第54話


 唐突な料理勝負が決まった後、仕込みやらの準備があるとのことで、俺は家から追い出された


 特に行くところもないし、たまには家の周辺をフラフラと歩いてみるのも悪くない


 幸いなことに今日も天気が良く散歩日和だったので、歩きやすい格好に着替えて外に出てみる


「まずは最寄りの川に向かって歩いてみるかな。」




 てな訳で15分ほど歩いて川に到着


 今度は川沿いを歩いてみよう、、、って向こうから誰かジョギングして来てる


 うん?


 ん〜、なんかさー見たことある人なんだけどなー


 、、、あれ、千歳綾女先輩じゃね?


「ふぅ、、、おや、百瀬後輩じゃないか! こんなところで会うとは奇遇だね。」


 はい、スポーツウェアに身を包んだ千歳先輩でした


 


 風紀委員長を務めている先輩と俺が知り合いなのは、まぁ紆余曲折あってだな、、、って先輩に何か返さないと


「いえ、ちょっと散歩でもしようかなと。 ちなみに先輩は?」


「私は日課のジョギングだよ。 風紀委員の仕事にかかりきりになって、運動不足になってしまうことを防ぐためにね。」


 改めて考えると、通常の学生としての活動に加え、風紀委員活動、更に他生徒にナメられないために成績の維持も必須、、、この人働きすぎ!


「風紀委員長も大変ですね。 でも俺と話してて大丈夫なんですか? 邪魔になるようでしたら、、、」


「いや、丁度休憩を取ろうとしていたところなんだ。 そのついでに話し相手になってくれるかい?」


 う〜ん、急に家から追い出されて暇だったしな


 特にすることもないし、先輩に付き合うのも良さそうだ


「構いませんよ、俺でよければ。」


「ありがとう! ならもう少し進んだ所に公園があるんだ。 そこで休もう。」




 とまぁ、成り行きで先輩と話すことになった


 川沿いに位置する公園のベンチ


 大木の日陰になっていて、風も心地よく吹いている、、、休憩には絶好の場所だな


 まずは先輩を先に座らせて、俺は自販機で冷えたお茶を買ってから座り、それを差し出す


「頑張ってる先輩にちょっとしたご褒美です。 あと、俺の我儘を聞いてくれた件のお礼も。」


「風紀委員の見廻りの件か? あれは元々進めていた話だったし、我儘だなんておもわなくてもいい。」


「こういう時は黙って受け取るのが礼儀ですよ?」


「そうか、、、ならありがたく頂いておくよ。」


 先輩はお茶を手に取り、少し飲んだ後に話しかけてきた


「それで、最近はどうだ? 変わったこととか、面白い出来事とか。」


「変わったことですか、、、彼女が出来たことですかね。」


「な、何⁉ 君に彼女が出来ただと⁉」


 そこまで驚かなくても、、、詰め寄るの止めてください


「あ、相手は?」


「十束さくらです。」


「十束後輩か。 初めて会った時も君と親しげだったな、、、いやちょっと待て。 ストーキングの相手はどうなった? 君や十束後輩に何か被害があったりは、、、」


「あれ、言ってませんでしたっけ? さくらがストーカーですよ。」


「は?」


 今思えば、『ストーカーに告白されていたこと』は話したけれど、『さくらが俺に告白してきたこと』は話してないから、『さくら=ストーカー』の式が先輩の頭の中に浮かべられないのは当然だな




「、、、つまり、君はストーカーと交際を始めたということか?」


「そういうことになりますね。」


「、、、その、何から言えばいいか、、、衝撃的な情報が多すぎる。」


 先輩は両手で頭を抱える、、、ってこの光景、今朝の母さんの様子だわ


「まず、十束後輩がストーカーである。 次に、十束後輩は君に告白していた、、、最後に、十束後輩は君と付き合い始めた、、、うん、面倒くさいことになっているね。」


 そこで笑顔になるの怖いです


「君はそれで問題ないのかい? 彼女と言っても、元ストーカーだろう?」


「はい。 俺はさくらが好きですし、さくらも俺が好きみたいですから。」


 流石に風紀委員長に嘘告のことで口を滑らすわけにはいかないし、変に誤解されると嫌なので、俺がさくらを好きだということだけを伝えよう、、、俺らしくないが


「、、、そうか。 まぁ君たちが幸せそうならそれで構わない、、、と思う。 愛の形は人それぞれだ。」


「なんか言い方引っ掛かりますけど、認めてもらえたようで嬉しいです。」


「君たちの恋路に口出しするのは野暮だろうし、、、それより、君と十束後輩は恋仲なのだろう? そういった話も色々あるのではないか⁉ さぁ話すのだ‼」


 さっきよりもこちらに詰め寄り、話を聞かせろと言ってくる


「え、でも付き合い始めたのは昨日ですよ、、、ってか先輩雰囲気変わりすぎじゃないですか?」


「私もこう見えて、人並みに恋バナが好きなんだ! 是非とも君たちのことを話してくれないか? 勿論、プライバシーに抵触しない範囲でだが。」


「、、、ハァ、分かりました。 休憩で先輩に付き合うと決めましたから、大人しく話しますよ。 でもあまり期待しないでくださいね、基本アイツにからかわれてるだけなんで。」


 じゃあ、アイツとの今までを全て話そうかね、、、嘘告については抜きで

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