第6話 最後の悲劇②

自衛隊員から受け寄った、偵察用のバイクを借りて免許取りたての僕が後ろに夕雫を乗せて彗星が残ったままの海:鎹濱かすがいはまを目指して走らせる。


沈黙がつらい・・・・・・

「なぁ、そういえば何で海に行こうと思ったの?さっき聞けなかったから....。」

なんてつまらないことを聞いてみた。しかも何の気なしにであるが。

そういえば、この人と一緒の時は、こちら側が全く予期していないときに思いがけないことが起こるため、ほんとに心臓に悪い。

今もそんな感じであった。しかも、最近の出来事の中では一番に心臓に悪い。もし、碧唯も一緒に来ていたならば失神してしまっていただろう。あの子は夕雫をとても大事に思っている。

そんな碧唯が倒れてしまったら汐音も多少なりともショックを受けるに違いない。それに、夕雫のことも自分の彼女である碧唯の幼馴染として大事にしているように感じている。だから。碧唯も汐音も呼ばなかっていうことは、理解できるのであるが、どうして僕じゃないといけなかったのか。別に、海に行きたいだけだってんなら、弟である白雨でもいいのになぁ、って考えてみたりしている。なので、いまいちピンと来ていなかった。

「うんと、死に場所の候補地探し!」とめちゃくちゃ溌溂とした声で答える。なんでこんなテンションなの。

「はい?死に場所?」

「そうだよ!早くから決めておけばいいでしょ。」なんてめちゃくちゃ晴れやかな笑みをたたえつついっているんだけど、なんで今?

死ぬにしても、もっと後でしょ?どうして?もしかして自殺する気か!?

それだけは何としても止めなくては!

なんて考えていたら、

「自殺なんか物騒なことはしないよ。そんなことしなくても、あの世に連れていってくれるような感じがするんだもん。」という、『誰が?』という疑問が頭の中で構成される前に、僕の脳内にしっかりと焼き付いてきたのは、夕雫の今にも泣きだしてしまいそうな、そんなはかなすぎるそんな笑顔であった。

今一緒にいる人たちは良く表情が変わる。それはとてもいい事だけど、人にはこんなにも多様な表情や感情、そして関係があるんだって、ほんとに改めましてって感じで気が付いた。

こんなことを、思い出させてくれてきっかけは他の誰でもなく、今僕の後ろにいる焼け空に降ってきた美しすぎる愛雨あいうだったりするのである。


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そんなこんなな会話を挟んで、やっとこさ浜辺に到着。バイクで来たけど、やっぱり時間かかるなぁ。

ってそんなことは正直どうでもいいんだけど。夕雫さんどこ行った?

今ここでうっかりでもなんでも死なれちゃったらやばいんだけど!

僕の身が持たないから!いろんな意味でさ!

「令央!こっち!海すっごくきれい!」なんてはしゃいでいた。

この様子だとほんとに自殺とかしなさそう。良かった。

なんて思って、うっかり目を閉じてしまったのが運のつき。

波のいい音も相まってすっかり寝てたわ。

気がついたらすっかり空は赤く染まっていた。

「おー、やっと起きた!令央が起きてくれないから帰れなくなっちゃったね。」といつの間にか右隣にいた夕雫がそういう。

「うん、ごめんね。」

「うんもー!何謝ってるの?別にいいよ。近くにホテルとかあるし、いざとなればそこに泊まればいいし気にしてないよ。」と笑って見せる。

そんな時に、夕雫がふと右の方を見やる。そこには、チンピラ?ヤンキー?っぽい人がいた。

「ねぇ、令央。何か暖かいもの自販機で買ってきてくれない?冷えてきちゃった。」

「うん、待ってて。」

ここで離れちゃダメだった、絶対的に。

だから、彼女は刺されてしまったんだと思う。彼女は絶対に俺のせいじゃない、っていうと思うけれども、個人的にはそう思っている。

「夕雫、お待たせー!」何かと気楽に声をかけて馬鹿だなぁ。って今だから言えるけど。

先ほど座っていた砂浜の一部分で夕雫がうつ伏せで倒れていた。しかも、周りは赤黒い液体がべったりとついていた。その液体が流れ出ている元は夕雫の背中であった。

しかも、ツールナイフが刺さっていた。多分傷はそこまで深くはないと思うが、声をかけるのをためらってしまった。そして、俺はだんだんと青ざめていって、そのまま意識を手放してしまった。

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