第53話
「、、、どんな反応をすれば良いのか分からないわ。 息子がそんなくだらないことに巻き込まれていて、当の本人は全然気にしてないと言い、、、」
母さんは頭を抱えている
あの後、あらゆる言葉を用いてはぐらかそうとしたが母さんからの追及を逃れることは出来ず、諦めた様子のさくらに促され嘘告の顛末を話した
10回、、、いや、9回だな
9回の嘘告を経験し、10回目でさくらから本気の告白を受けた話を
「さくらちゃんがあの時言い渋っていたのはこの事だったのね?」
「はい。 先輩ならきっと、お母様に心配をかけさせたくないだろうなと思って、、、」
「さくらを責めないでくれ。 俺も、母さんに話して余計な心配をさせるつもりは無かったから。」
「さくらちゃんは悪くないわ、、、中学であなたが学校から帰って部屋に閉じこもることが数回あったけれど、その時に気づいてあげられなかった私が悪い。」
「母さんも悪くないよ。」
「なら誰が悪いのかしら?」
「それは、、、」
客観的に見れば、嘘告をしてきた女子たちが九割五分悪い
「、、、母親として、彼女たちがしてきたことは当然許せることではないの。 それは分かっているわよね?」
「、、、あぁ。」
「あなたが今も苦しんでいたのなら、教育委員会に出ていたところよ、、、でもあなたは気にしていないのね。」
「そうだよ。 今更アイツらをどうこうしようと思ってないし、、、心底どうでもいい。 だって、俺の隣にはコイツがいるからな。」
隣りに座っているさくらの頭を撫でる
さくらは嫌がる素振りを見せず、寧ろ笑みを浮かべた
「9回裏切られて、10回目に本気で俺を好きでいてくれる人を見つけたんだ。 やっと好意を信じられる相手を見つけたのに、その信用をアイツらに汚されたくない。」
「、、、先輩はとても優しくて、でもそのせいで傷つき続けて、、、その結末に私と出会えたことを幸せと呼んでくれるのなら、それを誇らしく思います。 大丈夫ですよ、これから先輩は私が守りますから!」
「あなたたち、、、」
9回の嘘告を経験し、やっと得ることが出来た
さくらは好意を信じられなくなっていた俺を解放してくれたのに、今度はアイツらへの復讐で縛られるなんてまっぴらごめんだね
さくら曰く俺は壊れているらしくて、嘘告されたことを悔しいとも苦しいとも思えないが、本当にどうでもいいんだ
「、、、あなたたちなら、どんなことでも乗り越えられそうね。 なんだか安心しちゃったわ、、、分かった。 私からは特に何か言わないことにする。」
「ありがとう、母さん。」
「ありがとうございます、お母様。」
口を滑らしてしまった時はどうなることかと思ったが、、、丸く収まってセーフ!
「、、、ごめんね、楽しい食事の時間を重苦しくしてしまったわ。 ささ、続きを頂きましょう?」
「だな。 お、この味噌汁も美味しい。 ウチのより味噌の甘さが強めだな。」
「あ、それは私の家での味付けです。 将来のために、私の味に慣れてほしくて、、、お口に合いませんでしたか?」
可愛いやつめ
「いや、とても美味しいよ。」
「なら良かったです。」
自覚するほどに惚気ていたら、正面でこちらをムッとした顔で見つめる母さん
「、、、母として悔しいわね。 ねぇ零斗って今日の夜暇よね?」
「そうだけど、どしたの?」
「さくらちゃん、料理勝負をしましょう。 判定は勿論、零斗よ。」
「か、母さん?」
「受けて立ちましょう。」
「さくら⁉」
「お題は何でも良いわ。 とにかく零斗の舌をより唸らせた方が勝利。」
「和恵さんに勝って、零斗さんをお持ち帰りさせていただきます!」
『零斗さん』、、、何気に名前で呼んでくれたのって初めてじゃね?
恥ずかしくて、胸がゾワゾワムズムズする
「私に料理で負けるような
「あの、一旦落ち着こう?」
なんかヒートアップしてるとこ水を差して悪いんだけど、このまま行くと絶対にややこしくて面倒なことになると、俺の経験が言っている
、、、まぁこの後起こることは想像通りです
「零斗は静かにしてなさい。 これは引けない勝負なの。」
「先輩、私を信じててくださいね♡」
火が点いた女性たちを俺なんかが止められるわけないんだよなぁ
、、、女性たちの仁義なき闘いが、今始まろうとしていた
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