第59話
さくらに電話をかけた日の翌日
部屋から窓の外を見ると、夏に相応しく太陽が
天気予報を確認したところ、明日もこの良い天気が続くらしい
いやぁ、本当に良い天気だなぁ!
、、、ダメだ、、、外に出たくねぇ
新しく水着を買いに行くのにわざわざ外に出ないといけないってどうよ?
まだ一週間猶予があったなら、通販なり何なりで外に出ることなく変えたのに、、、いや後の祭りか
覚悟を決めて、大人しく買いに行きますかね
「あら零斗。 今から何処かに行くの?」
「うん。 ちょっと水着を買いに行く。 今持ってるやつはサイズ合わないから。」
「かなり暑いから熱中症にならないように水分をこまめに摂るのよ?」
「忠告ありがと。 じゃ行ってくる。」
「行ってらっしゃい。 気をつけてね、、、ふふっ♡」
「?」
最後の笑顔に違和感を覚えたが、、、見送りを告げた母さんは、そのまま洗濯物のカゴを抱えて階段を登っていった
ドアを開ける前に、熱中症予防のために言われた通り、ボトルに冷えた水を多めに入れてカバンに入れる
ようやく準備が整った
「いざ。」
外につながるドアを開けると、熱気がグワッと押し寄せてきた
少し前に降った雨の影響で地味に湿度も高く、、、もうね、ただ暑いね
ま、頑張って行くか
「お待ちしていました、先輩!」
「、、、は?」
駅に向かう途中、前方の電柱の影からさくらが突然現れた
白い綺麗なワンピース姿に麦わら帽子がよく映える
美人なのも相まってとても目立っているが、暑くて集中力、というか周りへの注意が散漫になっていたので、彼女の存在に気が付かなかった、、、いや今はそんなことはどうだっていい
「なんでお前が?」
「彼女だから当然です!」
「説明になってねーよ、、、あ〜暑い。 取り敢えずコンビニに行くぞ。 ここで話してたら茹でダコになる。」
「今どき茹でダコって表現使う人初めて見ました。 先輩って意外と可愛いところあったんですね。」
「、、、」
この感じ、まさしくさくらだな
こんな暑いのに元気だねぇ
現在コンビニで一呼吸
俺は家で汲んできた氷水を飲み、さくらは買ったアイスを食べていた
「で、なんでお前がいんの?」
「ずっと先輩のお宅付近を張り込みしてました。」
「怖えよ。」
「見つけたからには、もう絶対に二度と離しませんからね、、、」
「だから怖えよ! ヤンデレか!」
ストーカーとかそんなレベルじゃない、、、軽くホラーだわ
「真面目に話すと、和恵さんから連絡をいただいたんですよ。 『零斗が水着買いに行くようだから、気が向いたら一緒に行ってあげて』って。」
あっけらかんとした表情で真実を述べるさくら、、、おかげで犯人が分かった
「母さんかよぉ!」
あんまり共謀しないでって言ったばかりなのに、、、まぁ来てしまったものはしょうがないか
「、、、体が涼しさに慣れる前に行くぞ。」
「追い返したりしないんですね。」
「ここまで来て帰らせるような真似は出来ないさ。 けど言っとくが、本当に面白いことなんかないからな?」
水着を見て、買って、帰るだけ
残念ながらラブコメ展開など予定していない
だがさくらは笑いながら首を縦に頷いた
「単に私が先輩について行きたいだけですし、先輩と一緒なら何処で何をしても楽しいです!」
「凄いな。」
そこまで想ってもらえている自分はかなりの果報者だな
ま、ウザい時もあるがコイツと居る時は基本楽しいし、こちらとしても来てくれるのはありがたい
「よし、じゃあまた出発するぞ。」
「イエッサー!」
いやマジで元気過ぎない?
その元気を10%、、、いや15%分けてくれ
出来るだけ日陰を通りながら駅に向かう途中のこと
「ついでに私の水着を選んでくれてもいいんですよ?」
「サイズが合ってるやつ持ってるんじゃないのか?」
「可愛い水着は持ってますけど、先輩を悩殺させるために色気たっぷりの水着を新しく買おうかなと思いまして。 ヘタレな先輩もオオカミさんになるようなやつを!」
お、ラブコメ展開か?
だが残念でした
「却下。」
「なんでですか⁉ 先輩のヘタレ!」
「お前なぁ、行くのはプールだぞ? 大衆の面前で、んなヤバいものを着させられるか、、、あと俺が他の野郎に見せたくない。」
「ッ!」
彼女の扇状的な姿など、俺以外の誰にも見せないでほしい
公共の場なので水着姿を見られるのはどうしようもないのだが、、、流石にさくらが話しているような水着はNGだ
「ズルいですズルいです、、、急にデレないでくださいよぉ。」
夏らしく頬を赤めるさくら
こちらをポコポコと軽く叩いてくる
「、、、着るなら二人きりの時にしてくれ。」
「せんぱいのえっち。」
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