夕雫の日記と託された思い②
何が書いてあるのやら、全くと言っていいほど分からない。
まぁ、単なる日記なんだろうけど僕が見てもいいのか?
そんなことを考えていたが、仕方なくページを捲っていった。
日記が始まったのは、約一年前、僕たちが高校に入学して間もなくしたころから始まった。高校生になったので新たに何かしようと考えたのかもしれない。
もしそうなら、多分明るい内容が書かれているのだろうと思っていたが、違っていた。
『ここ最近、人が思っていることが分かるようになった。とても怖い。今までこんなことはなかったのに…』
最初の一日目にはその一言のみが書かれていた。
なるほど。彼女があの能力を持ち始めて1年くらいだったのか。僕はてっきり生まれながらの力だと思っていたんだけどなぁ。そうか、確かに白雨は姉の能力の事を全く知らなかったのように驚いていたしなぁ。
しばらく読み進めていくと、彼女と初めて会った時に近づいてきた。
その日に近づいていくほどに、彼女の力ははっきりと人の心を読めるようになっていった。それは、裏返しとして彼女が不登校にならざる負えなかった状況を作り出していくことになるのであった。
『最近は何をしても恐れられる。前に、クラスメートの子を好きな男の子と引き合わせてあげた時からなんかおかしくなってきている。確かにあの力は使ったけど、あの子大々的に「誰それ君のことが好きだ!」って言ってたのに。それを全面否定して、なんであの人が好きだってわかったの!恐ろしい!とかって言いだして…。あの子はここらへんで一番の富豪さん出身だし、今は父親が市長さんだし。みんなが逆らえないからって、ひどいよ。お陰で私はありもしないいじめをしたことになって、しばらくの間学校に来るなって.........。ひどいよ。私が何したっていうの?何もしてないでしょ。こんなことになるんだったら、好意でくっつけたりしなかったら良かった。もう死にたい。ほんとにそう思う。だけど、もう少し生きていたら何かいいことが起こる気がするんだ。これは単なる直感だけど。ほんとにいいことが起こりそうだと思うんだ。だからね、もう少し頑張ってみようかな。』
そういえば、あの大炎上した記事に誰かの令嬢をいじめたとかって書いてあったなぁ。前の市長の娘か。あの子は結構めんどくさいからなぁ。オヤジが当選した後のパーティーでめちゃくちゃ俺を振り向かせようとしてたっけ。夕雫が引き合わせた人とはうまくいかなかったのかな?まぁ、どうでもいいや。やっぱり好きじゃないなぁ。親父に代わって良かったなぁ。あんな子の父親ならいい人じゃないでしょ。多分ほぼ確定で。
そんな感じで読み進めていたら、あの運命の日に行き着きました。僕の生き方をも変えてしまう…というか、実際に変えられた日。
えっとー?俺そんなことないです。まぁ、顔はそうかもだけど、よく言われるからね。でも友達はダメ
その後はみんなもご存知の通りあの子は入院してしまった。
また、事が動いたのは意外にも僕と湊本さんがぶつかってしまった日の日記であった。
『今までは、誰もが聞こえる声にハモるように心の声も聞こえていた、それだけだった。だけど、偶然光莉ちゃんと令央がぶつかってしまったのを見てから、動画?が付くようになった。多分今後起こる事なのだろう。何故かみんな泣いていた。どうにかして助けたい。前の二の舞になってしまったとしても!』
ということで、未来を変えるためあの子は夏祭りに向かったのであった。そんなこと言ってくれよな。言ってくれなきゃ。
そんな大事なことなんで言ってくれなかったの!言ってくれたら、君が死ななかっても良かったかもしれなかったのに!そんな事言ったってもう彼女は帰ってこない。
もう少ししたら未来を変えれたかも、でも変えたいならこんな黒焦げの世界でも生き抜いていかないとだろ!未来へ一緒に行きたかった。
そんな思いのまま勢いよく机に日記を投げつけた。
その時、背表紙とカバーの間に挟まれていたのであろう何かが書かれていそうなルーズリーフの束を発見した。
『この紙をもし令央が読んでいるのなら、たぶん私は死んでる。ここで死ぬことに未練はないと言えば嘘になるけど、できることはやったからね。でもやっばり私は人は幸せであるべきだと思うんだ。だから、これからが明るい未来であるために皆にして欲しいことがあるの。だから、この紙を残したんだ。
暫くしたら、トリハラさんがねあのウイルスに効くワクチンを開発されるから、それをより多くの人に打って欲しいの。それを打てばあのウイルスに悩まれにくくなって、街の復興により力を入れられるはずだから。私が今見えているのはそれだけだけど、そのことを伝えたらたぶん明るくて楽しくて皆がより笑ってくれる世界になるとを思ってるから。未来を頼んだよ』
なんで、なんでこんなに人のことを思ってる人が死ななきゃ行けないんだよ!この世界はおかしい!
僕は泣いて泣いて泣いて、彼女が望んだ明るくて楽しい未来のために動くことにした
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