第71話
人がいる場所で、先輩を『私の彼氏』宣言
ラブコメだったら学校中に噂が広まってるとこなんだろうけど現実は物語と異なるもので、特にヒソヒソと話されたり噂されることもなかった
体育大会後にクラスメイトから幾つか質問やらがあっただけで、数日経った後はそれ以上踏み込むことなく、いつもの日常に戻っていった
あ、ちなみに体育大会は楽しかったです
先輩が障害物競走で盛大にコケたのに、先頭集団がデッドヒートしてたから私と和恵さん以外にコケたことが気づかれなかったという悲しい出来事があったり、雪先輩がリレーで大活躍したり、希ちゃんが3年の先輩から公開告白を受けたり、、、断ってたけどね
とまぁこんな感じで色々あったわけですが、それよりも目下、私には最優先でやらねばならないことがある
それは前々から匂わせていた通り、先輩のお誕生日のお祝いの準備です!
和恵さんと何度も打ち合わせたり、必要なものを買い揃えたり、私のお母さんを和恵さんにご紹介してケーキ教室を開いたり、、、努力の甲斐あって、あとは当日の料理と飾り付けを残すだけとなっている
今までよく頑張った、偉いぞ私!
てなわけで先輩の誕生日である10月10日の前日、つまり10月9日に、ケーキといった冷蔵して保存できる料理はあらかじめ作っておいて、残りは翌日に和恵さんが一任することとなった
和恵さん曰く、『私の息子の誕生日だというのに、母親である私が動かないわけにはいかないわ。 当日の準備はほとんど任せてちょうだい!』とのことである
私もお母様を信用しているので、安心できるものというものですよ
そして迎えた先輩のお誕生日当日
「、、、なぁ、俺が家出るのと同時に向こうからやって来るのなんで? ずっと張り込みしてんの?」
「最近、あんぱんを多く食べているせいか体重が少し増えてしまったような気がするんですよね。」
「張り込み時の食べ物の典型。」
「まぁ冗談なのでご安心を!」
「それで本当のところは?」
「、、、ふふっ♡」
「どうしてそこで笑う? 登下校時の身の危険を感じるのですがそれは。」
「そんなことは置いとくとしまして、、、先輩ってば、今日は希ちゃんと本を買いに行くのですってね?」
「ッ! スマン、彼女がいるのに他の女子と買い物はマズいよな。」
申し訳無さそうな顔をする先輩、、、ですがご安心を
「いえいえ、相手は希ちゃんですし、昨日のうちに希ちゃんが報告してくれていましたし。」
「なんだ昨日聞いてたのかよ、、、ならさ、もし万丈じゃなかったら?」
「先輩を拘束します。」
「ヤンデレがすぎる。 背中がゾワッとしたんだが⁉」
「これもまた冗談ですよ。 ワタシ的には先輩をあまり束縛したくないので、誰と何をしに行くのか教えてくだされば基本的にはOKです。」
「、、、意外だな。 マジで拘束されるのかと思ったぞ。」
「先輩が普段、私のことをどのように見ているのかがよ〜く分かりました。」
後で覚えていてくださいね、、、
「まぁ先輩の交友関係維持のためにも、楽しんできてくださいね。」
「言い方に違和感を感じるが、、、じゃあありがたくそうさせてもらうよ。」
「はい♪」
放課後、校門を出て真っ直ぐに先輩の家へと向かう
既に何十回も通り、歩き慣れた道を進みながら、今頃先輩は何も知らずに希ちゃんと買い物をしていることだろうと想像する
ふっふっふ、、、計・画・通・り!
実はこれまで私は希ちゃんと相談していて、サプライズの準備時間を引き伸ばすために、先輩と一緒に本を買いに行ってもらうことを頼んでいたのだ
ちょうど希ちゃんも欲しい参考書があったとのことで、彼女から反対は無かったし
そして今朝は先輩にサプライズのことがバレないように、平然として、誕生日のことを話題に出さなかった
当日も念を入れて行動していたのだよ、ふっふっふ、、、
そして今から、サプライズのための最終調整に入る
、、、サプライズに力を入れ過ぎだと思われるかもしれないけれど、私は先輩の誕生日を精一杯楽しんでもらうと決めたのだ
一度決めたなら、そこに至るまでバレないようにとことん努力する
だって私は、、、ストーカー系暗躍ヒロインですから!
何度目になるか分からない自宅訪問
「おかえり、さくらちゃん。」
「ただいまです。」
既に挨拶が『おかえり』『ただいま』になっていることを先輩が知ったなら、多分声をあげて恥ずかしがることでしょう
あ、ちゃんと私の家には毎日帰ってますからね!
確かに先輩のお宅に通うことが多くなっている今日このごろですが、ちゃんと毎日家に帰っています、、、というか先輩が頑なに泊まることを許可してくれないのは一旦置いときまして
何気に先輩も毎回送ってくれているのでお母さんも安心してるらしいし、特にこれと言った大きな問題も起きてない
おっと、話が逸れてしまいましたね
今はリビングで最後の確認をしているところです
「準備はほぼほぼ終わったわ。 後は零斗を迎えるだけね。」
「わぉ、飾り付けがオシャレですね!」
窓枠には派手すぎず控えめな、しかし目を引くモールが架けられ、壁にも飾りが付いていて変に空いている所が無く、誰が見ても喜ぶ内装となっていた
「これは先輩も喜ぶこと間違いなしです!」
「ならこれでOKね。 零斗を驚かすわよ〜!」
『ただいま〜。』
来た
リビングのドアへ、先輩が手をかける
今ですッ
「先輩、お誕生日おめでとうございます!」
「零斗、誕生日おめでとう!」
耳に優しい音量のクラッカーを鳴らし、先輩を出迎えた
先輩は驚いた表情で少し呆けた後に
「、、、」
涙を流した
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