第五章 日記編

夕雫の日記と託された思い①

僕がまたもや記憶を飛ばしてしまった後、前に近くに住んでいて偶然家の跡地に戻ってきていたご夫婦によって病院に運び込まれたのだが、その後医師たちの努力もむなしく息を引き取ってしまった

っと、そんなことを姉たちから後々に聞いた。なんせ俺その後一週間ほど寝たままで生死のはざまをさまよっていたらしい。

なので、彼女の最後の言葉も姿も何も分からなかった。しかし、最後の様子は皆が思っていたような雰囲気ではなかったというのである。それは…

『私が伝えたいことはから。彼が意識を戻したら聞いてみて』と言って最後に白雨をちらりと見、姉弟で目くばせをした後静かに目を閉じたらしい。

しかしながら、困ったことに俺は何一つとして夕雫が言っていたに心当たりは全くと言っていいほどない。

でも、夕雫からしてみれば何かを俺に託したということらしい。

なんだろ?何を託されたことになっているんだ?


そんなことで、ここ一週間ほど考えに考えを巡らせて見たが全くと言っていいほど分からなかった。よし、仕方ない。できれば使いたくなかった最終手段実行だ。

ということで、今まではほとんど関わらなかったけど今は話さざる負えない状態になってしまった。夕雫の弟で、僕の妹の華梨の彼氏らしき役回りである白雨と改めましてッて感じで話に行ってきますか。

「白雨ー?いるか?」声をかけてみるが返事がない。どっか行っているのか?

まぁ、お邪魔しますよっと。結構整理されているなぁ。兄貴の部屋とは見比べにならんな。

ってこれはどうでもいい!「白雨、早よこーい!」思わず口から出てしまった。

「う…ん?令央…さん?僕なら....ここにいますよ?」とどこからともなく白雨の声がした。寝ていたのか、声が少しかすれている。

どこだ?視線をさまよわせてみるが…いやいや、居らんやろ!

「どこ見てるんですか?ここですよ」と声をしたのは真っ正面!ちょっと暗いから気が付かなかったのかな?まぁいいや。

「なぁ、白雨。ちょっと聞きたいことがーーー」

「お姉ちゃんが言ってた託したってやつのことですか?それなら、これですよ。後で令央兄さんに渡しておいてほしいって言われてたんです。自分で渡したくないからって」

と言い差し出してきたのは一冊の本であった。

これが?何なんだ?にしてもどっかで見たことが在るような無いような?

うーんと、ああ!あいつが入院していた時に拾った奴じゃん?

何でそれが託されてなきゃいけないんだ?拾った時に確か、中は見るなとかってすごい剣幕で言われたような気がしているんですが…

「これは姉の日記なんです。僕も最近までその存在を知らなかったんですが、姉はどうしても読んでほしいみたいですよ。今、令央さんに…何の意味があるのかは、僕にはあまり分かりませんが」

そんなことを言われたら、読むしかないでしょ。

それでは、読ませていただきましょ。何が書かれているのやら

そう思って表紙を捲った。


そこには、彼女の隠された気持ちと彼女が予想した今後が書かれていたのであった。

そして、僕らに託した思いも…

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