第四章

第37話


『あの子、学校でどんな感じかしら? あまり高校でのことを話さないから、時々不安になっちゃうことがあって、、、』


『私は後輩なので詳しくは知りません。 ですが私たちと話している時の先輩は、とても楽しそうに思えました。』


『それは私から見ても思ったわ。 あの写真の中の笑顔、最後に見たのはいつぶりかしら、、、』


『、、、失礼ですが、先輩のお父様は?』


『別れたわ。 零斗が小さい頃にね。』


『ッ⁉ それは、、、』


『気にしないで、もう過ぎたことだから、、、でも、零斗に半分の愛情しか与えられなかったことは悲しいわ。 別の女を作って出ていくような男からの愛情でも、零斗にとっては父親からの愛情でしょうから、、、重い話を聞かせてしまってごめんなさいね? 初めて会った女の子に話すような内容じゃなかったわ。』


『いえ、先輩に関することですから。 それに先輩は自分から話さないでしょうし、お母様の口から聞けたのは嬉しく思います。』


『、、、さくらちゃんって、零斗のこと好きなの? 女として。』


『はい。 大好きです。』


『そう。 あの子を好いてくれる子がいるのね。』


『、、、』


『今の2人の関係は、どんな感じなのかしら?』


『私が告白して、先輩にフラれました。』


『ッ‼ あの子ったらもう、、、それでもあなたは零斗と仲良くしてくれているのね。 嬉しいけど、さくらちゃんは大丈夫なの? 振り向いてくれない相手の隣りにいるのは、想像以上に耐え難いことだと思うわ。』


『いえ、先輩に事情がありましたし、、、』


『事情?』


『あっ』


『、、、訊きたいけど、あなたの様子を見るに訊かない方が良さそうね、、、でもこれだけは話してちょうだい。 それはあの子にとって悪いこと?』


『あの先輩の行動は、良いこととはあまり言えません。 あれは感情を爆発させても文句を言えない程のことでしたから、、、』


『、、、』


『でも、理由は何よりも優しかったです。』


『、、、零斗らしいわね。 あの父親の息子だから女性関係で問題を起こさないか不安だったけど、さくらちゃんが隣に居てくれるのなら安心できるわ。』


『和恵さん、、、』


『元旦那と別れてから、もう裏切られないように人を見る目だけは鍛えたの。 だからこの短い時間でも、あなたが悪い子じゃないってことは分かったわ、、、最後に決めるのは零斗だけど、母親ではなく1人の女としてあなたのことを応援したい。』


『、、、お母様から応援していただけるのはありがたいのですが、やはり心から認められた後に先輩と一緒になりたいです。 その手始めとして、まずは私の女子力をアピールします!』


『うふふ。 なら夜御飯の定番、唐揚げを作ってもらおうかしら?』


『バッチコイです!』






「いやぁ先輩のお母様って、良い人だったなぁ。」


 先輩のお宅に訪問し、先輩に家まで送ってもらった後、のんびりお風呂に入りながら今日あったことを考えていた


「とにかく、これで外堀を埋めれた。 後は先輩に私の家へ来てもらうだけ、、、なんだけど、先輩なら拒否しそうなんだよねぇ。」


 それに今回の訪問で、先輩は私を怪しんでいるはず


 突然のお誘いはラッキーだったけど、あれは和恵さんのため、っていう名目だったからなぁ、、、それなら先輩が逃げられない状況を作れば良いのでは?


 例えば、私のお母さんが先輩に会ってみたいらしいっていう口実なら、、、


 うん、我ながら完璧な作戦だ


 先輩の連絡先はゲットしてるし、いつものようにグイグイ誘えば、先輩は文句を言いながらも付き合ってくれる筈だ




 中学時代は日和ってしまって、告白も、一緒に遊びに行くことすら出来なかった


 でも今は、攻めまくる


「先輩を堕とすためのプランは完璧。 攻めると決めたらとことん攻めて、私に夢中にさせてやる!」











〈翌日、高校の十束さくらの教室にて〉


「え〜来週からテスト期間に入ります。 高校で初めての期末ですが、しっかりと勉強した上で臨んでください。」


 え?


 私の完璧な計画は⁉

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