第61話
「遅い、、、」
さくらとプールに行く日、約束の午後三時を15分も過ぎているのにまだ来ない
メールも届いてないし、何かあったのか?
あと少しだけ待ってみて、それでも来なかったら電話してm「お待たせしました〜!」
やっと来たか
声のする方を向くと、駆け足でこちらへとやってくるさくらが見えた
空色のブラウスにショートパンツがよく似合い、快活なイメージを持たせている
「はぁ、はぁ、、、遅れてすみません。」
「息整えてからで大丈夫だ、、、それで何かあったのか?」
「実は行く途中で迷子になってる子供がいて、、、」
「母親を一緒に探してあげてたのか?」
「、、、はい。」
マジか
「その子は無事に?」
「頑張ってその子のお母さんの特徴を聞き出して、なんとか送り届けられました。」
「お疲れ様、頑張ったな。」
労いの言葉に対し、まだ顔を上げないさくらはボソッと呟く
「、、、信じて頂けるのですか? 私がついた嘘だとは思わないのですか?」
なるほど、それが怖くてずっと下を向いたままなのか
今までのイタズラとかのせいで、嘘だと思われないか不安なのか
だが、、、
「信じるに決まってるだろ?」
「ッ!」
「ここでお前がそんな嘘をつくようなやつじゃないことは知ってるし。 何より、昨日のお前は今日ここに来ることを本当に楽しみにしてたみたいだからな。 特別な理由がない限り、遅れてくるとは思えない。」
「、、、先輩がカッコよすぎます。 ズルいです。」
優しく頭を撫でてやると、やっと俺の顔を見たさくらはいつもの花が咲くような笑顔をしていた
「ま、俺も楽しみにしてたからな。 少し遅れたくらいで怒るほど狭量じゃないさ。」
「おまけに優しいときたもんですね。 実は私が先輩に堕ちているのかも。」
「ミイラ取りがミイラになってんじゃねえか。」
「これから着るのは包帯じゃなくて水着なんですけどね。」
「やかましいわ。」
たかが市民プール、されど市民プール
市の運営といえども、侮るなかれ
ここら一帯はかなり栄えているので、市の資金がかなりあるらしい
おかげで公共施設が充実し、それが呼び水になって更に住民が増えている現状
その充実した公共施設の一つがこの市民プールであり、流れるプールは勿論、子供プール、上級者向けの50メートルプールもちゃんとある
休日は子供連れの方も訪れ、泳ぎに来た人でごった返すのだが、さくらが言った通り、平日の今日は人がそこまで多くない
いたとしても、俺達と同じことを考えて来た学生くらいかな
説明が長くなってしまったが、とにかく俺はそのプールの更衣室の出口でさくらを待っている
先程は待っている間に色々と思うことがあったが、今回はそうでもない
なにしろ男は特に日焼け等を気にしなければ着替えるだけで済むが、女性は日焼け止めを塗ったり髪が傷まないようにしたり、沢山の作業があると母さんから聞いていたから
まぁそろそろ出てくるかな、、、と、丁度出てきたな
「ここでも待たせてしまいましたね、すみません、、、先輩? どうしてこちらを見てくれないんですか? ほら、先輩に褒めてもらうために頑張って選んだ水着です!」
「少し、待ってくれないか。」
「、、、もしや、私の水着姿に見惚れちゃったんですか?」
「、、、」
彼女は白色、、、真っ白な水着を着ていた
ビキニ型のセパレートタイプで、上下共に綺麗なフリルが付いている
普通フリルは幼いイメージを持たせてしまうが、彼女が着ているのは純白なので幼さを全く感じさせない
寧ろ微かに大人びていて、、、こう言ってはなんだが、色気がある
そう思わせているのは、彼女の整った顔立ちと抜群のスタイルだろう
再開した当時、彼女は俺をからかうために己のバストの十の位を口から滑らしていたが、、、納得してしまう自分が下心にまみれているようで嫌になる
「すまん、その、、、似合ってるぞ。」
「ありがとうございます。 先輩も似合っててカッコいいですよ? 細身ですけど筋肉はちゃんとついてますし。」
「最近運動するようになったからな。」
「、、、まだこちらを見てくれないんですけど。 こうなったら、、、えいっ!」
「わっ⁉ ちょお前、それはヤバいって!」
急に近づいてきたと思ったら、俺の腕に絡みついてきた
腕を抱きかかえ、胸を押し付けるようにして密着してくる
ギュッと抱えているので振りほどけない
初めての距離感に加え、現在俺とさくらは両者ともに布による防御力が
故にその、、、リアルな、生々しい柔らかさというか、とにかくそれが伝わってきた
イタズラに成功した子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、さくらは上目遣いで再びからかってくる
「私の水着姿にドギマギしてる先輩、カワイイです。 今日は私が攻めまくる番ですから、覚悟しててください!」
、、、ずっと陰キャだったせいで、こんなラブコメ展開に耐性がない自分に反撃の余地は無さそうだ
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