第49話
「お待たせしました、、、ってお姉ちゃん何してんの?」
「ん? さくらの彼氏クンの髪を整えてる。 髪質良かったからさ〜、なんかイジりたくなった。 美容師志望の
「あの、奈津橘さん。 さくらも来たのでそろそろ止めていただけると、、、」
「え〜ヤダ。 私たち弟いないんだよね。 カレシも同い年だし、こういうの憧れてたんだよ。 だから大人しくしなさい。」
「お姉ちゃん? もう花火が始まっちゃうから先輩を返して。」
「、、、」
あれ、先輩もそんな抵抗してない?
「お。 さくらの彼氏クンて一人っ子だから、もしかしてお姉ちゃんに憧れてたりしてるのカナ?」
「え、本当なんですか先輩⁉」
「、、、」
「大丈夫、男子は誰もが『お姉ちゃん』に憧れるもんなんだよ。 私はそういうの理解してるから大丈夫さ♪」
「いや、もう十分なんで、、、」
「と言いつつもそんな抵抗してないよね? ホラ、大人しく髪を整えさせなさい。」
「、、、」
な、なんてこった!
ライバルにお姉ちゃんが参戦してる、、、これはマズい
「ホラ先輩‼ 花火始めっちゃいますから!」
「ッ! おぉそうだな! それでは失礼します。」
「くぅ〜、流石にさくらには勝てないかぁ。」
彼氏がいるのに何を悔しそうな顔をしてるの!
ふん!
お姉ちゃんに先輩は渡しませんからね‼
部屋に入ると私はベッドに座り、先輩を床に正座させた
「、、、さて、私をほっぽってお姉ちゃんに甘えてたことに対する言い訳を聞いてあげますよ。 ホラホラ。」
「いや甘えてなんか、、、」
「でも抵抗してませんでしたよね?」
「ハハハ、、、」
まったくもう、、、ナンパから救けてくれた時は本当にカッコよかったのに、、、
「これはペナルティ案件ですね。 罰として私の部屋を褒めてください。」
陰キャの先輩にとって、初見の女子の部屋を褒めるというのは難題でしょう?
あたふたしてる先輩を見ながらニヤついてあげまs「良い家具だな。 壁の色とマッチしてて、配置も過ごしやすいようになってる。 お前が考えたのか?」
「え、えぇ。 まぁそうですけど。」
「良いセンスだと思う。」
お、思ったより真面目に褒めてくれて嬉しい、、、じゃなくて‼
「そんなことより、もう花火が始まっちゃいますよ! 早くこっちに来てください。」
「分かったから焦らせるな、、、っと。」
私と先輩はベッドの上に座り、その時を待ち続ける
なんとも言えない緊張感が漂う中、遂に一筋の光が昇った
その光は空高くで一瞬の停滞を見せた後、溜まったエネルギーを放つように華が広がる
ほんのり赤色を含んだ金色のそれは他の光を導き、続けて青、緑、オレンジの華を咲かせた
遅れて響いてきた大きな音が鼓膜を揺らし、見惚れていた状態から目を覚まさせた
花火が始まる
「、、、綺麗だな。」
「ここは『君の方が綺麗だよ、、、キリッ♪』って言うところですよ?」
「よし、汚い花火になって来い。」
「まだ死にたくないので嫌です。」
先輩とハッピーエンドを迎えるっていう夢を叶えてないからね
「あと私が花火になったならば、世界一美しくなりますから。」
「それは悪かった。」
まぁ軽口もそのくらいにして、私も先輩も暫く花火の美しさに引き込まれていった
神社の会場よりも遠い場所から観ることになってしまったけれど、先輩と本当の意味での二人きりで観ることが出来ていて嬉しい
「、、、」
「、、、」
花火で時折照らされる先輩の横顔が精悍で素敵で、花火がずっと咲いていれば良いのに、と思ってしまう
でも一瞬で消えてしまう儚い美しさに惹かれるのが花火だと思う、、、らしくもない事を考えてしまった
これが花火の魔法ってやつかもしれない
、、、取り留めなく考えている間にも花火はどんどん打ち上げられているが、次々と咲く花火が今までの思い出を想起させて、頭の中で蘇っていった
中学の時に先輩に出会って、好きになった
先輩を追いかけて来栖高校に入り、先輩に告白するが呆気なく玉砕
それでも諦めきれずに先輩をストーキングしてしまって、それから色々とあって結果的に仲が深まった
外堀埋めるために先輩を色んな人に紹介して、先輩のお母様にも会って、、、勉強を教えてもらうこともあったなぁ、、、
出会ってから1年、本格的につるむようになって僅か数ヶ月しか経っていないけれど、私は先輩と過ごした時間がとても幸せだった
願わくば更に深い仲になって、もっとずっと一緒に居たい
、、、最後の花火が上がるまで、もう少し時間がある
どれだけ祈っても、そこが枝分かれ
だからそれまでの間は、花火を楽しんでいよう、、、
「好きだ。」
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