第29話


 笑顔の後に、ふと不思議そうな顔をするさくら


「何が疑問なんだ?」


「本当に名前呼びしてくれるとは思っていなかったものですから。 いつもの様に軽くあしらわれるだけかと、、、どんな心境の変化ですか?」


 うっ、そこ突くか、、、


「あ〜なんだ、その、、、十束は俺に好意を何度も伝えてくれたわけだが。」


「先輩、名前呼びでオナシャス!」


「、、、さくらが好意を伝えてくれたが、俺はかたくなに信じようとしなかったろ?」


「はい、先輩に事情があったことは知っています。」


「それで俺もお前も納得してる、、、そう思ってたんだがな。 万丈と話して、改めてお前が俺に好意を寄せてくれている可能性が高いことを知ったんだよ。」


「希ちゃんナイス‼」


「今はシリアスな雰囲気だから自重しようか⁉」


 せっかく人が真面目に話してんのにコイツは、、、ガッツポーズをするんじゃない



「とにかくだ、頑なに好意を信じようとしなかったんだが、そのことでお前が傷ついたことを今更実感したんだよ。」


「ホントに今更ですね。」


「実感したわけで! それに九重や万丈と知り合えたのは、全部お前のおかげなんだ。 あの雰囲気も中々悪くない。」


「私と話してる時より楽しそうにしてませんでしたか?」


 忘れたことは後で謝るから、そのジト目をやめなさい



「まぁ、だからお前の好意をんだよ。」


とはまだ言ってくれないんですね。」


「あぁ、まだだ。 だからお前のことをもっと知りたい。 好きな物や好きな事とか教えてほしい、、、頼めるか?」


 俺がフッたことでお前が傷ついたのは知っている


 さくらの好意に応えられるか分からない、、、だがその上で、仲を深めることをこちらも望んでいる


 これはそういう意味をあんに含めている



 彼女は少し上を仰ぎ、考える素振りを見せた後に、俺の目を真っ直ぐに見た


「、、、お互い似た者同士ですね。 私も先輩も相手に引け目を感じている、、、それでも向き合おうとしているところが。」


「、、、だな。」


「それで先輩への答えですが、勿論喜んでお引き受けします。 私のことを沢山教えてあげます、、、先輩のことも教えて下さい。 そしてお互いのことをもっと知り合いましょう。」


「お前にはそれが足りなかったんだろうよ、、、敵に塩を送るみたいなアドバイスだが。」


「誰が敵ですか‼」


「朝はラスボスって言ってただろ?」


「懐かしいネタを、、、ってそこまで懐かしくなかったぁ! てか覚えてる先輩凄いですね。」


「、、、言ったろ? お前と話すのは嫌いじゃないんだ。 楽しいことは記憶に残りやすいもんだし。」


 恥ずかしいこと言わせんなっての、、、だがそれを見逃すほどこの後輩は甘くない


「顔真っ赤ですね。 もしかしなくても照れてます? 決め台詞キメちゃって照れちゃってるんですか⁉」


「ウザい。」


「急に淡白‼ でも先輩の珍しいデレを見れたのでプラマイゼロですね。」


「デレてねぇよ。 やっぱ前言撤回で。」


「ダメですもう海馬に刻みつけちゃいましたから!」


 、、、やっぱ楽しいよ




「ところで先輩は『恋人関係でもない女性を名前で呼ぶ勇気はない』って言っていました。 そして名前呼びしてくれた、、、これはそういうことなのでは?」


「違うから勘違いすんなよ?」


「あぁ〜すみません謝りますから名前呼びで!」




 、、、たまにウザいがな

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