第36話
「今日は楽しかったです!」
「、、、そうか、楽しんでくれて何よりだよ。」
「先輩? 遠い目をしていますが大丈夫ですか?」
「オレ、ダイジョウブ、キニシナイデ。」
さくらを家に送る帰り道
今日起きた出来事を思い返しながら、俺は東から昇る月を見つめていた
そんな情けない先輩に呆れたように、悲しそうに、さくらが尋ねてきた
「、、、先輩は、私がお母様と仲を深めるのが嫌だったんですか?」
そんな訊き方は、ズルいだろ、、、
「嫌じゃない。 でも、なんというか、言葉にしづらいんだが、、、慣れてなかった。」
「何に、ですか?」
「母さんと女子が話す様子を見ることに。 今まで友達を家に呼んだことなんか一度も無かったし、ましてカノジョなんか出来たことがなかったからな。」
「先輩、訊いてごめんなさい、、、これからは私が何度も来ますからね?」
「その憐れみの目をヤメロ、、、目をウルウルさせるんじゃねぇ!」
別にそのことに対して悲しいとか思ってないからな⁉
「まぁだからお前を変に気遣わせてしまったなら、謝るよ。 でも俺はさくらが母さんと仲良くなったことを、決して悪いことだったとは思わない。 母さんが良い笑顔だったからな。」
「マザコンですか?」
「せめて母親想いの息子だと考えてくれ、、、」
一般的な母親に向ける情と比べたら多少親密なのは自覚してるから、否めないが
俺のことよりさくらの方が心配だ
「もう来ることに対しては拒まないが、お前こそ大丈夫なのかよ? JKの1年が男子高校生の家に何度も来てたら、絶対に変な噂が立つだろ。」
家族同士の関係もないのに女子が男子の家に入り浸るのは、どうなんだ⁇
「何故私が気にすると思ったんですか?」
「、、、」
「むぅ。」
「な、なんだよ。」
急に頬を膨らませてむくれてきたんだが?
「もう忘れちゃったんですか? 私は、先輩のことが、大好きなんです‼」
「知ってる。」
「だから先輩との関係を噂されてもイヤじゃないですし、寧ろウェルカムですね!」
「全て計算の内だったと言うのか、、、」
「既成事実、というやつですよ。」
「外堀結構埋めていってないか?」
「希ちゃんにお母様、、、まだ2人だけですけどね。 いつかは本丸にまで攻めてみせます!」
「俺の交友関係の狭さを考えると、既に天守まで到達してるかもしれん。」
「さぁ、降伏宣言するなら今のうちですよ?」
「徹底抗戦する予定でございます。 白旗は決して掲げない!」
「ならば先輩を骨の髄まで私に夢中にさせてみせます‼︎」
「それも悪くないかもな? 君の料理はそれぐらい美味しかった。」
「、、、ホント、急にデレるのズルいです。」
またまた顔を赤くするさくら
事実を言うことがデレになるのか、、、というかコイツ、反撃に弱すぎだろ
「でも、嬉しいです。 褒めてくれてありがとうございます。」
感謝を述べるさくらの笑顔は可愛らしく感じられ、その周囲にはさくらの名の通り、桜色の空気が漂っていた
不意に、心臓が跳ね上がった
さくらを家に送り届けた後、俺は夜道を1人で歩いていた
その間はボーっとしていたのだが、何故か、感謝を述べた時の後輩の笑顔を何度も思い返した
それをキッカケに、その後輩のことを無理にでも考えさせられた
友達に好きになった相手を紹介し、毎朝ストーキングし、遂には相手の母親に会いに来た、、、さくらの行動は、既に『嘘告』に収まらないレベルになっている
もう、信じてもいいんじゃないか?
さくらの好意が本物だと、信じてもいいんじゃないか?
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