第73話
「百瀬くんと希ちゃんが結婚ですって。 はい、これご祝儀よ。」
「ありがと九重。 母さん、記念の金を取ってくれ。」
「の、希ちゃん、、、私の彼氏を寝取ったの⁉ ユルサナイッ‼」
「いや只のボードゲームじゃない、、、」
「面白い展開になってきたわねぇ〜。」
続いて訪れた雪先輩と希ちゃんを交え、全員で料理に舌鼓を打った後、雪先輩が持ってきてくれていたパーティー用のボードゲームで遊ぶことにした
初めにプレイヤーが職業を決め、あらゆるイベントを経て、最後に総資産が多かったプレイヤーの勝利、というものだ
私は美容師、先輩は一流企業の会社員、雪先輩は教師、希ちゃんは研究者となり、ゲームマスターである和恵さん進行のもと、ゲームが始まった
私は見習い美容師から始め、経験を積み重ねた後に自分の店を持つようになり、現在は支店を出すか迷っているところ
先輩は順調に出世していたが、、、ライバル企業の女社長に騙され、会社に多大な損害を追わせた責任でクビにされた後、とある研究所に拾われて下働きとして働いている、、、可哀想に
雪先輩は素直で可愛い生徒たちに囲まれながら教師として働いた後、同僚と結婚して二児の母となった、、、1番幸せな生活を送っているようだ
希ちゃんが研究所で働きながら論文を何度か発表し、その功績が認められて海外の研究機関に所属することとなっている
まるでリアルな人生のようなストーリーだけど、あくまでゲーム、、、でも!
「先輩が私以外の人と結婚するとか許せません! この浮気者ぉ!」
先輩が!
私以外の人と!
結婚!
「落ち着けって。 万丈の言う通り、只のゲームだろ? まぁこの展開は笑ったが。」
「笑うなぁ! 先輩のばかぁ〜!」
「、、、何故かしら、百瀬くんをぽこぽこ叩くさくらが惚気てるようにしか見えないのだけれど。」
「雪さん、安心してください。 私も同じ気持ちです。」
「希ちゃんも大変なのね、、、」
ボードゲームは結果的に幸せに暮らした雪先輩の勝利に終わり、場も温まったところで和恵さんがケーキをテーブルへ運んできた
「そろそろデザートの時間よ〜」
「「「はーい。」」」
片付けを終え、私達はテーブルへと座る
そこには、種類が豊富なフルーツが多く盛り付けられたフルーツケーキがあった
沢山の果物が食欲を唆っている
ケーキの中心でイチゴに立てかけられているチョコレートのプレートには、『零斗、17歳の誕生日おめでとう!』のお祝いの文章が書かれていた
「す、凄い、、、」
「このケーキはねぇ、、、穂積さん、さくらちゃんとの共同製作なのよ。」
「さくらのお母様が⁉ いつの間に仲良くなったんだよ、、、」
先輩は自分が知らないうちに親同士が親睦を深めている事実を知り、がっくりと肩を落としている
これが暗躍した弊害、、、まぁ先輩だから別にいっか♪
「ではでは! 早速ケーキをいただきましょう!」
私はキッチンからケーキ用ナイフを取り出し、均等に切り分ける
でもプレートは勿論先輩のケーキに乗せて、と、、、
それぞれの皿へケーキを乗せた私は、和恵さん、雪先輩、希ちゃんと目線を合わせ互いに頷く
「それでは皆さん、せ〜のっ」
「「「お誕生日、おめでとう!」」」
私達は拍手とともに、先輩へ祝福の言葉を送る
「あ、、、ありがとうッ!」
先輩は万感の表情で感謝を述べた
「それじゃあ、ケーキをいただきましょ?」
デザートを食べ終え、洗い物をしながら窓の外を見ると、秋らしく日暮れが早くなったのを体感する
そろそろ帰らねばならない
「名残惜しいですが、そろそろ帰らないといけない時間ですね。」
「そっか、、、じゃあ見送ってくよ。」
「私は少し手が離せないから、零斗にお願いするわ。」
というわけで、玄関前には先輩、私、雪先輩、希ちゃんの4人が立っていた
「百瀬くん、お誕生日おめでとう、、、私はこんなこと言える立場じゃないけど、、、」
「何言ってんだよ。 友達が祝ってくれるのは当たり前だろ?」
「ッ! 、、、そうね、、、ありがとう。 また今度遊びに行かないかしら?」
「喜んで。」
互いに笑顔を浮かべる2人、、、
「私からも、お誕生日おめでとうございます。 いつも勉強を教えてくださって、とても助かっています。」
「あれぐらい大丈夫だって。 寧ろお前がさくらの相手をいつもしてると思うと、、、」
「ふふっ、素直で面白いですよ? いつも笑顔にさせてくれますし。」
「なら良かった。 これからもさくらとよろしく頼む。」
「任されました。」
何か通じ合っている2人、、、
「そしてさくら。」
待ってました!
私にはどんな言葉をくださるのでしょうか?
再度感謝を?
それとも愛を囁きますか?
「よくも俺に黙って動いてやがったな。 後で説教。」
「What!?」
「あ、九重と万丈は帰っていいぞ。 気をつけてな。」
「そ、そう、、、じゃあ待たね。 今日は楽しかったわ、ありがとう。」
「それではまた今度。 さようなら。」
2人は私を置いて帰ってしまった、、、許すまじ
「それで女子1人残して説教とは、、、言い訳にしてもわかり易すぎますよ」
「、、、バレてたか。」
2人だけの空間にしたいからだとしても、言い訳が女子に『説教するから』って、、、嘘が下手すぎますよ
「で、一体何がしたいんですか? せっかくの今日ですし、、、まぁ別に今日じゃなくてもいつでも聞いてあげますが、何でもしてあげますよ♡」
「じゃあ、、、」
先輩は私の方へ近寄り、腕を広げ、私を優しく包んだ
肌寒い風が横を吹き抜けたというのに、私の体は暑く火照っている
「、、、急に『ぎゅー』だなんて、積極的ですね♡」
「別にいいだろ? 俺のために頑張ってくれた可愛い彼女に、お礼とか、想いとか、、、嬉しい感情でいっぱいになって、我慢できなかっただけだ。」
「やはり積極的です。 ではこのままベッドへ!」
「冗談が言えるってことは、割と平然としてんだな。」
「むぅ、、、」
やはりそういうことはまだ早いですか
「今は『ぎゅー』で許してあげます。」
「厳しい採点だな。」
「、、、でも嬉しかったです。 先輩から動いてくれて。」
「ま、今はこんなところだ。 それじゃ、気をつけて帰れよ。」
体を離し、手を振ってさよならする先輩
本当に名残惜しいですが、今日はこのところで、、、
「また明日ですね、先輩♡」
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