第65話


 それから数日が経ち、何事もなく平和な学校生活を送っていた 


 朝は先輩の跡をつけようとして、でも何故かバレて一緒に登校することを何回も続けて、、、昼には先輩の教室へ突撃して彼をからかったり、それに時々カフェへ放課後デートすることもあった


 そこら辺は話すと長くなるので割愛させていただくが、変わらない幸せな毎日だったと言っておきましょう


 


 で、何故私がいきなりこの数日間を回想しているのかと言うと、屋上へ向かって歩いている間が暇だからである


 遡ること十分前、先輩はご用事があるとのことで1人悲しく帰ろうとしてたら、下駄箱に手紙が置かれていることに気がついた


 む、これはまさか、、、と思いつつ恐る恐る手紙を開くと、、、案の定、告白の呼び出しだった


 『屋上でずっと待っている』というバックレずらい理由も書かれていたので、少し用事を済ました後に向かうこととなった


 これが現在の状況だよ




 屋上に続くドアを開けると、夏らしい暑い空気がどっと押し寄せてくる


 そんな空気の中、1人の男子が段差に座って待っていた


 一般の意見だと、イケメンの部類に入る顔立ちはしている、と素直な感想はもった


 だけどどこか見覚えのある顔に疑問を懐きつつも、呼び出した相手が私に気付いたようで、立ち上がり話しかけてきた


「急な呼び出しですみません、十束さん。」


「なんのご用事でしょうか?」


「端的に言います、僕と付き合ってください!」


「ごめんなさい、心に決めた人がいるので。」


 予想通りの告白に私は即答した


「、、、知ってる。 百瀬、だよね。」


「何故それを、、、あっ、あなたは先輩と同じクラスの、、、」


 何回も先輩の教室に突撃をかましているので、クラスの人の顔はうろ覚え程度だけど微かに記憶に残っている


 先輩と話している時にこちらをチラチラと見ていた人だ


「前々からあなたを気になってはいたのですが、百瀬と楽しそうに話している様子を見て、僕には無理だと悟った、、、でもこれだけは答えてほしい。 なんであいつなんだ? 僕の方が百瀬よりカッコいいし、あいつはいつも1人でいるのに、、、」


「ふふっ♡」


 笑いを溢してしまった私に告白してきた相手は困惑する


「失礼しました。 ですが、少し嬉しかったのですよ。」


「、、、?」


 私の返答で余計困惑させてしまったようだ


「先輩の魅力を私だけが独占しているということに気付いてしまったので。」


 だってそうでしょう?


 先輩の優しいところにカッコいいところ、イジられた時に見せる可愛い表情も、楽しそうな笑顔も


 全て、



「、、、本当に敵わなそうだね。 急な告白でごめんなさい。 でも一応気持ちは伝えておきたかった。 それではさようなら、、、」


 そう言い残して告白してきた相手はそそくさと去っていった


 名前を名乗らなかったところを見るに、本当に玉砕覚悟で告白してきたのだろう


 その気持ちに気付きはするが、私の想いは依然先輩だけに向いている


 勇気を出したあの人に申し訳ないとは思えない、、、だってそれが、ずっと先輩を想い続けると決めた私の道だから




 さて、一段落ついたところでお礼を言いましょうか


「もう大丈夫だよ、。」


 私は友人の名前を呼ぶと、屋上に繋がるもう一つのドアから現れた


「、、、まったく急に来てほしいって言われて来てみれば、友人の被告白シーンを見させられるなんてね。 ま、さくらに何もなかったのが一番だけど。」


「無理を言っちゃってごめん。」


「最近はやんちゃな先輩が多いって聞くし、私が心配に感じたのもあるし、そこまで気にしなくてもいいわよ。」


 そう、屋上に呼び出されると知って、万が一私の身に何か起きた時に助けを呼べるように希ちゃんにお願いしていたのだ


 夏祭りでの、あの強引なナンパの出来事から反省しての選択である


 希ちゃんに迷惑をかけてしまって申し訳ないけれど、、、私は、私自身の体を安く考えていない


 心も含めて体も、全て先輩のために寄り添うと決めたのだから、、、たとえ空振りに終わろうとも、汚されるなんてことが決して無いように、未然に手を打っておく


「本当にありがとう。」


「ま、このお返しはコーヒーでチャラにしてあげるわ。」


「お、大人、、、」




 見返りのコーヒーを飲む希ちゃんに大人な雰囲気を感じつつ、彼女と下校する


「そういえば、百瀬さんの誕生日とか聞いてるの?」


「うん、先輩の誕生日は10月10日だったよ。」


 何故知っているのかと言うと、中学の時に既に聞き済みだから、、、祝えたかどうかは別として


 、、、まぁ中学の陰キャだった頃は、日和って贈り物とか出来なかったんだよね


 出来て『誕生日おめでとうございます』くらいだった、、、いや本当に今の自分からは想像できない陰キャぶりだった


「まだ2ヶ月あるけど、そろそろ準備とかしておいた方が良いんじゃない? せめて、ふたりきりで祝うのか、私や九重先輩も呼ぶのかくらいは決めておかないと。」


 そんな私を気にかけてか、誕生日に関して注意してくれる希ちゃん


「う〜ん、、、先輩にさり気なく尋ねてみようかな。」




 中学で失敗してしまった後悔もあり、今年は彼を精一杯祝うと決めた


 そのためには先輩のお母様の協力も必要だよね、、、ふふっ、先輩の知らないところで誕生日の話を進め、当日にサプライズしてやる!


 私は十束さくら、稀代のストーカー系暗躍ヒロイン!


 先輩を幸せにするため、私は密かに動き始めるのだった、、、

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