第47話
「、、、そう言えば百瀬先輩。」
「どうした十束後輩。」
「私を救けるときに、『俺のカノジョ』って言ってましたよね。」
「ッ! それは、運営にカノジョを救けてほしいって頼んだほうが急いでくれると思ったんだよ、、、」
「本当ですかぁ?」
ホントは心からの言葉だったり?
「うるっせ。 そんな目をする奴には、コレやらないぞ。」
先輩は持っていた袋からあるものを取り出す
「それは、、、イチゴ飴ってやつですか?」
りんご飴の亜種であり、少し前に流行っていたやつだ
「あぁ。 席を外してコレを買いに行ってた。」
「どうして急に、、、」
「ホラ、あの時お前めっちゃ落ち込んでただろ? これでも食べて元気出せって言うつもりだった。」
「でも何故イチゴなんですか? りんご飴もあったでしょうに。」
イチゴは好物だけども
「だってお前ホラ、この前アイスクリーム食べに行こうとしたときに、バニラの次はイチゴが好きって言ってたから。」
目に見えて先輩が照れている
「、、、ふ〜ん?」
そんなちょっとしたことでも覚えていてくれているんですね、、、
「な、なんだよ。 お前だって、俺の2番目に好きなアイスは覚えてるだろ?」
「さぁて? どうだったでしょうかねぇ?」
「ウザい。 お前にはイチゴ飴やらねぇ、全部俺が食べるからな!」
「嘘です先輩が好きなのは抹茶! だからイチゴ飴プリーズ‼」
「手のひら返しが凄いわ! 答えたから譲るけども!」
「やった! ありがとうございます先輩‼」
カリッ
「甘くて美味しいです!」
「そうか。 なら買ってよかったよ。」
イチゴ飴を味わう私を見る先輩の優しい表情に、私はキュンとする
甘いと感じたのは、くちのなかだけではなかった
私が食べ終えたと同時に、先輩は運営委員さんへ話をつけに行った
「落ち着いたようなので、そろそろお暇します。」
「分かりました。 しかし、またあのような男たちが現れないとは限りませんので、お気をつけください。」
「えぇ、勿論です。 人目のあるところを通って帰りますよ。」
え、、、帰る?
最後の花火が打ち上がる時間が、8時ちょうど
今の時間は、、、7時
帰るにはまだ早い
浮かんだ疑問を直ぐに訊くことは出来なかった
「色々とお世話になりました。 また来年も来ますね。」
「そう言っていただけるのならば幸いです。 次こそは、しっかりと楽しんでいただけるように我々も努力します。」
「ありがとうございます。 では、さようなら。」
「あっ、置いてかないでくださいよ先輩!」
「ではお気をつけて!」
こうして私たちは、運営のテントを後にした
既に7時を回っているというのに、祭りの参加者が少なくなる気配がない
それほど花火が有名で人気であり、また全員が楽しみにしているのだろう
なのにその花火を見ようとせずに帰ろうとしている先輩の背中を追いかけた
はぐれないように遅いペースで歩いてくれているが、デレの期間は終了したのか、さっきみたいに手を繋ごうとはしてくれなくて、、、少しムッとする
というか、この方向だと本当にお祭り会場の出入り口なんだけど⁉
確かに色々あったけれども、このまま解散なんですか⁉
「ちょっと先輩。 本当にこのまま帰るんですか?」
人混みを抜け一息ついた時を期に、疑問や質問をぶつける
振り返り真剣な表情で先輩は言う
「あんなことがあった後だから、まずはお前の安全を家に送り届けたい。」
「私なら大丈夫ですよ? だって先輩が一緒にいてくれるんですから。」
「ダメだ。 帰りは人目の多いところを通るつもりだが、また絡まれたりしたら、あの時とは違って人を呼ぶことが出来ない状況になるかもしれないだろ。」
「でも私は、先輩と花火を見たいです、、、」
せっかく先輩が誘ってくれた夏祭りなのだから
「可愛い後輩の我儘、聞いてくれますか?」
先輩は仰ぎ暫く悩んでいたが、何か決意したように尋ねてきた
「おい十束後輩。」
「どうしましたか百瀬先輩。」
「お前の家から、花火は見えるか?」
「はい、私の部屋の窓からちょうど、、、まさか⁉」
「そうだ、、、お前の家へ御挨拶しに行くことにした。」
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