嘘告に愛されてしまった俺、唯一本気で告白してくれた子をフッた結果、ストーキングされることになった

第23話

　雪先輩はご用事があるとのことで、話し終えたら早速帰ってしまった

　だがおそらく、私を気遣って先輩とふたりきりにさせてくれたのだろう

　空き教室には2人、私と百瀬先輩だけが残されていた

　差し込む陽の光は橙色になり、部活の練習に励む声も少なくなっている

「さて、これで一段落だな。」

「ですね。　でも雪先輩の件は私が勝手に引き起こしたことですし、、、」

「まぁ確かにな。」

　結果的に丸く収まったとはいえ、私が勝手に動かなければ不安になる必要も無かったのだ

「すみません先輩、、、」

「なんでお前が謝るんだよ。　それに謝るのは俺の方だ。」

「何故ですか？　先輩は何も悪いことしてないです。」

「九重から聞いた。　俺がフッたせいで十束が傷ついていたって。」

　そのことも聞かされたらしい

　でも私は先輩が悪いなんて思ってない

「それは、先輩には事情があって、、、」

「あぁ。　だがな、フッたことでお前を傷つけたっていう事実は無くならないんだよ。　結局の所、俺と九重は似たようなもんだ。」

　周りに強制されて嘘の告白でフッた雪先輩

　傷つき拗らせた結果、話を真面目に聞かずに私をフッた百瀬先輩

　事情や過程は違えど、結果は類似している

　先輩は少し俯き、続けた

「あの時の俺がもっとお前に真摯に対応していれば、、、」

　百瀬先輩、、、

「今の先輩、超ダサいです。」

「ッ！」

「何をウジウジと考えてるんですか？　先輩も言ったじゃないですか、事実は無くならないって。　だから先輩が私をフッたっていう事実は無くならないんです。　拗らせるだけでなくタラレバまで話し始めたらキリないですよ。」

「でもお前は、それで良いのか？」

「良くないに決まってるでしょ。」

「ッ⁉」

「正直言って、早く先輩を私の虜にしてハッピーエンドの幸せルートに入りたいです。」

　今回の件も、これがきっかけで先輩のトラウマを克服できるのではないか、という下心があったのも否定できない

「残念でしたね先輩、しつこい後輩に好きになられて。　私のしつこさは、、、某カーレースゲームの赤い甲羅レベルですよ？」

「それはしつこすぎるだろ‼　お前は自動ホーミング機能を搭載しているのか⁉」

「なので先輩の跡をつけるのもお手の物です！」

「やかましいわ。」

　、、、うん、やっぱこれだよね

「フフッ、やっぱ私たちはコレが一番ですよ。　悩むのは似合いません。」

「そうだな。　何か吹っ切れた気がするよ。」

「ということで「でもお前と付き合えない。」

「なんでですかぁ〜」

　この流れと雰囲気ならイケると思ったんだけど

　先輩は嘆息し、何かに怯えるような様子で言った

「この際だから言うが、上げて下げられるのが、、、信じた好意に裏切られるのがまだ怖い。　十束の好意に応えることを恐れてるんだよ。」

　ハッキリ言いましたね、、、しかしこれは先輩が私を信用してくれているからこそ弱さの片鱗を見せてくれているのだと、私は知っている

「幻滅したか？」　

「幻滅するはずないでしょう？　それくらいで幻滅してたらストーキングなんかしてないです。」

「だよな。」

「先輩が信じてくれるまで私は想いを伝え続けます。　絶対に先輩を堕（お）としてみせますから♡」

　ガラじゃないと分かっていたけれど、慣れないウィンクをしてみた

　千歳先輩みたいに上手に出来ていなくて不格好だろうし、何より私に似合ってない

　急に羞恥心が湧いてきた、、、

「なんで君が顔を赤くするんだよ、、、」

「だって絶対不格好だったでしょ？」

　うぅ、恥ずかしいです

「いや、不本意だが、、、少しドキッとしたよ。」

　視線を横に逸らす先輩の横顔は、ほんの僅かだったが、朱色に染まっていた

　染料は私か場の空気かは分からないけれど、これはチャンスです！

「ッ‼　あれ、先輩ったらもう私の虜になっちゃってるんですか？　か〜わい〜♪」

「うるっせぇまだ虜になんかなってねえよ！」

「まだってことは将来的にそうなるんですね？」

「、、、」

「あっちょ黙って帰らないでくださいよ〜」

　偽りの好意を何度もぶつけられ拗らせた結果、私の想いを信じれずに私をフッた百瀬先輩

　百瀬先輩にフラれたことが納得できなくて、ストーキングしてしまった後輩（わたし）

　歪な関係で、最初はどうなるかと不安になってたけど、、、

　これからも楽しい日々を過ごせそうだ

　そして絶対に堕（お）としてみせるから覚えておいてくださいね、先輩♡