第41話


「甘くて良いな、このアイス。」


「人の金で食べるアイスクリームは美味しいですか?」


「最高だな。」


「先輩の行動は最低ですよ。 後輩に、しかも女子に奢らせるとか、、、」


「何を言うか。 あんな大きい声で肯定の返事をくれたのに。」


「だからあれは勢いで、、、って何回言わせるんですかぁ!」




 今は、この前雪先輩とも一緒に行ったアイス店に来ている


 先輩の巧妙な罠に嵌められた私は、先輩に奢らせるつもりがまさか逆に奢る羽目になったのだ!


 この恨み、どのようにして晴らしてくれようか、、、と思っていたら、先輩が一枚の広告をズイッと見せてきた


 屋台がズラッと広がり、中心で花開く大きな花火が特に目を引く写真が載っている広告だ


「これって、夏祭りの?」


「あぁ。 奢られっぱなしなのはダメだろうから、テストのご褒美も兼ねて一緒に行かないか? 屋台を奢ってやる。」


「えっ⁉︎」


 せ、せせ先輩が私を夏祭りに誘った?


 あの根暗で自他共に認める陰キャな先輩が⁉︎


 私からじゃなくて先輩から‼︎


 しかもこの夏祭りで打ち上げられる花火は特別で、最後の大きな花火を2人きりで見ると、それが恋愛であれ友愛であれ、固い縁で結ばれるという言い伝えがあるのだ


 いくら先輩でも、流石にこの有名な言い伝えは知っているだろうから、、、


 これって、だよね、、、


「こんなんじゃ満足しないか?」


「い、いえいえ! 是非とも御一緒に行きとうございます!」


「口調が変になってるぞー。 まぁいいや。 あと帰りが少し遅くなるかもしれないが、家的に大丈夫か?」


 そ、そんな、、、まさか、、、


「先輩、私を帰らさないだなんて♡ ホテルにでも連れ込む気ですか?」


「この話、無かったことにしようか。」


 先輩の目が急速に冷えて行った、、、この視線でアイスクリームを作れるレベルに、、、


「嘘です調子に乗りましたごめんなさい! だから絶対に夏祭りに行きましょう!」


「まったくコイツは、、、単に花火を最後まで観たいだけだからな? 変に勘違いするなよ。」


 最後の花火を一緒に観たい、、、これは確定ですね


 遂に私の努力が実を結び、先輩が私のことを好きになったのだ!


 あとは夏祭りの日まで待ち、ハッピーエンドを迎えるだけ



「ところで先輩。」


「どうした十束後輩。」


「私の浴衣、、、見たいですか?」


 美少女の浴衣、この言葉に反応しない男子はいないはず!


 さぁさぁ私の魅力に堕ちた先輩よ、素直に見たいと言えば、浴衣で行ってあげないことも無いかもですよ?


「別に私服でも浴衣でも、どちらでもいいぞ?」


「え?」


 おかしいなぁー、ここは先輩が『見たい』って言うシーンではないのですか?


「いやなんでお前が疑問形なんだよ。 あぁなるほど、どうせならお互いに揃えようってことか? 片方私服で片方浴衣だったら不揃いだもんな。」


「あはは、そうです! やはり浴衣で揃えた方が風流だと思うんですよね!」


 ここで否定してしまっては、先輩のデレを引き出そうとしたことがバレてしまう


 先輩のあほぅ、、、なんでこんな時だけ鈍すぎなんですかぁ、、、いつもは変なところで鋭いくせに、、、


「お前が風流を語るか、、、夏風邪か?」


「風邪なんか引いてませんよ! 私のことをナメすぎです!」


 この馬鹿先輩、、、私がどんな気持ちで浴衣を見たいか聞いたと思ってるんですか!


 こうなったら当日に凄い綺麗に着飾って、私の魅力にドギマギしてる先輩を見て笑ってやる


 私への告白と、私の浴衣、、、2つの意味で覚悟しててくださいよ?

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