第38話
「希ちゃん、どうしよう、、、テストだよ、、、」
「知ってる。」
昼休み、希ちゃんが勉強をする手を止めずに軽い返事をする
「先輩を堕とすためのプランが、、、」
もうだめだぁ、おしまいだぁ、、、
「あ、百瀬さんからメールだ。」
「メール、、、え? な、なんで希ちゃんが先輩とメールしてるの⁉」
「初めて会った時に交換したからね。 時々話したりしてるよ? 勉強で分かんなくなったところとかを聞いたり。」
「え、私より仲良くなってない?」
「気のせいよ。 というかさくらって勉強苦手だったけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だったらこんなに焦ってないよ、、、」
私は勉強が苦手だ
先輩と同じ高校を目指すために高校受験では死にものぐるいで勉強して、なんとか来栖高校に合格は出来たけど、、、勉強が苦手なのは全く変わってない
入学直後にあったテストでは、そりゃあ散々な結果だった
ちなみに、来栖高校では平均点の半分以下の点数を赤点範囲とし、赤点の生徒にはしっかりと補習が課される
入学直後のテストは補習が免除になってたけど、、、国語、数学、英語の三教科の内、ニ教科で赤点だった、、、数学と英語を、、、
「ホントにどうしようかな、、、」
「百瀬先輩に教えてもらえば?」
「先輩って頭良いの?」
「めっちゃ頭良い。 たまに課題の写真を送って解説を返してもらってるんだけど、凄く解りやすいんだよね。 推測だけど、、、学年一桁には入ってるんじゃないかな?」
「えっ、先輩ってそんなに頭良かったんだ、、、知らなかった。」
来栖高校は一つの学年に300人、一クラス50人の6クラスで構成されている
来栖高校は県内有数の進学校であり、テストで学年10位以内に入っていれば、関東の有名な大学にも確実に入れると言われている
近年のグローバル化に伴い、2年間に1人は海外の大学に進む人もいるらしい
つまり、先輩はそのレベルに達しているということだ
「中学は一緒だったんでしょ? ずっと気づかなかったの?」
「成績とか、デリケートな話に踏み込むのはちょっと、、、ね? 進学先は頑張って聞けたけど、、、」
「真面目だなぁ。 まぁとにかく、百瀬さんに教えてもらえばいいじゃない。 場所が準備できたら私にも教えて? 私も百瀬さんと勉強したいし。」
「、、、1番のライバルは希ちゃんだと思う。」
先輩と親密そうだし、、、妬ましい
友達に抱いてはいけない感情だと分かってはいるのだけど、胸の奥で湧き上がる嫉妬は、そんな自覚など気にせず突き進んでいる
、、、ダメダメ!
この調子だと私がヤンデレルートに入ってしまう
私が望むのは、全員に祝福されたハッピーエンド
その道程の上にトラブルなどいらないのだ
「、、、」
希ちゃんはペンの動きを止め、私の顔をじーっと見た
「ど、どうしたの?」
「、、、いや、さくらの恋路は大変だなぁって。」
「どういう意味カナ?」
「でも大丈夫。 『先輩が好き』ってさくらの気持ちがある限り、さくらは負けないよ。」
「友達に想い人を獲られそうなんですが。」
「私は私の夢のために、百瀬さんに力を借りてるだけ。 だから安心して?」
「、、、うん。」
「それに、百瀬さんとの勉強会を開く許可を取って、さくらは勉強しながら百瀬さんにアプローチすれば、このテストも良い機会だと思わない?」
「そうだね! ありがと、希ちゃん。」
早速先輩へ突撃し、勉強がヤバいという事情を説明した後、勉強を教えてほしいと頼んだ
初めは先輩が断るかと思っていたけど、なんと直ぐに頷いてくれた
拍子抜けして暫く固まってしまっていたけれど、とにかく先輩に勉強を教えてもらう約束を取れた
勉強をしながら先輩を堕とせる、、、まさに完璧な作戦!
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