第52話
それから暫くの間、俺たちは互いの体温を感じ合った
「、、、朝ご飯が冷めちゃいますから、そろそろ行きましょうか。」
「、、、そうだな。」
名残惜しいが、それならしょうがない
というわけで俺が着替えるために、さくらを部屋から出させた
アイツは『彼女ですから彼氏の裸を見るのは当然ですよね! あ、彼女ですから着替えをお手伝いします!』と言って頑なに出ようとしなかったが、なんとか無理やり外へ放り出した
まだ諦めていないのかドアを軽く叩いたりして、『先輩開けてくださいよ〜』と言っているが、ホラー映画の一部を見ているようで少し恐ろしい
彼氏として、アイツがヤンデレ化しないように気を付けなければ
まぁ俺が普段からアイツに好きって気持ちを伝えていれば、不安とか心配な気持ちは起きないだろう、、、それが恥ずかしくて難しいんだが
人の好意を信じるなんて久しぶりだし、所謂ギャルゲーや少女漫画などは手を出したことがないので、こういう状況の対処の仕方は覚えていない
精々、ラブコメの内容を多少知っている程度の付け焼き刃である
、、、今度誰かに聞いてみるか、九重とか万丈あたりに
さくらがドアを蹴破って開けるなんて所業に打って出る前に、俺はさっさと着替えて部屋を出る
リビングに向かうと、丁度母さんが食卓に皿を並べているところだった
さくらも手伝っているところを見ると、ドアを蹴破るなんて妄想は杞憂だったらしい
「おはよう零斗。 もう少しで準備が終わるから、顔を洗って来なさい。」
「やっと着替えて出て来てくれましたか。 準備し終わっても出てこなかったらドアを蹴破るとこでしたよ。」
前言撤回、杞憂じゃなかった
「俺はヤベえ奴を彼女にしてしまったのか、、、」
「ジョークですよジョーク! 流石に先輩の家のドアを蹴破るわけないじゃありませんか!」
「割とマジで言ってなかったか?」
「先輩は早く顔を洗ってきてください。 そしたら一緒にご飯を食べましょう?」
華麗なスルー、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
まぁさっきから良い匂いを漂わせている朝食を早く食べたいし、ここは素直に従っとくか
「「いただきま〜す!」」
自然な雰囲気で我が家の食卓に座っているさくらについては深く考えないようにしよう
今日の朝食は白米、鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし、たくあん、味噌汁といった和食の定番だった
それも美味しそうだな、、、
「そういや、さくらが朝食作りを手伝ったって言ってたが、具体的にはどれを手伝ったんだ?」
「それがねぇ、さくらちゃんったら全部手伝ってくれたのよ! こんな優しくて料理が出来る良い子が彼女だなんて、、、我が息子ながら羨ましいわ。」
「えへへ。 先輩に私の朝ご飯を食べてもらいたくて頑張っちゃいました!」
「可愛いかよ。」
なんだコイツ、可愛すぎるだろ
人と人は関係が変わると、良い方で悪い方であれ見方が変わると言われているが、、、いや改めて見ると、さくらって超可愛くね?
パッチリとした目、綺麗な肌、笑顔が似合う口元、、、かなりレベルが高い
料理上手だし話してて楽しいし、俺に尽くしてくれるしで内面も最高級
え、俺って今までこんな美人の先輩でいたの?
割とぞんざいに扱うことも多かったんだけど、バチとか当たらないよな⁉
、、、まぁ考えても仕方がないし、今は朝食をいただこう
ではさっそく、、、モグモグ
「、、、美味しい。」
「でしょう?」
「鮭の塩味効いてて、おひたしの味がしっかり滲みてる。 本当に美味しいよ。」
「先輩の胃袋を掴むためにこれからも時々作るので、楽しみにしててくださいね♡」
「あぁ、楽しみにしてるよ。」
「零斗ったら、もうさくらちゃんにデレデレじゃない?」
そんなことは、、、あるかもしれないな
「前からちょくちょくデレることはあったんですけどね。 昨日から先輩のデレが増えた気がします。 さっきもいきなり抱きついてきて、、、」
「あらまぁ! 零斗ったら!」
「誤解を招く言い方するんじゃねぇ!」
「でも抱きついてきたのは事実でしょう?」
グッ、、、
「、、、しゃーないだろ、さくらが、、、可愛すぎたんだから。」
言い訳がこれしか思いつかなかった
さくらも呆けたような顔でこちらを見てくる
「先輩って、懐に入られたら溺愛するタイプだったんですね。」
「嫌味か?」
「いえ、嬉しいんです。 先輩が私だけを見てくれてる、、、他の誰にも目移りしないんだって安心できるから。」
「、、、言われなくても、さくら以外の女子に気が向いたりなんかしないよ。 俺を本当に好きになってくれたのは、お前だけだ。」
「ん、『本当に』ってどういうこと? 零斗、あんた何かあったの?」
おっと、どうやって言い訳しようか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます