 ニュッと現れたような気がしたんですけど?」
「気のせいだ。 というかお前も勿論来てくれるよな? 穂積さんと2人は未だに気まずさがあるんだが。」
まぁ陰キャな俺が一方的に感じてるだけだが
「先輩はもう私の家に馴れているので、1人でも大丈夫かと。」
「、、、それはベッドから起き上がりたくない言い訳じゃないよな?」
「違います。 これは先輩への信頼です!」
「なら枕のベスポジを探そうとしてんのを止めてから言え。」
枕に顔を埋めながら信頼について話されても説得力無いわ
「ったく分かったよ。 じゃあ1人で行く。」
「御武運を。」
「戦いじゃないけどな?」
だらける彼女にツッコミを入れた後、リビングへ向かった
まぁケーキの感謝を述べ、菓子折りを渡してから雑談する程度だろう
さくらの言う通り、1人でも大丈夫そうだし、気を張りすぎてたな、、、
「君がさくらの彼氏かい? ちょ〜っとオハナシがあるんだが?」
頼むさくら、今すぐ来てくれ
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