第12話



「分かった! 少しは信じるから荒ぶるのを止めろ!」


「ようやっと信じてくれましたか! というコトで、付き合ってください!」


「断る。 お前のコクハクを信用できない。」


 それとこれとは話が別だ


 コイツ十束さくらのことは信用したが、コクハクを信用したとは言ってない


「、、、百瀬先輩は、どうして私の告白を信じてくれないんですか?」


「ッ! それは、、、」


「私のことも忘れてましたし、、、高校で何かあったんですか? あったのなら話してください。 何があろうと私は笑いませんし、まして馬鹿にしたりなんか以ての外です。 、、、ダメ、ですか?」


「ッ⁉」



 俺は今まで、嘘告のことを誰にも話さなかった


 話しても信じてくれない、話したらフラれ損になる、というかそもそも話せる相手がいなかった


 今でも十束のコクハクは信用できない、でも、十束のことは信用できるから、、、


 話したら信じてくれるかもしれないし、十束は内緒にしてくれるだろうし、話し相手になってくれるのなら、、、


「本当に、笑わないか? 信じるか?」


「無論です。」


「、、、実は、、、」


 こうして俺は、初めて人に嘘告のことを話したのだった




 話している途中、十束が震えていた


 やっぱ可笑しくて笑ってんのかね


「なんなんですかその話は‼ どうして先輩は平気でいられるんですか⁉ 嘘の告白なんか巫山戯ふざけてますよ!」


 と思ってたら爆発し、机を叩いて立ち上がった


「同情してくれるのは嬉しいが落ち着け。 黙っていようと決めたのは俺の意思なんだから。」


「だからって、、、そんな人たちのために抱え込むなんて、、、チョロすぎるなんてもんじゃないですよぉ、、、」


「ちょっ、なんでお前が泣く⁉」


「グスッ、、、グスッ、、、先輩の馬鹿ぁ、、、」


「さり気なく罵られた気がするんだが、まぁ、その、なんだ? 代わりに怒ってくれて、ありがとうな。」


 もう嘘告されても何も感じないし、なんとも思わない


 それでも、自分に降り掛かった理不尽を怒ってくれる人がいてくれて、嬉しいよ




 泣いていた十束が落ち着き、ふと部屋の中を見渡した


 差し込んでいた夕日は薄くなり、代わりに電灯の明かりが目立ってきた


「、、、もう日が暮れちゃいますね。」


「だな。 そろそろ帰ろうか。 っと、そうだ。 これが1番訊きたかったことなんだが。」


「何でしょうか。 今ならスリーサイズでも何でも答えちゃいます。」


 なんだ元気そうじゃないか、よし無視しよう


「信じたわけじゃないが、仮に君が俺のことを好きだとしたら、何処を好きになったんだ?」


「あれスルーですか? まぁいいです。 それで百瀬先輩の何処を好きになったかですって? そんなの決まってます。」


 十束はドアの元へ駆け寄り、くるりと一回転してこちらを向き、まるでアイドルのようにこちらを指差した


「そのチョロい優しいところですよ♡」


「、、、ハハッ! なんだよ、それ。」
















「、、、帰りはストーキングしなくても良いんだぞ?」


「もう流石にしませんよ‼、、、多分。」


「そこは言い切ってくれ頼むから。」

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