第60話
駅前のモールに到着し、そのまま寄り道せずに水着ショップへと向かう
来る途中で他の客が男女関係なくさくらをチラチラと見ていた
男は俺が隣を歩いていることにガッカリし、女はさくらの顔に羨ましげだった
やっぱコイツって美人なんだな、と改めて思う
「水着、水着、、、もうこれでいっか。」
「そんな雑に決めていいんですか?」
「長い間使う物じゃないんだ。 パッと見でいいだろ。」
「試しに着てみましょうよ。 試着室はあちらです。 サイズが合わなかったり気に入らなかったりしたら、プールでまた買う羽目になりますよ?」
「まぁ、確かに。」
それならプールで買えばいいだけの話だし、今しか買えない物も良いのかも
「、、、私に選ばせてくれませんか?」
「俺の水着をか?」
「はい。」
「野郎の水着なんか選んでも得しないぞ。」
「普通ならそうでしょうけど、、、先輩だから、選んでみたいんです。」
、、、
「分かった。 じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。」
「まっかせてください!」
そうして店の棚を見ながら水着を吟味し始める
まったく、本当に良すぎる彼女だよ
数分後、水着を手に取り試着室の前に戻ってきた
「先輩、これはどうでしょうか?」
「、、、俺の目がおかしいのか? 布面積が非常に少ないんだが。」
「先輩の目は正常ですよ。」
アハハ、、、ハァ、、、
「ふざっけんなよテメェ! これボディービルダーが着てるやつだろうが!」
「あれ、バレちゃいました?」
そう、コイツが持ってきたのは黒色でほぼV字な水着
マジでボディービルダーが着てるようなやつ
「いやまぁ要望とか条件とか言わなかった俺も悪いけど、これはナイだろ。 というか分かってて持ってきただろ。」
「素晴らしいツッコミでした。
「ニヤニヤすんな。」
評価上がったと思ったらすーぐ下げてくる、、、
「早く戻してきなさい。」
「もうお会計しちゃいました♡」
「嘘だよな⁉︎ 嘘だと言ってくれ!」
「ご安心ください。」
だ、だよな
流石のお前もこんなモノ買ってくるわけないよな
「支払いは私が済ませました!」
「何やってんだよ!」
タグにあまりシャレにならない値段が書かれているんだが?
「お金を渡す時の店員さんの表情がヤバかったですね。 『こんな趣味があるんだ』って顔でした。」
「羞恥心を持ってくれ、頼むから。」
「ま、冗談なんですけどね♡ お会計はまだしてません。」
「し、心臓に悪い、、、」
誰だよ水着を買って帰るだけって言ったやつ、、、俺だったわ
「気を取り直して、こちらが大真面目に選んだ水着です。」
そう言いつつ背に隠していた水着を見せた
、、、まともだな
メインの紺青が目を引き無駄に飾りつけず、腿の所に白色であしらわれた刺繍のマークがカッコいい
というか、前に示されたものがアレだからな、、、なんでも最高に見えてしまう
「良いなコレ。」
「でしょう? 初めはコレに目をつけたのですけど、シンプルに持ってくるだけでは味気ないと思いまして。」
だからあの黒V字水着をネタ枠として持ってきたと
「最高のサプライズをありがとう。」
「大好きな先輩のためならこれくらいのこと当然です。」
「皮肉だよ。」
「知ってました。」
、、、まったくコイツは
「ま、選んでくれてありがと。 カッコいいのはホントだから、コレを買わせてもらうよ。 予算範囲内だし。」
「気に入っていただけて嬉しいです。 プール、楽しみですね!」
「あぁ、そうだな、、、そういえばお前は水着、買わなくていいのか?」
俺を悩殺する用だとか言ってたやつ
「先輩のご忠告を受け止めまして、買うのはまた今度にしたんです。」
「是非そうしてくれ。」
「明日は可愛い路線で攻めることにしましたから!」
「、、、楽しみにしとくよ。」
ま、とにかくこれで今日の予定は終わったかな
「さて、帰るか。 コンビニスイーツ一つぐらいなら途中で奢ってやる。」
「ホントですか⁉ ありがとうございます先輩!」
日が沈みかけて夕方になり、昼間の猛暑が引いて涼しくなっている
夕焼けの中をさくらと話しながら歩くのは、やっぱり楽しかった
明日は横で笑っているコイツとプールに行く
ボッチで陰キャな俺には、本来得難い経験だ、、、さくらとなら何処でも楽しいが、明日はより楽しみたい
さくらという想ってくれる相手がいるのに、そんなことを考えてしまう俺は強欲なのだろうか?
そう思いながら家路についた
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