第34話


 さくらを母さんに会わせる日


 門の前で合流した俺達は、一緒に向かうことにした



「今更なんだが、九重も呼んだほうがよかったのでは?」


「一応、私から雪先輩に、先輩の家にお伺いすることを伝えました。 その時に誘ったのですが、どうも先輩のお母様に会わせる顔がないとのことで、、、」


「本当に気にしなくてもいいんだがなぁ、、、母さんにも俺に起こったアレコレを話してないし。」


「え、話してなかったんですか⁉」


「当然だとも。 身内に嘘告のことを話すわけないだろ?」


「、、、優しいなぁ。」


「そんなことないぞ、恥ずかしくて言えなかったって気持ちも半分あるし。」


 ちなみにもう半分は、母さんに心配させたくなかったからだ


 だから変に俺が優しいなんて印象を持ってもらっても困る


「なら、そういうことにしておいてあげましょう、、、あ、此処ですね。」


 話している間に家に着いたようだ


「最近はほとんど毎日見てますから、すぐに分かりましたよ。」


「改めて君がストーカーなんだってことを実感したよ、、、住んでる俺より早く気づくって、、、」




「それでは早速お邪魔しちゃいましょう! こんにちはー‼」


「少しは遠慮ってものをだな、、、まぁ今更か。 ただいま、母さん。 この前言ってた友達を連れてきたよ。」


 ドアを開けると、廊下に置いてあるインテリアを動かしている母さんがいた


「あら、いらっしゃい。 丁度お迎えする準備が整ったところなの。 ささ、上がってちょうだい?」


 まるでテンプレのようなお迎えの挨拶だな、、、ここ数日の間、時折考え込むような姿を何度か見かけたが、もしかしなくてもずっと挨拶を考えていたのか?


 だが、あまりにも変な挨拶になるより典型的な挨拶の方が良いし、寧ろ変な挨拶になってなくてよかった、、、もし奇抜すぎる服装で現れていたとしたら、さくらを連れてその場から逃走していただろう


 そんな事にならなくてよかった、、、




 さくらと俺は隣同士の席に着き、母さんは向かい側の席に座る


 オイちょっと待ってくれ、これっていかにもな『御挨拶』じゃないのか⁉


「ふふ、まるで御挨拶してるみたいね?」


「わざわざ言わなくていいから。」


「はじめまして、お母様。 十束さくらと言います。 今日は息子さんを貰いに参りました。」


「お前も乗らなくていいから!」


「あらあら、もう婚約者がいるだなんて。 しかも婿入り?」


 ダメだ、さくらと母さんは会わせちゃいけない人たちだった、、、二人とも『ふふふ』って妖しい笑みを浮かべてるし、、、



「失礼しました、正しくは零斗さんの後輩です。 先輩にはいつもお世話になっています。」


 あ、名前覚えてくれてるんだな


 あと急に真面目になられると、高低差が凄い


「こちらこそ、零斗と仲良くしてくださってありがとうございます。 零斗の母の、百瀬和恵かずえです。 アイスクリームを食べに行かれた時の写真を見させてもらいましたが、零斗が楽しそうにしていて、、、私も嬉しくなりました。」


「そんな! 私こそ先輩と遊べて嬉しいですし、先輩と話すのも楽しいですし。」


「そういえば、さくらちゃんと零斗はいつ頃に出会ったのかしら?」


「中学の頃ですね。 同じ図書委員会だったので、そこから知り合いました。」



「、、、お茶菓子の追加を買ってくる。」


 なんか2人だけの空間出来上がってるし、俺は全く会話に混ざれてないし、、、


 俺は知っている、こういう場面では男は早めに退散したほうが良いことを


 こんな女子(?)トークが花を咲かせている所に居られるか!


 俺はコンビニに行かせてもらう‼

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