第48話


 会場を離れ私の家に着いてから、5分経った


 そろそろさ、ウジウジしてる先輩にキレてもいいよね?


「早く入ってくださいよ。 覚悟決めるのに何分使ってるんですか。」


「陰キャにとって女子の家に入るなんてイベントは一大事なんだよ!」


「うわぁ、、、ザ・陰キャなコメントですね。」


 ナンパから救けてくれた時はカッコよかったのに、、、


「もう面倒なんで私入りますよ?」


「、、、頼む。」


「情けない先輩ですねぇ、、、ただいまー!」


 住み慣れた我が家へと帰宅


「し、失礼します。」


 遅れて先輩も入ると、お母さんが出迎えてくれた


「あら、おかえりなさい。 帰りが遅れるって言ってなかったっけ? それに浴衣も少し汚れてるみたいだし、、、何かあったのかしら?」


「諸事情あってね。 あ、こちら私の先輩の百瀬零斗さんです。」


「あらあら、さくらが男の子を連れてくるのなんて初めてじゃない?」


 たしかに、思えば男子を家に招くことは今まで無かった


「はじめまして、さくらの母の十束穂積です。」


「は、はじめまして。 先程ご紹介に預かりました、百瀬零斗です。」


「よろしくね。 立ち話もなんだし、リビングにどうぞ? 汚れた浴衣のままじゃダメだから、さくらは着替えてから来てね。 必要だったらお風呂も沸かしていいわよ。」


「はーい。」


 私は普段着に着替えるため、脱衣所へ向かった


「それじゃあ、百瀬くんはこちらへ。」


「あ、ありがとうございます。」




 浴衣を脱ぎながら、これからの作戦を考える


 今はおそらく、先輩は早く帰ることになった理由や浴衣が汚れた理由をお母さんに説明しているだろう


 お母さんやお姉ちゃんは優しいし、陰キャの先輩とも直ぐに仲良くなるだろうから、家族と先輩との関係は良好になるとして、、、


 次に、花火を見るために先輩を私の部屋に誘おう


 近くで見れないのは残念だけど、確実に二人っきりで見れるシチュエーションだ


 そして最後の花火が打ち上がったのを見届けて良い雰囲気にして、、、先輩が私に告白する!


 完璧な作戦だ‼


 あ、でも、、、


「でも、私の部屋、、、二人っきり、、、」


 もしかしたら、先輩がオオカミさんになったり、、、


 で、でも私がナンパに襲われかけたばかりだし、優しい先輩なら今は手を出さないよね⁉


 それに先輩はチキンだから直ぐには手を出さない!


 、、、絶対にとは言い切れないケド


 寧ろ普段はチキンな先輩が、恋人になった途端に肉食になったら、、、もしそうだとしたらギャップでキュンキュンする


 、、、一応、念の為、、、体を洗っておこう




 軽くシャワーを浴びてお風呂場から出ると、母さんがタオルを持ってきてくれた


 ありがたい


「結局シャワーを浴びたのね。」


「うん。」


「百瀬くんから大体の事情は聞いたわ。 ナンパに絡まれるなんて大変ねぇ。 誰に似たのかしら?」


「絶対に母さんの遺伝でしょ。」 


 この前モールに行った時にもナンパされてたし


「ともかく無事で良かったわ。 この後はあなたの部屋で花火を見る予定にしたのよね?」


「そうだけど、、、ダメかな?」


 母として、初めて会った男性と娘が部屋に二人っきりなのは駄目、と叱るかもしれない、、、と思ってたのに、帰ってきたのは予想外な言葉だった


「全然構わないわよ?」 


「え? そこは『母として、不健全なことは許さないわよ!』って言うところじゃないの?」


「娘をナンパから救けてくれた子を無下には出来ないわ。 それに彼から色々と話しを聞いたけれど、、、さくら、あなたやり過ぎよ?」


「は⁉ ちょ、ちょっと、先輩は何を話したの⁉」


「まず初めに彼をストーキング、その次に告白してフラれて、今は勉強の面倒を見てくれてるのよね?」


「全部話しちゃってる‼」


「彼が大好きなのよね?」


「その通りだけれども!」


「なら娘の恋路を応援するのは当然だわ。 まぁ百瀬くんも、『万が一のことはありませんから、ご安心ください。』って言ってたしね。」


 なんだ、、、なら体を洗った意味はあんまり無かったね


「まぁでもあなたの同意があれば問題ないと思ってるわよ? 娘の恋に口出しするのはウザがられるってテレビでも言ってたし、あなたが選んだ人なら何も言わないわ。」


「そっか。」


 なんというか、、、いいお母さんだな、と思った



「納得するのはいいけど、早く着替えないと花火始まっちゃうわよ?」


「ッ⁉ ヤバい早く着替えないとぉ!」

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