第六章

第64話


「わ、私はなんてはしたない真似をッ、、、」


 夏休み最終日


 プールでの最後の出来事が、もうこれで何回思い出したか数え切れないくらい頭をよぎり、ベッドの上で悶える


 足をバタバタ、腕をブンブン、頭を振っているので髪がバッサバッサ


 身だしなみが崩れるのを構わず、行き場のない感情を爆発させていた


 というのもプールに行った帰り道で、先輩が子供を助けてご褒美をくれると言ったので、ノリと雰囲気で彼の唇を奪ってしまった


 先輩はヘタレだから私の誘惑を必死に抵抗していて、でもそんな抵抗を続ける先輩を一泡吹かせてやろうとキスをして、、、


 私もファーストキスだから上手に出来るか不安だったけど、、、気持ちよかったぁ


 あの時の感情はとても形容しきれない


 幸せで、嬉しくて、気持ちよくて、少し恥ずかしくて、でもやっぱり心は喜んでて


 先輩の唇を奪えたことと、初キスが先輩だったことが相まって、私の心はもう、、、



 でもキスの幸せを思い出す度に、調子に乗りすぎてしまった羞恥心も溢れ出すのだ


 勢いでキスしてしまったけど、先輩に気持ちよく出来たかな?


 攻めると宣言したけれど、グイグイ行き過ぎて嫌がられてないだろうか?


 考えれば考えるほどあらゆる後悔が波となって押し寄せてくる


 思えばプール内でも先輩に、む、胸を押し付けて、、、今更だけどなんであの時の私はあんなにも大胆だったの⁉


 そりゃ先輩に触れる、触れられるのは嫌じゃないし、寧ろもっと積極的に来てほしいとも思っている


 でも流石にアレは、、、やり過ぎだよね、反省します


 だがまたやらないとは言っていない!


 最後のキスの後、私達は色んな感情を整理するように静かに帰ったのだが、、、ふと先輩の瞳を見つめると、微かに『もっと』という感情が読み取れた


 何故分かるのかって?


 だって私も同じ気持ちだったからね!


 まぁとにかく私も先輩も『もっと』を望むのならば、また攻める


 でも今回で反省したことを活かして、次はもっと工夫して攻めてやる‼


 初々しい関係も今だけだし、今しか感じられないドキドキとかもあるだろうし


 それに二学期は体育大会に加え文化祭などの行事が目白押し


 こんなの先輩と一緒に楽しめって言ってるようなものだよね?


 えへへ、、、学校始まるのが憂鬱に感じる人が多いとよく聞くけれど、少し視点を変えれば、待ち遠しく、なるもの、だなぁ、、、


 、、、


『、、、すー、すー』


 さっきまで羞恥心で悶ていたのに、いつの間にか心の中がほんわりしてて、気がついたらまぶたを閉じて夢の世界へと旅立っていた




「、、、んんぅ、、、今は、、、6時か。」


 寝ぼけ眼で時刻を確認し、ゆっくりと体を起こす


「、、、ふふっ♡ 今日も先輩の跡をつけなきゃね。」


 先輩とのラブコメを繰り広げている合間合間に、私は特訓を重ねて常に進化し続けていたのだ


 今まで何度も彼に看破されてしまっていたけれども、これからはバレないように


 最近はヘタレな先輩から主導権を握ることが多くて、彼をからかったりすることもよくあるから、この状態を上手にキープできれば、、、


 この場に居ない彼に向かって囁く


「今日も覚悟しててくださいね? 先輩♡」




「お、やっぱいたか。」


 ん?


 可怪しいなぁ、今日は完璧に身を隠せれていたのだと思うのだけれど


「何故分かったのです⁉」


「なんかさ、何回もストーキングされてたらなんとなく分かるようになってきた。」


 くっ、何度も行っていたことが仇となりましたか、、、悔しいですッ!


 歯噛む私をよそにして、先輩は言いにくそうに正論を告げた


「、、、あのさ、俺とお前って付き合ってんだよな? なら別に背後をつけなくても一緒に登校すればいいんじゃないか?」


「確かに。」


 ですが!


「昨今のヒロインには、属性に飽きが出ていると思うんですよ。」


「いきなりどうした。」


「幼馴染、先輩、後輩、ツンデレ、ヤンデレ、溺愛系、etc...ほとんどの属性が既に業界へ進出済みなのです。」


「まぁ言いたいことは分かるが。」


「そんな中で生き残るためには、新しい属性を生み出さねばならない、、、そこで私は『ストーカー属性』を主張します!」


「な、なんだってー」


 もっとリアルな反応をしてほしいですが、まぁいいでしょう


「なので私はこれからも先輩をつけて回ります。」


「堂々とストーキングの宣言しないでもらえますかね? 恥ずかしいんで。」


「何を今更恥ずかしいと? プールの帰りでは、あんなにも熱烈な口づけを交わしたというのに♡」


「奪ったのは君だろうが、、、ッ」


「あれれ? どうして顔を赤くしてるんですか? もしかしてあのキスを思い出して照れてるんですか? か〜わい〜!」


「う、うるさい。 早く行くぞ!」


 あはは、やっぱり先輩をイジるのは楽しいなぁ


 結局は一緒に登校しようと誘ってくれてるところ、ポイント高いですよ♡

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